187.開発
それから一週間はぼんやりして過ごした。
あたしの体は病気知らずだし、健康そのもの。精神も強化されて、病むことはない。だからどんなダンジョンでも戦えるし、ゾンビみたいなのとも嫌だけど戦える。
それでも心がすり減っている気がしたのだ。
――要は、疲れた。
溜息の多いあたしを見かねて、元ツェルスト公国のことも、「子供が背負っていい重石じゃないぞ」といいながら、パオロさんが引き継いでくれた。
送り迎えはこの度転移を覚えたエディがする。
さすがお兄ちゃん!
「俺も全属性使えるようになったからな。妹にばかり背負わせないよ」
木の棒を振り回していたエディが!いつの間にかたくましくなっていた。
「俺ももうすぐ成人だからな。自分の責任で動く」
確かに!
最近のエディは契約した精霊たちと、ひこちゃん、ぴいちゃんの子供のコッコと契約して、ダンジョンで力を付けている。流石にフェンリルのシエロほどの機動力はないが、騎獣としてのコッコは優秀なのでハイペースに進んでいるようだ。
最近食卓にお肉率が増えているのが、その証拠だ。
エディは最近父さんと一緒に動くことも増えたし、村長の息子ということで、村の運営の仕方も覚えていくのかな?自分のことに精一杯で、エディに将来のこと聞いたことなかった。だけど父さんに似てきたエディなら、向いてると思う。
「うん。エディだったら安心して任せられるよ」
「そうだろ、そうだろ。どんと任せろ!」
そんなこんなで、のんびりしていた。
広く大きくなった村を散策する。
「マリー、美味しいパン何か思いつかないか!」
「ある!あるよ!甘い美味しいパン!それに美味しいチーズがあるなら、あれを作って欲しい」
最近舌が肥えてきた人たち。毎日食べる食パンみたいなものも美味しいけど、たまには別のものも食べたい。
それはやっぱり甘いものとか、目先が変わるものがいい。
あたしも食べたい。作ってくれるなら、お願いしたい!
カスタードクリームの作り方を教えて、クリームパンを作った。
「旨いじゃないか!」
「だよね。ちょっと手間がかかるけど、材料もいいし、腕もいいおじさんが作ったの絶品!」
「そうか、そうか。絶品か!」
ご機嫌になったおじさんには、是非とも頑張って欲しい。
慣れてきたら、シュークリームも作ってもらいたい。
そしてピザ。手軽に食べられて、美味しい。
っということで、パン屋さんに貢献したり。
「マリー、何か思いつく新しい家具はないか」
最近家具を買う人は居なくなった。村の人口は爆発的に増えないし、地の精がいるので手がかからないのだ。
ならば!
「あるよ、ある。女性が欲しがるもの」
この村にはなかったドレッサー。この村の女の人に受けるかどうかはともかく、デザインが綺麗なら間違いなく他の町では売れる。三面鏡のことも伝えれば、家具屋のおじさんの契約精霊地の精が嬉しそうに鏡を作り始めた。
きっと暫くはこれで忙しくなるはずだ。
「ねえ、マリー。遊具は増えないの?」
子供たちの声に、ポンと両拳を合わせた。
作りたかったもの、あったよ。車も船も作れたなら、列車だって作れるはず!
大人が速足で歩いたと同じぐらいの速度なら、転び落ちても危なくないはず。山手線みたいにぐるりと村が一周できる線路を作ってしまえば、簡単かも!
そして先にはココアが造ったダンジョン内通って、セカンドへ行けるようにすれば、誰だって行き来できるようになるとか、いいと思う。
ということで、あーじゃないこうーじゃないと地の精とドワーフたちもいつの間にか参加して、作っていった。
あたしが作ったのはSLぽい汽車。見た目がカッコいいと思ってる。内装もちょっとレトロな感じで、大人っぽい演出になった。精霊村セカンド向けの列車で、途中眠ることも想定してある。
ドワーフがメインでデザインしたものは、らしいといえば、らしいのか。酒樽の横をくり抜いたようなフォームで、中に座れるようになっている。大人一人、子供が縦に二人並んで乗る。
それらを繋いで出来た列車だ。
地の精が作ったものは……。
どうみても、ジェットコースター。
安全バーが付いてるし、線路も何故か地面から離れて高く作られたし!!
「ちょっと待てぇぇぇぇぇ!!」
取り合えず地面に沿ったレールを作ってもらう説得をした。精霊村セカンドにまで行けるようになったら、作っていいという条件付きで。頼むから、初級から行こうよ。上級コースはその後にして欲しい。誰かの心臓止まったら、危ないでしょ!木の上のブランコから飛び降りるとか普通にしている超人の子供たちには、問題ないけどね。
そうでしょ、そうでしょと地の精たちが頷くのは可愛いけど!
ダメなものは、ダメなんだよ!
そう、村の改造。いや、開発を色々として楽しんだ。
読んで頂きありがとうございました。
早くGWが来て欲しい忙しさ。
一週間に1回は更新できたらいいな。