189.少しの迷い…結局自重知らず
チンキを作るべく村にある花を吟味してると、うーん。実用的なものばかりだった。
チンキやエッセンシャルオイルをまず作るにあたり、バラとかジャスミンとかイランイラン、カモミールは欲しいな。
うーんうーんと唸ってるとすぐに森の精に囲まれた。
――勿論、頼るつもりだったよ!
場所、そう…どの場所に植えるかが大事でしょ?!
いかにも考えていた風に装った。正直、そこまで考えてなかったのだ。
森に生えている草を全部鑑定して行けば、似たような成分があるとは思ったから。だけど香りは同じにならないと思うからどうしようかとは思ったけど。流石に効果はでても、草っぽいとか苦そうなのとかは嫌だ。折角開発できる伝手があるのだから、とは思っているのだけど、最近の森の精のやる気が凄い。
このやる気は一体どこから…。
「他の精霊たちは生活に密着して役に立っているでしょ?畑も森の精が頑張らなくても魔力に満ちてるし、栄養もある。だから何かしたくて仕方ないの」
テーレがやって来て説明してくれた。
なるほど。確かにそうなのかも。森にも村にも魔素は満ちてて、森の精がいるからこその実りだけど、自分たちが何かをしたという感じではない。存在しているだけでこの村にとっては財産なのだけど、その実感が沸かない…という感じかな?
「そうなの。マリーが想像した作物は森の精が競うように管理してるの。新しく生まれてきた森の精も、何かを任されて一人前みたいな認識があるから、やりたくって仕方ないの」
「じゃあ、10人ぐらいでチームを作ってもらって、1つずつ作物を任せるといい感じかな?」
「それでお願い」
この世界の在り方を今でもかなり変質させているから、ちょっと気になっていた。こんな感じでやらかしても大丈夫なのかと。だけどシエロも何も言わないし、精霊王も大丈夫だと言ってたし、大丈夫だよね?
「人間の方が後から生まれてきた癖に好き勝手してきた。こんなに世界は乱れてなかった!!」
鼻息荒くいうのはリュビ。リュビがされてきたことを考えたら、そう言い放つのも仕方ない。最近は精霊王が安定してきたこともあって精神的にも落ち着いてきたし、言葉も普通になってきたけど、仲間が受けてきた痛みを忘れることはないのだと、ここであたしに思い出させた。
そう、この世界を火の海にしているのは人間。精霊が感情のまま動けば、この世界の人間はほぼいなくなるのは、確定だ。
大精霊になって立派な宝石を額に宿し、力を得たリュビ。それを誰かに向けたことはなかった。
そうだね。
いつだって感情的に、衝動的に壊していくのは人間。
「深く考えることはない。マリーはマリーらしくすれば良い」
「それが時々怖くなるんだって」
長はそう言うけど、時々振り返っていいのかと落ち込む。
「いいのだ。壊れるなら、とっくに壊れておる。マリーの手が届く範囲で、手助けすればよい」
「――そう、か」
「そうだ。我はいつだってダンジョンに行ってやるぞ」
「「「ダンジョン!!」」」
えーと…なんで皆さんやる気?
あたし、ゆっくり花に塗れて過ごしたいけど?
「行かないよ!森の精に色んなもの作って貰うし!」
って叫んだところで、――気が付いた。
どうやらあたしはかなり気を使われていたらしい。
今更だもんね。
「そう、今更よ?」
悪戯っぽく笑うテーレに、あたしも笑った。
「じゃあ、森の精霊たちいい?」
目の前が色んなピンクで埋め尽くされるぐらい、森の精があたしの周りを舞う。
森の精が住める場所が、広がればいい。
思い浮かぶハーブを全部伝えた。
良いものが出来たらみんなに配って感想を教えてもらおう。特産品にしてもいい。
うん。いいね。
「シン!ソル!畑を広げたいからお願い」
嬉しそうにやって来た二人に、村を広げるのではなく、空間魔法で庭だけ広げたいことを伝えてやって貰う。
「また変わったことを」
シンはそう言いながらも、楽しそうに広げる。これ以上がいいからと言うまで広げて、庭だというのに村と同じくらいの広さの土地が出来た時には、開いた口が塞がらなかった。
マジで?!
「ほお、やるな」
ソルは嬉しそうに土地の品質を改良始めた。森の精もどこからともなくやってきて、ソルにあれこれと伝えれば、区画整理された土地の出来上がりだ。
うん。耕運機いらずって素敵。
じゃあ、あたしはドワーフの皆さんにアルコール度数80ぐらいのものを作って貰うことにしよう。この村には浄化があるから消毒という認識はあまりないけど、ここを離れたら必要だしね。
あ!試しに呑まないようにだけ、ドワーフの皆さんには伝えておかないと。
飲む酒と分けてもらうために、砂糖が出来る植物を発酵させて作ってもらおうかな。それでも試しに呑みそうだけどね。
読んで頂きありがとうございました。
5月になったら落ち着くと思っているのですが、どうなんでしょうかね?




