181.ダンジョン 50階層
長とシャンスがお肉無双しているので、あたしはただ出てきたものを収納している。
そう。『自動回収スキル』超便利!!
絶対にこれだけの為にあたしは呼ばれたのだ。自分たちでも収納できるくせに。
『速さが違うであろう?』
『お肉沢山‼!』
へいへい。ついて行くだけだからいいけど、それでも疲れるんだよ?いくら草原でそよ風が吹く中、お散歩気分で進んでもさ。
ほんと、ダンジョンて…不思議なところ。この中で普通に生活できそうなぐらい、見た目は何処にでもある普通の平原。だけどダンジョン内だというのに、狂牛たちが群れを作って生活しているのは、すごく不思議。魔力で増えるのではなくて、生活の営みで増えてる?それって、どういうこと?外に連れ出せるってこと?
連れ出せるといっても、これを飼おうとは思わないけどね。2階建ての1軒家ぐらいある牛が10匹いるだけで威圧感しかない。子供でもその1/4もあるのだ。ホント、あり得ない大きさ。
流石にアイテムとして出てくるお肉は、普通に解体する肉の半分もないから、少なく感じるのかもしれない。それでも数が多いのだからお肉は溜まってくる。
ん?
ああ…解体すればトロとかサーロインとか普通にあるけど、アイテムだと何処かになるのか。大当たりでトロ。外れだと普通の赤身なのか。それでも普通の肉よりは美味しいと思うけど、最高の味を知っている分、長達は納得できないかもしれない。
その証拠に、長が『出ない!』と叫びながら爆走している。
どうせアイテムは自動で集まってくるのだからと、付いていくのに疲れたあたしは木の下で休憩だ。
あ、
どうやらこの階の下に行く階段を見つけたようで、長とシャンスは迷わず突っ込んでいった。
いいけど。
『相変わらず、暴走してるわね』
「そうだね」
今、あたしの傍に居るのはテーレだけだ。
地の精であるソルと空の精であるシンは、マジックバッグづくりの指揮をとっているし、火の精であるリュビは、復活が近い精霊王の守りについているし、水の精であるグンミは精霊王の復活に向けて、最高の酒造りをしている。
クロ?
クロは他のまあ…諜報活動的な?精霊村がどんな感じで捉えられているのか、見てもらってる。暴走する国があれば、他の場所にも影響が出るからね。
「仕方ないから、あたしも行かないとね」
シャンスの気を追ってすぐにその場に転移する。
階段の前で待っていたシャンスを撫でて、あたしも階段を下りた。
50階層と同じような雰囲気の草原だけど、51階層は先ほどよりも空気が重くなっているのを感じる。それは間違っていないようで、降りた途端に集まってくるアイテムに赤身はなく、バラとロースが増えている。時々50㎝ほどもある濃厚チーズが混じっているのは、あたし的には当たりだ。どうやらチェダーチーズぽい。
テーレと一緒にナイフで切ったものを食べてみる。
んんんんんんんっ
美味しい!!
パンが食べたい。これは挟んでハンバーガーでしょ!
テーレと同じ顔をしながら、モグモグ。
ちょ、長!
すぐに下へ行く階を見つけたらしく、さっさと降りていった。長がそこまで駆り立てるものは何だろうか?なんてね。美味しいものが食べたい、それだけだよね。だって…チーズ美味しいなんてもんじゃない。妖精族が作ってくれたチーズも、癖がなく美味しいものだった。あたしが作ったなんちゃってチーズなんて、比じゃないくらい。だけど、狂牛のチーズは…感想を言うのも烏滸がましいというか、一心不乱に食べたくなる味だ。
これならあたしもモチベーション保てる。
「テーレ、さあ、行こう!」
『いいわね。これは美味しいわ』
シャンスに行っていいよ。と念話を送り、あたしもその後をついていく。
52階層になれば、ロースとヒレが多く出ていた。
そしてチーズは、クリームチーズ!
『これはどんな味?』
「このまま食べても大丈夫だけど、ケーキとかサラダに混ぜると美味しい!」
『じゃあ、戻ってから食べる方がいいわね』
「うん。それがいい」
その後も順調に階を進めた。53階ではヒレとサーロインが出始め、チーズはカマンベールチーズ。
54階ではサーロインとトロが出て、チーズはさけるチーズが出てきた。
55階ではとうとう長が待ちに待った、大トロが出た。チーズは勿論モッツァレラチーズ。
55階、最高!!
長とシャンスは大トロ狙いで、あたしとテーレがモッツァレラチーズ狙いで狩りに狩ったせいで、最後にはどこにも生物の気配すらなくなっていた。
どうやらやり過ぎたらしい。
さっさと次の階へ行けとばかりに、階段が現れた。
56階層へ降りていけばすぐにボス部屋だった。
次の階からの魔物がこれで分かる。
なんだろうかと少しだけワクワクして入れば、何故か申し訳なさそうにして見えるボス…今までのよりも一回り大きい狂牛がいた。
どうやら大きさが違うだけで同じアイテムが出るらしい。
瞬殺で居なくなったボスの後に残されたのは、綺麗なガラスに入ったこれまでのチーズの盛り合わせと焼肉をしましょうと言わんばかりの、肉の盛り合わせだった。
「…………」
『食うぞ』
だよね。
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