161.刈りの時間
朝ごはんを食べたら精霊島セカンドに行くことを伝え、地の精たちと島へ飛んだ。そこで簡単な船をソル達に作ってもらい、試しに海に浮かべてみる。
ここである程度成功したら、ファーストに行く予定だ。
うん。しっかりと浮いてるし、安定感もある。一応バッテリー(魔石)も搭載しているので、魔力で動かすことが出来る。見た目は完全な小型漁船で、車のようにハンドルとアクセルとブレーキで動かすようになっている。
うん、いいね。
浅瀬の海は透明度がいいので、普通に船から覗いても下が見える。見たこともないカラフルな魚が泳いでいるのが見える。前世でいえば、熱帯魚みたいな可愛い魚。そしてよくわからない海草たちを食べているのを見れば、なんだかほっこりと癒された。こういう時間を持つのは贅沢なことだよね。
ソルを乗せてもう少しだけ沖へ出てみた。
底が見えないぐらいになると魚の大きさは格段と大きくなっていく。熱帯魚からいきなりサバぐらいの大きさになった。異世界の海って謎が一杯だ。それとも精霊達が作ったあの島とその周辺だけが、特殊なだけなのだろうか?
「船は安定してるな」
「あ、うん。いい感じだよ。セカンドならこれぐらいでも十分だね」
ちなみに船底の一部は海底が見えるように透明になっている。
昆布に見えないこともない海草が見えるが、鑑定すれば既に水深5mにはなっている。正直こんなところに潜る勇気はない。
元々泳ぎは得意じゃなかった。この体になったからといって泳いだこともない子供だ。海の中でパニックにならない自信なんてないからね。
でも気になるから海草を鑑定。
お化け昆布(幼)
海の水を浄化する海草の一種。生のままでは食べられない。あく抜きが必要。
あく抜き後、乾燥させれば出汁の元になる。
え、あれ既にそれなりに大きいよ?あれで小さいの?
見た感じ2mはあるけど。
「ねえ、ソル。あれ取りたいんだけど」
「まあ、いいけど。海の上だからちゃんとしたのは作れねぇ」
「うん。わかってる。すぐに壊れても文句言わない」
枝切り鋏みたいなものを即席で作ってもらう。海の中に突っ込んで届く範囲で切り取ってやると息巻いた。
波は穏やかだし揺れも殆どないけど、流石に海の中は水圧と流れがあるからか、昆布がユラユラ動くせいで上手く切れない。
「ああ!もう!」
苛立ったあたしは水の中に風(真空の)刃を作り出し、ぶった切った。
浮いてきた端を鋏でつかんだのを確認すれば、自分が海の中に引きずり込まれそうな重さがあった。
やばい。
瞬間的にその鋏ごとマジックバッグにしまった。
流石お化け昆布。
これらを定期的に手に入れたいなら、力自慢の誰かを連れてこないと難しいね。
「マリー…」
作ってもらった鋏を本来の使い方をしていないあたしにソルが呆れていた。
「えへへ…」
「でも、まあ…これからどうやるかイメージは掴めた」
「それなら良かった」
暫くはセカンドで色々試行錯誤しなければ、ファーストは恐ろしいことになることを実感した。
だけど、これで止めるあたしではない。
先ほど根っこを切ったお化け昆布を拾わないなんて選択肢はない。
先ほど一緒に仕舞った鋏だけだして、浮かんで流れていこうとする昆布を捕まえる。それを5度程続けた。
終わったころには軽い疲労感があった。
潜るよりはましだと思うけど、これ以上水深がある場所では難しい。仕方ないかと戻りながら海底を見ていた。
浅瀬であったらラッキーだ。
ん?
あれは?派手な色の海草・・・。
鑑定・・・七色草
栄養不足・栄養過多による身体の不調に良い。海の万能薬。
真水に晒すと色が変化する。色により効果が違うので、その色になった時に塩水につければ色が固定する。
赤・・・過剰出血による貧血
橙・・・栄養失調
黄色・・・食欲促進
緑・・・食料
青・・・栄養過多(糖質・脂質の排泄を促す)
藍・・・食欲減退
紫・・・毒の排泄
あれがわかめ?!
思ってたのと違う!
ってかこれ、普通で考えたら貴重な海草ってことだよね。あたしが求める緑にしたら、喜ばれないという奴じゃない?
えぇ―――――――――。
いいことなんだけど、よくない!
あたしに限ったら、緑一択!
緑で批判浴びないようにして普通に食べるには、全部の色で揃えてしまうしかないよね?
これは刈りの時間なのでは?
きっとそう。
どれぐらいで次が生えるのかわからないから獲り過ぎないようにしながら、周りの海の様子を見てそれなりにあるようなら、午後から刈ろう!
取りあえずどんなになるのかも気になるので、目の前に見えている七色に輝いている七色草をとって村に帰った。
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