131.世界樹と精霊王
遅くなりました!
今回いつも以上にまとまりがないものになってます。
しょうがないなあ・・・って読んで頂けると嬉しいです。
帰る前にひこちゃんのところへ行き、しっかりとご飯を上げた。久しぶりのタレたっぷりのお肉と魔力たっぷりの果物は思いの外美味しかったようで、食いつきが凄かった。
元は魔物だからか魔力がないこの辺りはちょっと疲れるようだ。
「ひこちゃん、三人をよろしくね」
『もちろん、任せておいて』
久々に胸毛のもふももふに抱きついて堪能しておく。ちょっとだけ汚れも気になったので三人と一緒に浄化を掛け、ヒールも掛けておいた。
三人と挨拶を交わしてここでの用事は終了だ。
父さんと手を繋いで村に戻る。
家に戻ってすぐに父さんはパウロさんと話し始めた。
チラッと話を聞いただけでも流石としか言えない。経理については簿記1級までの知識しかない。この際だから村も改革を進めてもいいのかもしれないと思った。ただ、それにより経済格差が出るのは必然で、少しだけ悩ましい。外に出ることが当たり前になる数年後には、必要なことなのだけどそこは父さんたち大人たちの判断に任せたい。
――ということで!
「父さん、アリアのところに行ってくる!」
「あ、ああ、そうだな。様子を見てくるといい」
今後またあの薬が必要になるかもしれない未来なんて来てほしくないけど、あの国のこともあるし備えは大事。
「アリア来たよ!」
「やっと来たわね。遅いのよ」
ムッ。助けてもらったし、結果としてよかったけど、あんたの扱い難しいんだって!
「マリーの場合、準備は色々と大袈裟なぐらいが丁度いいから」
いや、あんたの存在が一番混乱招くんだよ?あった方がいいのは確かなんだけどさ。
・・・あたし、やさぐれてるね。
「そうそう、薬作っておくからゆっくりしたら?」
そう言われてやっと周りを見る余裕が出来た。
子供の頃コッソリ入ったことのある、神社の社の中。そんな雰囲気の、.厳かで優しい空気。葉と葉がこすれる時に紡ぎだす囁きが、音楽のように旋律として僅かに聞こえる。ハープぽい。
何も映し出さない水平線の真ん中に聳え立つ世界樹。見た感じCMにもなってた大きな樹くらいの大きさで、真っすぐに天に向かって伸びている感じだ。横幅はだいたい2mぐらい?
秘密基地みたいに木の根っこに穴があれば面白いのに。そんな自分勝手なイメージを抱きながらグルっと一周してみた。その間もずっと何かの旋律が流れている。始めは囁きだったのが、今はポップしているような楽し気なものに変貌していた。世界樹の気分なのか、自分の心を反映しているのか。何となく気分が上昇しているのは確かだ。
世界樹の名前たしか「マグナ」だったかな?
『ああ、そうだ』
不意に聞こえる声に一瞬ビクッとなるも、ああ念話かとすぐに納得した。
「元気?」
『ああ、ただ静かすぎて物足りない』
「ああ、確かに。だけどこの静けさは逆に厳かでいいんじゃない?」
『人々の声が聞こえぬ。我の存在意義は人と共にある』
華やかで賑やかな時を知っているならば、今は寂しいと感じるかもしれない。ただ今のこの状況だと争いの種にしかならない。いや、いつだって過ぎた力は排除か取り込むかに分かれる。だからこそ、誰も入れないダンジョンに世界樹を植えた。――人の生と死を選ぶ立場になるとか、奢ってないと出来ない所業だね。
息抜きに来たのに、また心が重くなったら意味がない。それでも、避けて通れない道。
そしてそんなに遠くない未来に、ここを解放することになるだろうという予感もあった。
「本当に必要な人がここに来れるようになる時がきっとくるよ」
『そう願う』
「マリー薬できたわよ」
その声に振り向いて「ありがとう」と受け取ろうとしたが、尋常じゃない量に固まった。
「なに、それ・・・」
「薬に決まってるでしょ」
「いやいやいや、その量おかしいでしょ!軽トラックの荷台一杯になるぐらいの小瓶が並んでるとか!」
「それぐらいいるかもしれないでしょ?助けられる命を見逃せるほど、マリー強くないし」
だからって、世界樹の大精霊がいうことでもないけどね!
