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170.精霊の本質

今回視点が途中で変わります。

ホセ➡マリー➡ホセ

二人は自分たちに何が起こったのか理解できない。

分かっていることは、間違いなく精霊王と話をして加護を貰ったということだけ。

「加護…」

「精霊王の加護…」


どれぐらいボンヤリしていたのかわからないが、エディが「父さん、母さん」と飛び込んで来たことで我に返った。

「エディ」

「精霊王が加護くれるって」

「ああ、そうなんだ。マリーが聖女だし、精霊達を助けてるだろ?文句を言う奴が出てくるから、自分の身を護る術をってことで、頂いたようだ」

「へえ…そうなんだ。虐めていたやつが悪いのに」

「そうなんだ。他人が出来て自分が出来ないことを恨む奴は大勢いる」

「ああ・・・確かに。そうだね。村でも精霊と契約できないのは、自分が契約して欲しいと気持ちを伝えてないのが悪いのに、契約している奴のことをあれこれいう奴いるし」


エディもマリーと比べられて色々と言われていることを知っているが、お兄ちゃんとして頑張っていることを知っている。


「エディの頑張りが認められたってことだ。胸を張れ」


恵まれた村になったからこそ、今の姿は自分が作ったものだと、違いは『努力の差』だと現実を見せるのも一苦労だ。そんな中、エディは本当に努力し、自分に何が出来るのかを考え行動している。本当にいい子だ。





「父さん、母さん、エディ」

「マリー起きたのか」

「うん。シャンスがお肉って起こしたのもあるけど。精霊王の気配がしたから、目が覚めた。加護を貰ったんだね。みんな色んなことが出来るようになるよ。流石に転移みたいな上級魔法は使えないけど」

「ああ、加護を貰ったというのは鑑定で見えたのだが」

「あ、そうか。うんとね。『精霊王の加護』という称号を貰ったから、全属性の中級魔法が使えるようになって。後は望めば、全属性精霊と契約できるよ。エディはタカがいるから空間魔法のランクが上がりやすいと思う。収納の容量がけた違いになるって言えば分かりやすい?」

「マジで!」

「うん。マジで」

「スゲー!」


「でね、父さん。エディをやっかむ子も出てくると思うから、一度精霊と契約したい子達にチャンスを与えようと思う。いわばお見合いみたいな感じ。その時だけ契約してなくても精霊たちの声が聞こえるようにしたら、自分たちに何が足りないのか分かってもらえるなって。その後は自分たちが努力すればいい。村に精霊は沢山いるのだから。…どうかな?」

「マリー…いい話だと思うが、お前が仕切らなくてもいい。お前ばかり負担を背負うことはないんだ」

「…うん。じゃあ、仕切りはお願いして。精霊達の声が聞こえるようにだけすればいいかな。声を聞くだけなら父さんたちでも出来ると思うけど」


「意志は固いようだな。わかった。村の人のためになることだ、父さんから提案してみよう。その時は頼むな」

「うん!」

「あ、本当だ!意識して耳を傾けたら沢山の声が聞こえる。うわぁこんなこと話してるのか。げっ、これってどこで誰が何してたか全部筒抜け…」

「ああ、うん。聞こうとしなければ聞こえないから大丈夫。普段は聞かないようにしないと頭が痛くなるから気を付けて。脳内で処理できる量が決まっているから、それ超えると危険だと脳が判断して頭痛がする」

「早く言ってよ。頭…いたい」

「凄い勢いで魔力消費するし、体も疲れる。はい、果実水ポーション

「えらい目を見た」

「出来ることは増えるけど、対価も必要。今までと変わらないよ。だから精霊と契約してその子から知りたいことを教えてもらった方が、間違いない」

「そうする」

「そうだな。それがいい。そろそろ宴会の準備が出来た様だ。広場に行こう」

「本当だね。めちゃくちゃ美味しそうな匂いが漂ってきて、ヤバいね。あの凶暴な鳥め、食ってやる」

『肉!』


シャンスが早く行こうと頭で押してくる。体は成体と変わらないのに、いつまで経っても末っ子のように可愛い。この無邪気なもふもふが居てくれて、本当に良かった。

宴会がスタートすると、新しい味に皆大興奮。


長なんて食べ始めたら美味しかったのか、狩りに行くから連れて行けとか言うし、だったら僕ともシャンスもやる気十分。いや長達フェンリルよりも好戦的なのは、やっぱり精霊達で。海の精の魔力を浴びていたせいか、肉自体がかなり魔力たっぷりだそうで、ゲーム的に言えばドレインしたいのだとか。食べるのは嗜好であって、必須でない精霊らしい。報復も兼ねてるんだろうな。

ちなみに全部魔力を吸い上げてしまえば、死にはしないが、動けない。魔力が自然回復するまで、飛べない唯の瀕死のデカい鳥になるということになる。食べるとなれば、なんだかパサパサの肉になってそう。その時にはミンチにして、つくねかな。





マリー達がテラバードに舌鼓している頃、ホセは村の相談役たちにマリーからの提案を伝えた。

大人たちからすればそこまでマリーがすることはない。自分たちで乗り越えていかなければならない壁だ。

―――としながらも、変化についてこれていない者たちへの救済処置として、手を差し伸べることも大事かもしれない。

1人が発した言葉に唸りながらも、一理あると皆理解を示した。誰しも同じように出来ないのは、この村の大人たちは一番よくわかっている。村で、町で周りよりも逸脱した能力があり、浮いてしまったからこそ集まって出来た村。はぐれ村などと忌む言われ方を数年まではされていたのだ。その分子供たちも色んな能力を持っている子達が多かった。だからこそ大きな顔をしていた者達が、どんどんと年下の子達が力をつけて行く様子を見れば、それは焦っただろう。だからこそ、意固地にもなっている。


チャンスを生かすも殺すもその子次第。参加させる前に、そのことを十分わからせて参加させることだけは徹底しようと決めた。その場に参加すれば努力しないで、自分が精霊と契約できると思われたら困るのだ。『人間がどう思うか』でなく、『あくまで精霊がその人間をどう思うのか』、が大事なのだ。精霊を人の理に当て嵌めてしまえば、どこかで大きな勘違いを起こし、過去のように戦争へと発展する。

この村にいる精霊はとても友好的だが、これからもずっとそうだとは限らないのだと理解させておきたい。

まあ、精霊の本音を聞いてしまえば、嫌というほど理解するだろうが。


精霊というものは本来『個』で動く。

『ホセ、小童たちが泣いても凹んでも、文句言うなよ』

『あいつら、偉そうだしな』

『村の外で何が出来るかな』

『まあ、この間外に出た人間は、ちょっとまともになった』


耳を傾ければ、貰ったクッキーをかじりながら辛辣なことを話している。もちろんホセが聞いていることを理解して。

『あいつら俺らに対価を用意できるのか?』


ああ、忘れていた。

それがあった。

魔力があまり大きくない子達は、対価を用意する必要があることも、しっかりと話しておかねば。


『まあ、試してやるよ』



本来の精霊というものはこういうものだったのかと、改めて知ったホセであった。


読んで頂きありがとうございました。

また評価もありがとうございます。

やる気が出るもんですね。

気温の変化が激しいので、体調には皆さんもお気を付けください。

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