173.精霊島セカンド見学ツアー
マリー、もうすぐ11歳。今潮風に吹かれています。
本格的な冬がやってくる前に、一度精霊島を見ておこうと行われることになった見学会。船をもう一隻つくって精霊島セカンドと、精霊村から30㎞先に作った港に一隻ずつ停泊できるようにした。その船二隻に乗って、興味のある村の人たちと妖精族たちは移動中である。総勢85人。この中にはドワーフなどは含まれていない。先に島で家を作っていたためだ。
現在村人は総勢136人。妖精族は暫定80~100人。妖精族の人数が曖昧なのには理由がある。厳しい環境の中で3歳まで生き抜くのが過去は難しかったため、人数に入れられてないし、お披露目もされてない。だから生まれたであろうとわかっていても、人数に入れてないという事情がある。そう20人前後がここ3年過ぎで生まれたことになる。絶対に可愛いと思うから会いたいのだけど、流石に我儘はいえない。
――ということで、村人の半分と妖精族も半分ぐらいが船に乗っている。
え?85人も乗れたかって?広い甲板に落ちないための柵を作って、椅子を設置したよ。3時間もあればつくしね。
子供たちも行きたいと駄々をこねる者も多くいたが、15歳までは権限は大人である両親か、身元引受人にある父さんの為却下された。ただ全部をダメだというのは色々とやる気を削ぐのも事実。今後精霊島に行くための条件として、10歳から行われる冒険者訓練に合格すれば保護者付きで行けることにはなっている。
珍しい海を堪能する一行。それはいいんだけど、3時間もそのテンションで大丈夫なの?そんな心配をしていたのはどうやらあたしだけで、着いて早々探検しに行くとか言う者ばかりで、どれだけ鬼のような体力なのだと感心してしまった。ただフェアリーである森の一族は少々お疲れ気味だ。まあ、周りがあのテンションでは仕方ない。
もうすぐ精霊島セカンドが見えてくる頃だ。
セカンドは一番初めの時よりも一回り大きくなっている。サクレが最北端になるとしたら、最南端の森の区域はサクレの結界が及ばないゾーンになる。その為何処からか飛んできた鳥の魔獣の住処になっているらしい。まあ、若干南の方はファーストとも近いから、納得だ。
ただ…まあ、ファーストが近いからなのか、少々魔物のランクが高すぎる気がする。低いのも肩慣らしにならない気もするけど、戦うことが目的じゃないからいいのか?問題は食べられるかだ。
ツツキバード…羽を広げて1m前後の大きさで、常に3~5羽の群れで過ごし、鋭い嘴で狩りをする。Cランク
青磁のような羽は工芸品にされていることも多い。肉は食用可だが不味い。
いや、数を相手にしないといけないのは、微妙に面倒だった。しかも肉は不味いって。最悪じゃんか。テンション下がる。
カマキリバード…体長1m~2m。風魔法、エアカッターを使う。名前の如く鋭い切れ味の一撃を持つ。Cランク。食用可。
うん。まあ、食べられるだけいいか。魚もいるし、ここでコッコも育てるのだから無理して食べようとしなくてもね。
ただツツキバードのあの独特な鳴き声。人を馬鹿にしているかのような、あのカラスのような鳴き声がちょっと耳に付くから、叩き落したい気持ちになる。アレを撃退したら、美味しい食材の鳥がやってくるとわかるなら、今すぐ船の中からでもやってしまいたい。カァカァならともかくアフォォォ―――――アホは我慢らなん!しかも続けて合唱とか!美味しくない上に可愛くない奴は、成敗でいいかな?いいよね?
『いいと思うぞ』
『いいと思う』
食いしん坊の長とシャンスがウンウンと頷いている。
「だよね!」
『ワイバーンの方がよほど旨い』
「いや、ちょっとアレは普通の人には恐怖じゃない?しかもあそこにはほとんど魔力ないから、Cランクまでの魔物しか居つけないでしょ」
『確かにの』
いや、そんな残念そうに言わなくても。
「ファーストに行けばいるから獲ってきてもいいよ」
『ウム。一度セカンドに行って一回りしてから、ファーストに行くとするか』
「そうして」
『で、マリーよ。あ奴ら、あのままでいいのか』
「良くないね」
『僕が行く』
シャンスはそれだけを言うと、船を飛び出して行った。
セカンドの最南端の木々の上は、一気に大パニックに陥った。見えてなかっただけでツツキバードはそれなりの数がいたらしく、けたたましい騒ぎになりながら、木々から飛んで行った。
あ。
アイツらが止まっていた木々と辺りが見えた。
最悪だ。
あれだ。ムクドリが1本の木に止まっておきている現象と、同じようになっている。おびただしいほどの糞が幹に、枝に地面についていた。変な疫病とかまき散らされたら大変なことになるので、今後対策が必要だ。ただ生態系を考えるとあまり弄らないほうがいいと思うけど、人口島だし、魔物いるし、動物だけと限らないから今更。だから、ある程度は手を入れてしまおう。
長に乗ってその場にすぐ行き、さっさと浄化をして周りの環境を整えた。
どうせなら美味しい鳥カモン!
読んで頂きありがとうございました。
評価&ブックマーク、そして誤字脱字報告ありがとうございます。
今回は短いけど、少しだけ早く書けました。