「でも、まあ、ありがとう」
こんなことぐらいで?という感じだが、来た時よりも心も体も軽くなってる気がする。
強くないと言われるのは、案外気が抜けた。
「マリーはマリーらしく好きに生きればいい」
「あなた達みたいに?」
「私たちはここに在るもの。世界を変える者ではないわ。いつだって世界を変貌させるのは、人間。望むのも与えるのも奪うのも」
だからこそ、悩むんだっつーの。
「大丈夫よ。あなたが破滅を願ったら、この世界はすぐに滅びへと向かう。望まないあなただからこそ、ここにあたしたちが在る。マグナが大きくなっている間は大丈夫。枯れ始めたら、何かがおかしいと思ってくれればいい」
「この世界のバロメーターってこと?」
「そんな感じよ。分かり易くていいでしょ?」
そうかもしれないけど、それでいいの?
そう言いかけてやめた。ここに在るものだだとアリアは言った。
まあ、そうだね。科学的に証明できないものだからけの世界なのだ。アリアがそうだというのならそうなんだろう。
「じゃあ、何か異変があったら教えてね。精霊たちもここに遊びにくればいいし・・・、ってここに精霊王がいればいいんじゃないの?」
なんで今まで気が付かなかったのだろう。ここには危害を加えるものは入れないという最強の結界がある上に、世界樹があるんだよ!復活も早くなるんじゃない?!
『テーレ!リュビ!シン!どう思う?』
『『いいと思う(わ)!』』
精霊王の守りに大事な三人の名を呼べば、すぐに答えは返ってきた。
あの杖を貰ってからは特に精霊たちとのパイプは太くなったと思う。姿は見えないのに、いつも守られている気配がいつもあって、呼べばすぐに来てくれる。あたしの大事な精霊たち。
テーレに抱きしめられ、リュビが腕の中に飛び込んできてシンは肩に止まった。
ふふふっ。
あたし、愛されてるね。
『今頃気付いたの?』
「知ってたけど、改めて実感したの!」
『それならいいわ』
「うん。お願いできる?」
『『勿論!!』』
「マグナも少しは寂しくなくなるね?」
『少し、だな』
きっと多くの精霊たちがこの世界樹を拠点に生まれる。そんな未来は遠くない。
桃源郷と呼ばれる場所にいずれなる。
本当に世界樹を欲している善良な者だけがここに来れる、そんなシステムが出来ればいいな。
精霊たちに認められたとか、
祈りが神に届いたとか、
善行(徳)を積んだ者に道を拓くとか。
精霊王がそれを担ってくれたら、あたしも安心だしもう少し聖女としてじゃなく、マリーとして過ごせるんだけどな、と自分勝手なことを思う。
『マリー、その役任せてもらおう』
『精霊王?!』
『我の助力、感謝する。世界樹のマグナの元でなら、後半年ぐらいで姿を保つことが出来そうだ』
『本当に!!きっとみんな喜ぶ!』
『その時まで・・・もう暫く頼む』
『はい!』
無意識に入っていた肩の力が、完全に抜けたのが分かった。
精霊村のマリーとして、自由に動けることに感謝した。
結局名前に縛られているのは、自分。性分と分かっていても、直んないなぁ。
でも、まあ、立ち直るのが早いのもあたしってことで!
『また来るね、アリア』
『ええ、待ってるわ』
読んで頂きありがとうございました。
仕事で色々とナーバスになってしまい、中々書けませんでした。
次回からもう少し明るい話題で行けると思います。多分
ブックマーク&評価、ありがとうございました!