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121.ポルテモンテの現状

戻ってすぐ野菜を積んだ荷車1つと一緒に、父さんにエディと母さん連れてそこに行ってもらうことにした。母さんたちが野菜たちを切ったりしている間に、あたしはも一度家に帰って果実水ポーション作りだ。ここで秘密兵器登場!ソルとドワーフの合体作、大型ミキサーを作ってもらった。ここにポイポイと放り込むだけで下の蛇口を捻ったら、純度100の果実水ポーションの出来上がり。

勿論、これを他の人に飲ませるのは色々効果が出過ぎるので、勿論水グンミに出してもらった水で3倍に薄める。薄めたものを空瓶に積める。という作業を行った。どれだけ必要になるかわからない。

口当たりがいいポムを一升瓶20本作ったところで一旦町へ戻った。

戻るとすぐに父さんが待ち構えていた。土鍋が足りないと。

あ、忘れてた。


急いで露店があった場所に戻ると、粗方の大捕り物が終ったようで、拘束具らしきものに繋がれた男たちがあちらこちらに・・・沢山いた。

うっわ・・・汚いし臭いし目が汚れるし、さっさと牢屋に回収して欲しい。

これじゃあ、スープが不味くなる。

と思っていたら、鉄格子の箱が幾つも運ばれてきた。

その中に拘束具につけられたタグで、拘束された人たちは振り分け入れらていた。

よく見ると鉄格子の箱は魔道具の一種のようで、魔力吸収と不壊が付与されている。なるほど、魔法を使う人間もいるから、外から助けに来ても壊せないようにしてるのか。

そして犯罪の大きさで連れていかれる場所が違うと。

捕まえられた者たちは、ギュウギュウに詰め込まれ、立っているのがやっとな感じだ。過去に乗っていた満員電車を思い出すね。あの時ばかりは自分をただの荷物、ぐらいに思わないと乗れなかった。あれと思わずイメージが重なってちょっと目に汗が・・・。


そんな過去に涙していると、詰め込まれた囚人の入った鉄格子の箱が連結され、列車のように繋がれたかと思ったら、サイみたいな魔物がが引っ張り出した。

どうやらどこかにこのまま連れていかれるようだ。

これでスラム街も入りやすくなるとホッとした。子供たち助ける前に、大捕りものとか面倒だからね。


さあ、気合入れてスープ作るぞ!

ただ人目がない場所が殆どない。仕方ないので小さい声でコソコソと指示を出す。

「ソルスープ用のお鍋5つ程作って。出来たらグンミ水入れて、リュビ火の管理お願いね」

「テーレも、配る用のお椀を作ってこの中に」

聖女と言われてしまったし、誤魔化しが効くとは思ってないけど、念のため空の木箱に鍋を作ってもらう。

出来上がった鍋に次々とカーヤや母さんが切った野菜とお肉が投入される。

そしてあたしは背を向けて土鍋を作ってそこに米を入れ、水を入れて炊き始めた。

え、糠?これは無洗米仕様にしているやつだから大丈夫。冒険に行って米を研ぐとか出来ないし。


「次から次へと食糧が!」

「聖女って何でもできるのか?」


なんてこと言ってくれちゃってるけどね、出来るか!あたし今、物凄く大変!

