188.開発2
村の開発を始めると止まらなくなった。
女性たちからは新しい綿やダンジョンで出た糸を使った商品のアイデアを強請られたので、あたしが欲しいものを強請った。
この世界にはマントにフードが付いたものはあったが、雨風を防ぐものという実用的なものばかりで、可愛くない。フワフワの可愛いポンチョがいい。まだ成人していない間に着たいのだ。
「マリーはそれでいいかもしれないけど」
アマンダがみんなを代表して言う。
「だって、何かないかと言われたら、ね。目的によって作るものが違うのだから、方向性を持たせてよ」
「方向性と言われても」
「村で着る・冒険で着る・町に行くときのお出かけ用とか。全く変わるでしょ?」
ダンジョンにそれなりに行っているので、特殊糸も増えている。綿とかシルクのような手触りのいい村で作れるモノとダンジョン産で出る糸で用途を変えていけば良いだけの話だ。あたしに至ってはどんな糸でも関係ないので、見た目重視で行きたいところ。
冒険者は芋虫が吐いた黒の糸で隠密行動したいと思うだろうし、蜘蛛の糸で防具を強化させたいのではないだろうか。
それでもこの村を出るという経験をあまりしていない人にはピンと来てないようだ。アマンダでもカランキ村には行ったことあるけど、あそこは精霊村よりも微妙だし、ボルテモンテの町でも貴族とか富裕層に会ってないと、違いってあまりわからない。
「そうだね。村で着るのでも、作業する時に着る服と、家にいる時に着る服も変えればいいんじゃない?動きやすさを重視するか、安全性を重視するかとか」
試しにと蜘蛛の糸と綿を絡めながら、作ったのは前世でいう作業服。
正直可愛くはないが、とても実用的だ。汚れにも強いし、繊維だというのに工具などが当たっても破けないという優れもの。家具を作るときにも、解体をするときに刃物をもつし、怪我予防が出来る。村でも町でも重宝すると思う。
女性陣には汚れに強いという言葉に反応があった。
洗濯…ああ、そうだね。今まではそこまで良いもの着てなかったから、最悪捨てればいいって感じだったし、皆同じようなものだったから、気にもしてなかった。お風呂入りだしてからだよね。その後お湯で気合入れて洗い出したの。
繊維に優しい洗剤も考えるよ。
この村の半数の人が水の精と契約してるから必要ないかもしれないけど、外へ行った時ようにね。
あともう一つはジャージ素材の服、思い出したけど好きだったんだよね。体に楽で動きやすくって。なんで今まで思いつかなったのだろうか。
ポリエステルのようなのはどうやって作るのか、全くイメージがわかないから綿素材かな。
こんなのどうよ。
反応薄っ!
なんでみんな埴輪みたいな顔して立ってるわけ?
いいじゃん!それなりにスタイリッシュなデザインで、使い勝手いい感じでしょ?
シンプルで洗練された感じでしょ?ジャージ素材だけど。
やっぱりフリルの付いたブラウスとか、カットソーのデザイン性があるのがいいわけ?村から出ないのに?
こんなこと思ってるから顔だけなら聖女なのに、色々残念と言われるのだろうか。この世界に随分馴染んで、アラフォーの雰囲気はなくなったと思うんだけどなぁ。
他にもイラストでなら思い出せるけど、興味ないデザインとかよくわからないし、見本でも作れない。
取りあえず自分が過去着ていたような服しかあたしは作れないから、これで勘弁して。
2枚ほど作って渡しておいた。この村で着たら、まあ…浮くけど、皆で着たら怖くない。そんな感じで。
「後は出かけた時に写真撮ってくるから。デザインはそれで勉強して」
「それでお願い!マリーのデザイン画…難しい」
「悪かったわね!芸術的で!」
最近は忙し過ぎてカメラのことも忘れてたよ。だって、ダンジョン撮ったって…楽しくない。
取りあえず方向性は決まったので、長い尋問のようなアドバイスの時間は終わった。
少し落ち着いたので洗剤のことを考える。
石鹸はマンダリンとかで作ったから香りもいいし、それなりに汚れは取れる。それ以上の汚れとなると、自分では浄化が使えるからいいやになってしまう。もう少しだけ落ちやすい物を作ったら、高級な石鹸を考えようかな。
ラベンダーとかローズマリーとか、バラとかカモミールとか、アルコールが高い物が作れるようになったから、チンキを作っておけば色々作れる。
この際だから、化粧水とか乳液も作っちゃおうかな。水がいいからそれだけで肌綺麗になるけど、香りがある方が幸せ感あるし、嬉しいし。
うん。そうしよう。
チンキ作るの、好きだったんだよね。
お酒を蒸留するものがあるんだからオイルも作れる。
ワセリンはないから、蜜蝋で作ればいい。
――ちょっと楽しくなってきた!
読んで頂きありがとうございました。
ブックスも増えているみたいで、ありがとうございます。
中々更新出来てませんが、気長にお待ち頂けると嬉しいです。