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27.自重さんが逃げ出しました。

さて、やってきました錬金の時間。今日は馬車というかフェンリル車?を作る予定なので、精霊たちが勢ぞろいしている。

「さあ、作るよ」


まず地の精ソルがどこかの山から掘り出してきたミスリルで、箱の部分を作っていく。これを冒険者が見たら泣くかもしれない。それで何本の剣が出来るのかと。

でもあたしは冒険者でないし、旅をするために魔物から安全に身を守ることが出来て、シャンスが引くのに軽い物といえば、それくらいしか浮かばないのだから仕方ない。

それでもあたしは自重したんだよ。ソルなんてもっと守りを固めるために、魔石や宝石を混ぜて凄い物が出来ていた。もう豪華絢爛なんていうものじゃない。ミスリルがキラキラと煌き所々嵌められている宝石が一層輝く。一体誰が乗るものだと言いたい。

外側だけだったので、いつか精霊王を迎えに行くときに使おうと宥めて、シャンスに仕舞ってもらったよ。父さんじゃないけど、胃が痛い。絶対こんなの誰かに見られたら、訳のわからない国や領主に目をつけられる。それだけは避けなければならない。一体、どこの国のお姫様だ。


内装はドライアドであるテーレが間引きした木を、グンミが水で切断して、リュビが乾かしている。このあたりは平和に進んでいる。うんうん、いいね、いいね。


森の精には魔改造した綿を集めてもらって、クッションを作る予定だ。背もたれや椅子になる部分にも綿を入れれば、少しはクッションになるから、腰痛にならない為に大事なことだ。勿論布もこの村で作ったよ。使い勝手のいい綿で生地を作っているからね。これを糸にして織ったらレーヨンに近い見た目と肌触りで、村では女性たちの間で一時騒然とし、熱狂に包まれた。


村だからやることは沢山あるし、布は余り入って来ない。だからいつも汚れていい作業着やボロの古着しかなかったところに、魔改造綿の登場。気合が入るってもんでしょ。

母さんが一番喜んだのは、隣村に行かなくて良くなったことだったけどね。まあ、それはわかる。あたしと同じで、色々と腹に据えかねていたからね。


そんなこんなで作り始めて一週間。

細かいところを直しながら手を加えていたら、あれ?自重何処イッタ。間違いなくどこかに逃げ出したとしか言いようがない出来だ。捨てた覚えがないのだから、呆れて逃げたに違いない。

だって、これ、前世で言う車に近い。ガソリンがないからそれが魔力というだけで、メイン動力は魔石になる。見た目はシャンスが動かしているように誤魔化せるように出来るけど、中に入って調べられたら魔道具だとわかるだろうね。

一気に魔改造しすぎてしまった。勿体ないけど、これもお蔵入りした方がいいかな?


「これぐらいがいいって。あいつ珍しい物が好きだからな。これならば気が引けるだろう」

へぇ~そうなんだ。


「あいつキラキラした光物とか好きだから宝石とかたくさんつけてみたが、あれはダメなのだろ?だったらこれにしとけ。どうせ森の奥へ行くだけだ、誰にも見られることはない。マリーの言う安全第一を目的としているなら、問題ない」

それであのキンキンキラキラだったのか。先にその理由を言って欲しかったな。でも、言われてもあそこまで煌びやかさは却下したとは思う。まず父さんとエディがドン引きだろうしね。


これから作り直すよりも、今回だけ使うからと説得した方が早い。先ほどソルがいったようなことを前面に出して、一人がダメなら皆で、空の精に会いに行こう!旅行を敢行しよう。

そうと決まれば準備をと思ったけれど、日ごろからシャンスの収納の中に食べきれないほどのお肉は入っているし、調味料のストックがある。お水も火もあるから鍋とかお皿とかだけでいいし、寝床はこの中で寝れば安全だから問題ない。

あれ?完璧なんじゃ・・・。


これは行くしかないでしょ!明日の朝説得をすると決意すると、みんな何故かあたしの横に並んで、鼻息荒くふんすと鼻を広げ胸を張った。

可愛い、可愛すぎる。可愛いのだけど、黒いもふもふの塊にしか見えない黒助が一番偉そうに見えるのは、なんでなんだろうね。卵の時は甘えん坊だったくせに、今の姿になったらツンデレとか本当に謎もふもふ獣である。

まあ、もふもふで可愛いならいいか。それよりも、最後の一押しの為の奥の手は用意しておくべきでしょう。

「ソル、用意してもらいたいものがあるの、リュビもグンミも協力してね」

「「もちろん」」



いつものように起きて朝ごはんを食べたら、お披露目である。裏庭まで二人の手を引いて出ていくと、シャンスが心得たとばかりに、裏庭に車を出した。

「父さん、母さん、これを見て」


「なんだ、これは。馬車・・・か?」

「また大きなものを作ったわね」

暫くこれは何だとみてみた二人だが、同時に声を上げた。


「「ミスリル?!」」

やっぱりそこに食いつくんだ。

「ソルが見つけてきたんだよ。いるなら場所教えてくれるよ」

「あ、いや、欲しいが、そうじゃない」

「この村を守るためにみんなミスリル剣1本ぐらい持ってても、いいと思うよ」

「それは、そうなんだが・・・。でもミスリルの剣か」


ミスリルの短剣を持っていることは知っている。それを切り札として大事にしていることも。だけど父さんの体格や戦い方を見ていると短剣ではなく、斧か槍があっていると思うんだよね。

ということで、普段でも使えるミスリルの斧を作ってもらいました。奥の手だからまだ出さないよ。


「それよりもこれはどういうもの?マリーと精霊たちが作ったなら普通のものじゃないのでしょ?」

「流石だね、母さん。魔力で動く車だよ。ミスリルで出来ているから木で作るよりも頑丈だし、鉄より軽いから扱いやすい。中も木の座椅子にすると体が疲れるから、布を張って綿詰めて座るところを柔らかくしたの。入って座ってみて」

入ってすぐに座って今までの椅子と違うことを理解したのか、目が見開きそのまま手で押したり叩いてみたりしていたが、大きく頷いた。

「家の椅子もこうだと嬉しいわね」


あ、はい。ごもっともです。そうだよね。そうなるよね。そこまでは考えが及んでなかった。家具を作っているおじさんに見せて村の物作ってもらおう。

ごめんね、急に仕事増やすことになって。心の中で謝って置く。間違いなく布を織り、服を縫ったりと、座ってする作業の多い女性から注文が来ると思うから。


あ、いや、本題はそこじゃない。

「これでね。みんなで旅をするのはどうかな?シャンスや精霊たちがいても、あたし一人で空の精探しに行くのはダメなんでしょ?だったら、空の精に会いに行く家族旅行とか、いいかなーと思って。これなら外で野宿しないでいいし、色々と安全でしょ?」

「そうね・・・」

もう、一息だ!奥の手を出すべきか、このまま行くべきか。

唸れ昔の交渉術!

ようこそいらっしゃいました。

第二章始まりました。

少しだけ旅という冒険が出来ればいいなと思っています。


ブックマークありがとうござます。


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