この町、めっちゃ魔素薄い。どういうことかといえば、当然精霊たちが動くたびに不足してくる分を、あたしから抜いていくという状態になる。

ああ、ダメだ。これはすぐに体の中の魔力が枯渇する。

急いでリュックから果実水ポーション出して飲み、魔力を回復させる。

一息つけたけど、これはキツイ。

浄化は母さんメインでしてもらわないと、魔力というよりもあたしの体力の方が先になくなるかも。

後はリュビの火の管理だけだからと、もう一杯飲んで踏ん張った。

どうやら出来たようで、リュビへ流れる魔力が止まった。

これはあたしにとってもいい勉強になった。魔素の少ない場所で、精霊たちの力を借りるのには限界があることを、体で覚えたよ。


小銀貨1枚で野菜とお肉が入ったスープが食べられるということで、周りにいる人たちが並び始めた。

ビアスはお金の勘定が苦手なので、父さんと一緒に列の整備をし、母さんがお椀に注いだのをカーヤとヨハンがお金を貰って渡す役だ。

「一人二杯までです」


早速食べ始めた人から感想が聞こえる。

「これ、めちゃくちゃうめー」

「具がタップリ入ってる」

そんな声につられて列が増えるが、数に限界がある。列に50人ほど並んだところで、「此処で終了です」と並ぶのを打ち切った。

噂を聞きつけてやってきた人たちは、あれこれ言い出すが、ないものはない。ボランティアで来ているわけじゃない。片づけを手伝ってくれた人達へのお礼みたいなものだ。

父さんがそう言った人たちに、恫喝も含めたデカい声で叫ぶ。ここで舐められたら終わり。


「我々はボランティアに来ているわけじゃない!」

鍛えられた体で、村長としての威厳を持って発した父さんの声は、とてもよく響いた。

「無駄になりそうだったお肉を食べて欲しかったから、特別価格でやったことだ。正直、子供たちの努力を無にしたこの町には失望している」


うんうん。いいこというよ、父さん!カッコいい!

そして大事にしてしまって、ごめんなさい。もっとこの町のことを知ってから行動すべきだった。

これからはやっぱり事前に調べてから動くことにしたい。情報って大事だよね。

それにしてもカランキ村でも孤児がいたから、街でもそれなりに貧困はあるだろうと思っていたけど、思っていた以上にひどいっていう事?


マーティンさんのいる街に行くには、更に西に行くってことでしょ。

地理がどうなのかわからないけど、そんなに土地が痩せてるのかな?森もない?

もっと話を聞いておけば良かった。

あ、でもあの町長が戻ってきたら話が早いかも。正体ばれてるなら、開き直って商売するかな。


「グランあの町長今何してる?」

『囚人たちをブレイロットに連れて行く準備してるみたい』

グレイトがあたしの肩で答えるのを聞きながら、こちらの意思をどうにか伝えられないものかと思う。

流石に電話みたいな通信機は作れないし、ここじゃあ精霊たちに動いてもらうのは得策じゃないし、あの囚人たちに近づきたくもない。さて、どうしたものか。


「マリー、こちらにおいで」

父さんの声に考えに耽っていたあたしは我に返った。

「なに、父さん」

「町長からの使いがマーティンさんの商会に来ているようだ」

「丁度良かった。どうやってコンタクト取ろうかと思ってたところ」

「・・・そうか」

「うん」


仕方ないなという顔をして、あたしを担いだ。

まあ、あたしも走れなくはないよ。だけど魔力を使いすぎて疲れてるからね。ホント、魔素がないと強化して走ることすら疲れる。森以外の場所でのあたしの能力は、半減すると言っても過言でない。戦いなら杖があるから勝てるけど、破壊神にしかならない。あたし専用の魔道具作ってもらおうかな。魔導自転車とかあったら、もしもの時に逃げやすいし。

頭の中で色んな情報が散乱していたが、マーティンさんの商会に着いたらすぐに現実に意識が戻った。


うげえ、跪いて待たれるとキツイ。

「アシル様、出来れば普通にしてください。周りの人たちが戸惑うので」

「では、アシルとお呼びください」

「・・・わかりました。そのように」

「本当に、聖女が誕生されていたとは・・・」

年頃の女性なら転がせられるんじゃない?というほどの精悍な顔立ちの人に、そんなに感無量とばかりに見つめられても。


ここに母さんがいなくて良かったかも。意外にミーハーだからね。

母さん?ヨハンたちと一緒にエディも手伝って、端切れを売っている。かなり上等の布だからね。色んな使い道が出来る。特に女性にとって、お金を稼ぐことが出来る1つの手段になる。

話が逸れた。


「まあ、何故か。そんなこと、今はいいんです。この町の現状を教えてください。状況によりますが、手伝えることがあるかもしれません」

「お力が借りできるなら、お願いしたいことがあります」




読んで頂き、ありがとうございました。

ブックマーク&評価もありがとうございます。

暑い日が続きますが、熱中症にお気を付けください。

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