169.精霊王の加護
タラサに乗って今いる海の精達と一緒に、手に落ちてきた砂金を全て巻いた。キラキラと太陽に輝く海面に、キラリと砂金が混ざり行く様子は、光の加減で七色に輝いてはとても綺麗だった。まるで海面に虹がかかったようになる。
あ、だから七色草が出来た?海の精の魔力を色がそうしているのか、陽の光でも変わるのか、そこはわからない。正直そこを色々と研究する気はないし、謎でいいと思う。自然出来たモノか、海の精の好意で出来たモノならいいとしても、生産として価値を見出したくない。本当に病気が流行って困っているというのなら、世界樹の葉でどうにかできるのだから。
暫く光り輝く海面を魅入っていたが、テーレたちからサクレを植えたと連絡があったので島へと戻ることにした。
「タラサ、みんなの魂も海に還ったし、サクレが植えられたからもう少し居心地は良くなるはず。だからゆっくりしてね」
『ありがとう。聖女マリー。正直規格外過ぎてビックリ。みんなに居場所を与えてくれて本当に、ありがとう』
「うん。行場所が狭くなれば作るから言ってね」
『わかったわ』
精霊に男女の概念なんてないけど、タラサは魔力が回復して行く中で、姿形は違っても段々と雰囲気がテーレのようになってきた。大精霊になると似てくるのかな?
取りあえず、この島ですることはこれで終了かな。
魚を欲したら島を紹介されて、更に島が出来て。そしたら海の精のことを知って、救出した。
それだけを並べたらなんのこっちゃって感じの流れだけど、必然だったと思う。
「マリー、一度村に戻りましょう」
少し疲れた表情の母さんに促されてたのもあって、戻ることにした。こういう事態になれていないから、母さんでも疲れたようだ。
「お帰り」
父さんに迎えられた。
母さんは父さんの顔を見てホッとしたようだ。
それをみて何があった?と聞かれた。
「ああ…簡単に言えば、海の精が呪縛されて無理やり七色草を作らされていたこと。そしてそれを嘆きながら命を散らしていったこと。そして長い年月を経てそれが浄化されたのを、見たの」
「そうか…」
「うん。多分そういうのに耐性が追いついてなかったから、腕輪していても疲れたのだと思う。母さんは水の精と契約している分、多分同調率も高かったのかな」
「そうか。マリーもゆっくり休みなさい。村の人たちが夕食は持ってきてくれる」
「ああ、シャンスが喜ぶね!」
『肉!』
「きっと美味しいよ。厳選した塩で食べたいな」
言ってからそう言えばと我に返った。
海が近くにあるのだから、海塩も作ってみるのもいいかも。妖精族の人たちの返事次第では、塩を作ってもらうのもいいかもね。
粗塩とか、藻塩とか、柑橘系の塩等何種類か。果実も精霊村のは効果高すぎるから。
「マリー…思考の波に呑まれる前に少し休みなさい」
あ、バレた。
「はーい」
ベッドに横になる前に浄化を掛けて、べた付いた肌を綺麗にした。流石に海水を浴びるとね。
横になると意外に疲れていたのかすぐに睡魔が襲ってきた。
「シャンス、お肉の時間になったら起こして」
『わかった!お肉の時間大事』
マリーが眠りについたころ、両親であるホセとリセは話を始めた。
「あの子も気づいてるけど、本当に15歳まで私たちのマリーでいてくれるかしら?」
「思った以上に、他国との関りが出来てしまった。マリーが今自由に動けるのは、ここが何処にも属さない捨てられた村だったからだ。国以上の力を持っている分、警戒はされているだろう。だからこそ、この強固な結界の中にいる」
「ええ、それを踏まえての結界と強固な守りなのも。昔と違って、ここから一歩も出て行かなくても、村の中で全てが賄えるだけのものがある」
「フェンリルの長もいるし、精霊達もいる。他の村からすれば、桃源郷と言われてもおかしくない。実際商人はそう言ってた」
「あの子に村の中だけに居て、というのは酷よね」
「それは多分ここまで流れが出来てしまっていては難しいだろう。妖精族のこともあるし、海の精が呪縛されていた国がどう動くのかにもよるが」
『海の精については問題ない』
厳かで澄んだ声が響いた。
『驚かせて申し訳ない。我は精霊王。力が及ばず、マリーに助けてもらってばかりだ』
「いえ、いえいえいえいえいえ、大丈夫です」
『そんなに固くならなくてもよい。聖女マリーが健やかに育っているのは、両親の愛情があってこそ。感謝している』
精霊王にそんなことを言われて謙遜することも出来ず、二人は振り子のように頷いた。
『あの国の海の流れを変えておいた。こちらに流れ着くことは出来なくなった』
「では、その国と揉めることは・・・」
『まず、無いであろう。呪縛を解いたのは聖女だと分かったところで、世界を敵には出来ない』
「そう、ですか」
話が大きすぎて理解が追いついていないが、マリーに村に災いが掛からないのであれば、問題ない。
『村の者も精霊と契約している者であれば、外に出てもまず大丈夫だ』
「そうですか。良かったです」
二人はそれを聞いて強張っていた体の緊張を解いた。
『そなたら家族にはきっとこれからもあの子に巻き込まれるであろう。少しでも危険が少くなるようにホセ、リセ、エディに我の加護を与える』
キラキラと眩しいほどの温かな光に包まれたかと思ったら、体がフワッと軽くなった。
同時に精霊王の気配も声もなく、静寂だけが部屋にはあった。
読んで頂きありがとうございました。
来月の中旬には落ち着きそうなので、それまでは1wに1回を目標で!