15.水の精の名づけと謎なガチャ卵
結局泣いて疲れたのか、リュビを抱きしめたままいつの間にかウトウトと眠り、起きたのは夕ご飯の少し前だった。
アラフォの精神力を持っていても、まだ5歳の体力であの現実を映像で見るのはきつい。戦争でもなくあれは完全な略奪者でしかない。あんなことがこれから先に起きないように、抵抗できる力をつけなければ。
「マリー、起きてる?」
「うん。げんき」
「じゃあ、お夕飯食べましょう」
「はーい」
まだ寝ているリュビを一撫でして、いつものように家族で囲んで食べた。
その時に精霊の万能薬は凄かったと、それぞれが村の様子と共に話してくれた。
木こりの父は疲れ知らずで材料となる木を倒し、樽を作り続けることが出来たこと。全部で10樽も出来たそうだ。
母はご近所さんと森の精が採ってくる果物を洗い、水気をとり皮を剥いたり、漬け込みやすいように切ったりとしていたようだ。
全ての皮は捨ててないよ。ともアピールされた。
早くお風呂作りたいね。
エディは刈り取られた麦を乾燥させるために運んでらしい。他の子どもたちがへたばる中自分だけが最後まで頑張れたと胸を張った。
これだけ効果が出るのならいざという時の為に、万能薬として作って貯蔵しておきたい。だけど流石に缶詰にする技術はないから出来るとしたら、ガラスを作ることかな?
和気あいあいとした食事を終え、すぐにベッドに戻る。
本当は水浴びしてサッパリしたかったのだが、流石に今日はダメだと止められたので、水の精に試しに浄化をかけてもらった。
凄い。体がサッパリしただけでなく、先ほど重く圧し掛かっていた心の重みまで軽くなっている。
リュビの心が軽くなったのも、きっとサクレの浄化が心を救ってるんだとわかる。
本当にすごいな・・・聖なる木と呼ばれているのは伊達じゃない。
気合を入れて考えよう!
まず初めにリュビたち精霊や村人を傷つけるものは、この村には入れないように強固な結界を張ること。
これはあたしがテーレに魔力を注ぎ込むことと、森の精にサクレを育成してもらうことで出来るようになるはずだ。
次にサクレを増やし、早急に枝を村の真ん中の広場と、あたしの家の反対側の端に植えること。
その為に森の精にたくさん美味しいものを食べてもらって増えてもらうこと。
地の精はすぐに来てくれそうなことをテーレが言っていたから、探すこと。
まずは出来ることから、始めよう。
あ、熟成を忘れたわけじゃないですよ?
水の中位精霊さん。
なんとなくジト目で見られた気がしたので、にっこりと笑っておいた。
それもあるけど、そうじゃない。とばかりにポンポン跳ねる。
えーと・・・、いつもの調子で話してくれてもいいのだけど。
『ズルい』
あたし、なにかしたの?!
『そうだけど、そうじゃない。火の精を連れてきたのは僕なのに』
リュビをあたしが独り占めしているからヤキモチ?
『僕は名無しのまま』
「・・・名をつけてもいいの?」
『いい。僕ももっとサクレの役に立ちたい。マリーと一緒がいい』
「じゃあ、グンミはどうかな?」
「僕はグンミ!もっと頑張るよ!」
名をつけた途端に形はそこまで変わらなかったが、アニメに出てくるスライムに羽が生えたような姿になった。
飛べるの?と思っていると、ぽよんっと小さな羽で飛んで頭の上に乗った。
重いし。
首が痛くなるから、降りて。
意外とまじめな一面もあると感心していたのだが、どうやらお調子者が素のようだ。
飛べることが嬉しいのか、部屋の中を探検するかのように飛び廻る。
暫く飛んでいたが納得できたのかベッドに戻って来て、卵の隣に納まった。
その様子を温かい目でテーレに見られているのは、なんとも微妙。
アラフォお局のあたしが、二十歳の新人さんに〇〇さんって可愛いですね。と言われて、反応に困った感じと言えばわかる?
ただの5歳児なら、いいでしょ!ふんすっってやってればいいのだろうけど。
今日のところは寝て、明日動くことにする。
絶対にテーレとお話合いが必要だと思うんだよね。お話合いが!
そんなことを思っている内に5歳児の体力はまだ睡眠を擁して要るらしく、あくびが出てきた。
頭元にある真っ黒の卵に目を向ける。前回サクレは三日かかった。今回はどれぐらいで孵ってくるのだろう。テーレを始め精霊たちが気にする卵なんだから、凄い子になるのは間違いない。
後は寝るだけだからと、大人の頭ぐらいの大きさの卵を撫でながら魔力を流す。生きているよとばかりに、ぽよんっと中で跳ねる感じがあった。
手を置いたところにぽよん、ぽよんと反応があるので面白くなって右手、左手と場所を変えて撫でる。ちょと苛立ったのか途中で縦揺れを始めたので、流石にばつが悪くなってやめることにした。
テーレにジトっと見られ、グンミには溜息つかれて頭の上に飛んで乗られた。
「ごめんて」
卵にも謝ってしっかりと撫でた後は、わかっているならいいとばかりに卵が踏ん反り返って見えたのは、気のせいだと思いたい。
卵がゴムみたいに伸びるとか、あり得ないしね?
やっぱり疲れているのだろうと、眠ることにした。
少しだけ体がヒンヤリしたので、リュビの温かな身体を抱きしめながら眠りにつくことにした。
明日からずっと一緒だよ。二人でいい夢見ようね。
読んでいただきありがとうございます。
ストックが切れました。
二日に一度になるかも