179.鑑定具と時計
ダンジョン攻略は一旦お休みにした。
疲れは残ってないし、メンバー的には『ガンガン行こうぜ』でいいんだけど、ちょっと困ったことがあった。
自分たちがガンガン進んでいったダンジョン。どうやら時間経過?が外と違うらしく、ダンジョンの中に一日半いたようなのだ。
まあ、確かにそう言われて見れば、それぐらいはダンジョン内を進んでいる。10階から33階まで普通に考えたら、半日で行けるはずがないんだよね。何故そんな事になったかと考えたら、一番は体内時計が狂っていたということだろう。ずっとダンジョン内は昼間のように明るかったし、まず第一にお腹がそこまで空いてなかった。何故なんだろうかと考えて仮説を立ててみた。
魔素が濃いダンジョン内だから、魔素を吸収していた為にお腹が空かなかった。だけど、魔力の出し入れだけはしていたし、使う量が多かったから疲労はあった。
―――ではなかろうか…ということを長に言えば、『そうだ。ただそれが出来たのは、精霊王の加護のお陰だろう』とのこと。誰でも訓練をすればそれなりに出来るそうだが、意識をしないでそこまで出来るのは、間違いなくそれが理由だそうだ。
精霊王の加護、凄すぎる。
うちの家族も、人間離れしてきた。
これはいい傾向ではないか?
まあ、そんなこともあって、ダンジョンに行くときには計画的にしないと、周りに心配をかけることになりそうだ。第一陣も慎重に進んだのもあって、1~5階だけで丸一日かかっているし、計画は大事だ。
今日は魔石と屑宝石を使った装飾づくり教室をやっている。
芋虫から出てきた糸で、ミサンガみたいなのもいいかもと提案すれば、女の子は凄く食いついた。
屑宝石を地の精達が研磨して、ビーズみたいに穴を通してもらえば、簡単に編み込める。
自分の好みで作れるし、糸の色と屑宝石の組み合わせで色んな効果が出るから、福袋を開けるようなワクワク感で作ればいい。
「ソル!簡単な鑑定が出来る装置作れない?作って何が出来たのか、効果がすぐにわかれば助かるし」
『簡単に作れる。この水晶に鑑定の付与つけてくれ』
あ、そうだよね。
それなりの石に付与すれば良かったのか。
あ、じゃあ、時計も作ってもらいたい。
「じゃあ、時計も」
今まで必要に感じなかったから欲しいと思わなかったけど、ダンジョンに潜るならいると思う。
『時計か…』
あれ?これもすぐできると思ったんだけど。
『出来るのは、出来る。ただどの基準に合せるかだ』
え、ああ、地球でいう天文学とかエジプト文明的な、あれ?
『そこまで進んでいないところもある。日が暮れて夜になれば一日の終わりで、日が昇れば一日がスタートする。その間の空白の時間を【空の時】と称し、魔の時間とされているところもある。だから人は魔に惑わされないように眠る』
「えーと…そう考えると、活動時間は約12~16時間でそれ以外は空の時間?一日で考えると20時間~26時間?ってこと?数字弱いから考えたくない」
『だから、マリーが決めればいいよ』
「は?」
『今だって体感で動いてるんだし、関係ないだろ?精霊村は精霊村の時間でいいんじゃないか?』
そう言われて見れば、そうかも。長い夜を寝ないで良くなったのは最近だし、他ではまだ真っ暗な村はあるはずだ。流石に街になると、それは無いと思うけど。アシルさんの所ってどうだったかな?
あ、砂時計みたいなのがあった。大中小あったから、時間を測ってるのかな?
「じゃあ、24時間で作ってみて。不具合があれば調整すればいいし」
『それでいいと思う』
ということで、時計を作ってもらうことにした。デジタルは流石に出来ないと思うからアナログで。意外に時計の針って、いいと思うんだ。
村にでっかい時計塔があるのも、いい。。
家庭用に置時計と個人用に腕時計。これは欲しい。
以前人間に拘束されていたドワーフの人たちに、参考までにどうだったのかと聞けば、どうやらイメージした近いものがあったみたい。貴族は懐中時計のようなものを持つことがステータスだったそうな。
じゃあ、一日の時間は?といえば、基本は22時間。
農民時間だそうだ。夏の長い時間が14時間あるので、とにかく働けという稼働時間。日が暮れたら寝る時間なので8時間。なるほど?
微調整できなくなった日を安息の日として日を作り、その日は奴隷さえも働かなくて良い日とされていたらしい。というか、人間たちが体調を崩すので、管理できなくなっているらしい。食事もないが、自由だけはある日という、なんとも言えない日だそうだ。どこでも管理者の都合で世界は動いている、という見本のようだ。
それを考えると、24時間でいいのか?
微調整は後からすればいいか?
どうせ、今までも太陽と主に生活していたのだ。時計が出来たからと言って、それに従わないといけないわけでもない。参考程度にすればいいことなので、そこまで変わらないよね?
まあ、使って見てから考えよう。
『精霊時間24時間』
この概念が出来た瞬間だった。
これが時計と共に浸透していくまで長い年月を…要することなく、マリーが聖女に就任した途端に認識されるようになることを、マリーはまだ知らない。
読んで頂きありがとうございました。
気が付けば3月…。流石は逃げると言われる2月。まだまだ先と思っていた仕事がツメツメ。
次回も更新遅れます。
ブックマーク増えてちょっとビビってます。