151.精霊島 セカンド2
少しばかりのんびりしたら、残りの半分を回ってみる。奥は森とは違う木が植えられている。これは何の木だろ。
鑑定を掛ければメープルシロップが摂れるサトウカエデみたいだ。これは沢山あってもいいよね。木材も色々と使い道があったはずだ。
そして続くは果実園?
まあ、これは当然作るよね。ただ効果は付与されてないらしく、普通の果実仕様になっているが、出来たばかりの島としては、かなりグレードが高い。
「いいじゃん」
ポム・フルートは元々この世界にあった果実で、南の島?らしくバナナが出来ている。後はブドウだね。これは葡萄酒を作る為に必要なのだろう。そしてそれを抜けると見渡す限り草原。どうやら戻ってきたみたいだ。
そう考えるとブドウ園?凄いな。というか、テーレが凄いのか。
「ふふふ・・・」
さあ褒めろとばかりに現れた。見た目はどこからどうみても妖艶なお姉さん風だけど、こういうところはやっぱり可愛い。
「凄いね!テーレ。また能力上がったんじゃないの?」
「わかる?!あちこちにサクレ植えて大きくなってるから、出来ることが増えたのよ」
なるほど。だからこそ、この多彩なラインナップね。完全に理想の島だよ。
というか、テーレ居たらどこででも国を興せるってことだよね。結界の威力凄いし、色んな食べられる木生やせるし、森の精の威力も上がって作物作り放題だし・・・。
今更ながらあたし、ヤバいぐらい最強?!
『今頃気が付いたの?』
アリア!知ってたよ、知ってたけど、精霊達の本気を見たら、ね。だけど、武力で抑える気はないから、何かあればみんなで逃げられるための選択肢が増えるのが分かって嬉しい。地球みたいに銃とか爆弾みたいなものが生み出されたら、また別の道を探るよ。
あたしはそちらの知識ないし、作らせるつもりもないしね。
『マリーはそれでいいと思うわよ。もしもまた転生者が出てきたら、その時に対応すればいいよ』
「うん。そうする」
『その前に、精霊達がジッとしてないと思うけどね』
怖いことを言う。
地球の方が確かに科学は進んでいるし、日本に限っては出来ることも多い。だけどそれは徐々に、徐々に文化レベルを上げてきた結果だ。
こちらの世界は、想像でモノが出来る存在がいる。あたしと同じように精霊を認め、友好関係を築き上げることが出来る人がいるならば、世界はもっと変わるだろうね。
元の場所に戻って他の場所と同じようにサクレの元には一つの大きな家。聖女の森と違う点は住むように作られていること。どちらかと言えば、あたしたちが住んでいる家に近い。違いがあるとすれば和室がないことぐらいだ。
ここからどうするのかは、皆で決めて貰えばいいかな。正直どこまで手を貸していいのか迷うところだけど、魔物が居ない、食べ物があるというだけで、何処の場所よりも安全で安定している。
やっぱり一度父さんたちに見てもらおう。あたしの常識で動くとダンジョンの中と変わらない結果になりそうだ。
さて、もうすぐ日が暮れる。今日はここまでだね。
「シャンス、帰ろう」
『お魚は?』
「あ、そうだね。全部は難しいから今日のご飯になりそうな物だけ持って帰ろう」
2匹ずつ頭だけ落として持って帰る。あたし的には頭はどうでもいいんだけど、シャンスが頭を食べるというので、仕方なくもって帰る。栄養は確かにあるからね。
家に戻ったあたしは、まず頭を切り落とした魚を母さんに渡した。
普通の魚が出てきたことに驚いたが、これなら難なく捌けるというので捌いて貰った。変に味を付けずにすべて塩焼きだ。
うん。これぞ、焼き魚!
こういう普通の魚って安心感があっていいよね。
他のみんなも普通に美味しいと食べていたが、精霊達は全く興味を示さなかった。魔物じゃないから魔素が含まれていない為、美味しそうに見えないんだそうだ。
なるほど。そういう弊害もあるんだ。
もしかしてあそこ、魔素が少ない?
果物にも魔力がなかったし、温泉にも含まれていない。井戸は作っても、精霊の泉も作ると言わなかったのはそのせいかな?
『それはちょっと違う』
クロ。じゃあ・・・
『聖女の保護から出るということは、そういうことだ。サクレを植えたのは、はなむけだ』
「そう、なんだ。でも魔物の脅威はなくなる」
『そうだ。魔素があるというのは、メリットもあるが、当然デメリットもある。どちらを選ぶかは妖精族が選べばいい』
厳しい言い方かもしれないけど、世間でいえばそんなものか。一緒の村で住むというのなら、仲間として恩恵を受ければいい。だけど手が離れたなら、自分たちで生活をするしかない。当たり前のことなのかもしれないけど、ちょっと寂しい。
これを機に村に移り住んでくれたなら、それはそれで嬉しいけど。
父さんと母さんに新しく出来た島のことを言う。
「ああ、だからあの魚なのか」
「うん、住みやすい島だとは思う。ただ魔素が殆どないので、魔物の脅威はないけど精霊たちの恩恵もない」
「まあ、そこは仕方ないだろう。元々精霊達が普通に浮遊しているこの村が特殊なのだ。魔力をほとんど持たない獣人族の人たちもいるし、そこまで不便を感じないんじゃないか?」
「なるほど。
・・・一度見て欲しいから、明日一緒に行って欲しい」
「そうだな」
「俺も行く!」
こどもたちをサンたちにお願いして、結局家族総出でセカンド(仮)に行くことにした。
読んで頂きありがとうございました。
年末が近くなると、何かと忙しいですね。