176.ダンジョン攻略
ダンジョン攻略でとにかく大変だったのは、何か。
それははしゃぐフェンリルとドラゴンを抑えることだった。何故…と思うでしょ?
30階層よりも下の層にかなりの魔素が溜まっているらしく、大変美味しい匂いがするそうだ。
酒が湧く泉と、酒に合う肉が狩れる魔物が居ると聞かされた時には、あんたら何処で調べた、と詰め寄りたかったが、人外のこの者達には、ぶっ壊れスキルを所持していてもおかしくないし、あるに違いない。一千年以上も生きている生き字引なのだからね。
じゃあ、攻略しててよ。
そう言えば、面倒くさそうにする。
『行くのは良いが、すぐに帰れない。飯はどうするのか』というのが、双方のいいわけだ。
じゃあ、シエロを連れていけば良いじゃん。って、シエロは敵前逃亡していた。
本人曰く戦略的撤退だそうだ。
まあ、わからないでもない。だけど、生きている年数が違うだけで、あんたも大概だよ。
―――自分に返ってきそうなので、言わない。
うん。シエロの撤退はいい判断だ。
適当に食べるなら行けばいいし、無理なら半年は待ちなさいよね。どう考えても数日で攻略できるわけがないのだから。それに浅い層がどうなっているのかだけでも確認しておかないと。
杖をもってダンジョン内を調べようとすると、反発が返ってきた。
どうやらコアが拒否しているらしい。ならばコアを制するまでと、コアのココアに協力してもらってその反発を解いて貰った。
流石、ココア!
でもココアは支配下に置けなかったことが悔しいようで、絶対に攻略してやると息巻いている。
若いコアであっても大迷宮と言われるダンジョンだけはあるらしい。
「無理はしないでよ」
「大丈夫!溢れんばかりの潤沢な魔力で、大きくなったから」
ああ、確かにそうだね。ココアは成長をし続けているが、下に伸びるのではなく横に伸びている。これは先には世界樹に辿り着ける人を増やしていきたいと言う、アリアの希望を組んでいる。それは間違っていないので、あたしも応援をしている。みんなの役に立つことこそが、世界樹『マグマ』とその巫女大精霊『アリア』の存在意義であり、願いだからだ。あたし一人が恩恵を受けていいわけがない。心配事は尽きないけどね。
で、わかったことは、1~5層は小動物の魔物、ネズミ・うさぎ・蝙蝠がメインだった。
実際に戦ってみたが、成人した者の腕試し程度だったので、村の人の修行に使えそうだ。
6~10階層はちょっとばかし面倒だ。虫系が多くて気持ち悪いのと、糸を吐く芋虫や蜘蛛、幻影を見せる粉を掛ける蝶に、隙あらば切り刻もうとするカマキリなど、初心者には無理そうだった。それに綺麗に見える花たちが食肉種。手をかじられそうになった時には、なんじゃそりゃ――――。と叫んだあたしは悪くない。
結界が効いてるから齧られたら逆に花が吹っ飛ぶだけど、びっくりしたことには変わりがない。
ということで。それらに対応する薬屋アイテムが必要だ。これらはソル達地の精とドワーフたちが張り切っているので、すぐにでも出来るだろう。
慣れたらここで力試しをするだけでも、それなりに稼げるのではないかと思う。
芋虫を倒して残る糸は、出る色で効果が違うと言う特殊加工が出来る糸。黒なら闇に紛れるマントになるし、金なら太陽を反射する防止に最適等。
蜘蛛を倒して残る糸はとにかく強力で、釣りや罠、そして防具を作るのに最適なものだった。
他のものには色々と使い道はあるが、それは追々。そればかりに構っているときっと攻略は数年かかる。幾ら快適なダンジョン攻略が出来ると言っても、殺伐とした生活はしたくない。
それでも放置するのは危ないので、5階層までは村の者だけで15歳以上で5人のパーティーを組み、精霊と共に力の使い方の実践の場にした。
どうやって行ったかって?
精霊村と聖女の森の休憩所を転移門で繋いだよ。
シエロと地の精、あたしとの合作だ。久しぶりに魔力がごっそりと無くなり倒れた。杖を使っても全ての魔力を省エネしても、ぎりぎりだった。二日間寝込んだために、父さんと母さんに心配かけてしまった。
―――けど、後悔はしていない。
どこでもドアだよ?実際は門がある場所にしか行けないけど、ロマンじゃない?あの猫型ロボットの中で、前世で一番欲しかったやつ!それが作れただけでも満足。
自分だけならどこへでも行けるのにって?
それとこれとは違うのだ。
話が逸れた。
だからチームを作って攻略に行くことになった。
あたしは一応父さんと母さん、エディ、そしてシャンスと契約精霊達みんなで10階~20階の探索をすることになった。
父さんたちもチートの仲間入りをしたので、腕試しだ。全属性試せるって、楽しいよね?
読んで頂きありがとうございました。
評価&ブックマークもありがとうございます。
ラストの章になると思うので、もう少しお付き合いください。