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168.海の洞窟

ファーストに着くとすぐに他の海の精を置いて、自分だけで島の周りを確認し始めた。それをみながらあたしは船を降り、まずアリアのアドバイス通りもう1本サクレを植えるべくテーレを呼び出した。


ファーストに来たテーレはアリアとすぐに何処に植えたら効果的かなどを話し合っている。

二人とも精霊という特殊なものだからなのか、容姿端麗でどこか神秘的な雰囲気を醸し出している。

この二人が一緒にいるといつも以上に空気が柔らかく、呼吸をするだけで疲れが飛んでいくような気がするのは気のせい?

いや、あの二人の周辺から空気が浄化されてきてるね。魔素の多いファーストだから感じるのだろうか?

わかんないけど、あの二人は精霊の中でも別格。

二人の間に自分がいると間抜けに見えてしまうのは、人間だから・・・って思ってもいいかな?

15歳という成人になれば聖女という称号がブーストして、このちんちくりんさはなくなるのかしら?

まあ、精霊と人間を比べても仕方ないのだけど、成人したらあの二人の間には絶対に立たないことを誓おう。


そんなことをぼんやり思っていたら、タラサから念話が届いた。

『マリー!船を降りた対岸側に、海から繋がる大きな洞窟があるの。入っていい?大きな力を感じる』

なにそれ!ロマンだね。

「危険は感じない?」

『うん。感じない』 

まあ、あたしも鑑定掛けてみたけど問題はなさそう。それにタラサが言うように確かに空洞がある。この島を一周したけど地上だけしか見てないから、そういうこともあるのかな?

「待って。あたしも行くよ。自分の目で確かめたいし」

『じゃあ、迎えに行くね』

そうタラサが答えて、5分もしないうちに迎えに来た。

はやっ。


何処かに行こうとすると母さんはワクワクした顔でやってくる。

「シャンスと一緒に来る?」

「もちろんよ!」


だよね。

村が豊かになってくると時間が余ってくる。その分時間をどう過ごすのかになるのだけど、ほとんどの男たちは加工で余った肉や魚で一杯ひっかける人が増えたし、女たちはおしゃべりに興じた。それでも平和だけど平凡な毎日、ちょっとだけ冒険をしたくなる人もいるはずで。その代表格みたいな人がうちの母さんだ。その母さんが未知の洞窟なんて、見逃すはずがないよね。しかも海から続いているとか、一人ではいけない場所だ。

このメンバーで危ないっことはあり得ないし、じゃあ行ってみよう!


「そう言えば、母さんと探索をするのは初めてだね」


「そうだったかしら?」

「そうだよ」

そう、記憶に残しておきたくないものは忘れるのだ。いや、なかったことにしたい。

(チョコレートダンジョン事件)


「じゃあ、テーレ、アリアお願いね」

二人が手を振ってくれたので、心おきなく行ってみよう。

シャンスに母さんと一緒に乗り込んで、タラサの上に下りてもらった。タラサの上に乗ったら早速探検だ。


洞窟の前まで行くと海面から2mほど空いた空間があった。下はもっと深いようだから、普通の舟でなら出入りできそうな感じだ。一応海の状態を確認すれば今は丁度引き潮のようで、いい感じに穴が見えたのだろう。

まあ閉じ込められても転移できるし、最悪上に穴を開ければいいから何とかなるかな。

『大丈夫。タラサの口の中にも避難できるから』


まあ、それは凄い。精霊だからこそだけど、外の見えない潜水艦にも慣れるってことだ。

「最悪は母さんをお願いね」

『了解~』


ゆっくりと洞窟の中に入っていけば、思った以上に明るかった。どうやら洞窟の壁面についている苔のようなものが光っているらしい。

手に取ってよく見てみれば、見た目も肌さわりも苔だけど、その先に花のような球体があった。それがどうやら光っているようだ。うん、可愛い!部屋で栽培して見たいな。後で少しもらって帰ろう。

ん?

幸運苔…とても空気が澄んでいる場所にしか生えず、幸運を呼びこむと言われている。所謂お守りやラッキーアイテムを作る時の材料にもなる。


へぇ…じゃあ、この先に魔物や不浄な者はいないことが確定。じゃあ、なにがあるのだろう。鍾乳洞みたいな場所かな?

奥へ進んでいくと光が黄色から段々と海に反射してなのか碧っぽくなっていく。

イメージ的にはイタリア?ギリシャだったかの青の洞窟?そんな感じの雰囲気。

聞こえてくるのは自分たちの息遣いに、波の音、そして響いてくる音波の波。


『ここは過去に同胞が隠れていた…場所みたい』

『生物ではないから消滅すれば何も残らない。だけどここには彼らの記憶が刻まれている』


あ、これ…同調だ。

タラサのレクイエムが洞窟内に鳴り響く。それに合わせて洞窟内の幸運苔がそれぞれの感情で光始めた。

紅は炎を示すように怒りに満ち、燃えあがり、やがて燃え尽きるまでを物語り、闇に還る。

始めは懇意で提供していた七色草が、年月を経て争いの元になった。小さき者が呪縛されるようになり、助けるために向かった者も魔道具によって縛り付けられた。数を段々と減らし、最後は泡となって消えていく。


碧(泡)はやがて群青に染まり、深みを増せばそれも闇に包まれる。見えない先を示すように、すべての視界を塞いだ。

そしてやがて静寂の中に安寧が生まれ、再び群青に戻り、碧(泡)に戻っていった。

泡は弾けながら大気となり、清浄な空気をもたらし、魔が去っていく…。

やがて光を示す黄色が輝き始め、やがて眩い限りの金色となった。


この色の移り変わりは時間にして5分~10分程度のものだと思う。

色と共に見える幾つかの情景。タラソとこの洞窟と同調しているためにかなりの精神的疲労は大きい。

リュビの時のような、切り裂かれる激しい痛みは感じない。だけどそれは違う感情が占めていた。魔力を奪われ続けることで、海の精は絶望し、諦め、無に還ることを望んだ。泡になって消えていくときに、現身から解き放たれることにホッとするなんて、どんな拷問だろうか。

やがて闇が安らぎを与えられ、その先に光が見えてきた。

救世主の誕生を示す色。


『手を出して』

タラサの声に手を広げると、上から金色が落ちてきた。


「え、なに?砂金?!」

『人はこれを命の砂と呼んでいた』

「ああ…確かにそうかも」

――というか、普通なら命のやり取りがおきる物。

あれば嬉しいものだけど、あたしには勿体ないモノ。

母さんも横で呆然としている。先ほどの感情に揺さぶられた後に、砂金は刺激が大きいよね。


砂金…命の砂とも呼ばれ、浄化作用に効果的。


「ねえ、タラサ。これは海の精が浄化された証みたいなものなんだよね?」

『うん。そう…』

「だったらこれを海の精が住む海域に撒いたら、もっと住みやすくなるんじゃない?」

『うん、そう…かも…でも』

「だったら、これは本来あなた達が受け取るもの。ぱあ――――ッと撒いちゃいましょう!」

『…信じられない。本気なんだね』

「あなた達が住める場所を増やすことの方が、重要でしょ?」

きっと彼らの想いは、仲間と共にありたいはずだから。


読んで頂きありがとうございました。

分かりにくい文章があったかと思いますが、フィーリングで読んで頂ければ嬉しいです。

感情を表現するって、難しい。

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