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アラフォー女転生 卵ガチャで目指せスローライフ! 【完結】  作者: 桜田 律 
第一章 5歳 スキル『ガチャ卵』の真相
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11.自由な水の精と砂糖

呆然としたまましばらく庭を見ていたが、足元の冷たい感触に我に返った。

水の精の体当たり。

涼しくなり始めた秋の終わりでは、あまり嬉しくない。

それよりも!


「ふえてる?」

水の精の数が昨日の何倍になっている。森からついてきたの10ぐらいだったはず。だけど、見えるだけでも数十いる。

なんで?

という疑問すぐに解消された。


湧き出る泉から一緒に流れ出て、用水路の中を『酒~』とか言いながら楽しそうに流れてるとか、訳が分からない。

一種のホラーである。


よーく見ていると、現時点でも用水路が増えているのがわかる。姿見えないけど、誰が掘ってるの?

てっきり水の精に急かされた、とーさんが鍬でエディが土魔法で掘っているものと思っていたけど・・・。


地の精がやってきたとか、言わないよね?

だって、あの歌の通りだと火の精が先だもん。

きっと森の精が掘ってるに違いない。

あのふわふわの綿毛でどうやって掘るのかとか、考えない。


心の安寧の為に、見てないことにしよう。

うん。そうしよう。



さて、母さんはともかく、とーさんとエディは何をしてるのだろう。

「とーさん」

「マリー起きたか」

「うん・・・」


どこの山賊だよ!

斧を担いで返り血を浴びた姿で娘の前に来るとか、これこの世界の常識?

怖い通り越して、生臭くて鼻が曲がりそうだ。頼むから、早く水浴びしてくれ~。


あたしの顰めた顔など気にせず、娘に近づいてくる父に天誅!

「水さん、とーさんにとつげき!」


その声に反応した用水路を流れていた水の精から、水圧洗浄のように水の塊が父に向っていった。

『『突撃――!』』

「な、なんだ!冷たい、痛い、オイ…」


イッシシシ。

水の精、ありがとー!

長いようで短い時間の水のシャワーが消えた後は、ピカピカの父が立っていた。

凄い!これ温かいお湯だったらして欲しいかも!もちろんもっと優しくしてもらわないとあたしが吹っ飛んでいくから、水圧は気を付けてもらわないとだめだけど。


ということは、このお水でお風呂作ったら肌つるつるしっとり、しかも浄化されるなら病気知らず?

お礼に造ったお酒あげるとか、どうだろうか。

『酒!いいよー。お礼酒でいい』


いいんだ。

だったらお風呂の為に、お酒を造らねば!


「これ凄いな。元々この服は捨てるつもりで作業したのだが、ここまで綺麗になるとは」

これで近づける。

「何してたの?」

「ああ、精霊の泉の周りをエディと一緒に作業した後、村人たちと森へ行ってきた。冬の前に肉や木の実、薬草など冬ごもりの準備は、やることが沢山ある」

「エディは?」

「年長の子たちと、森で薪を拾っているはずだ」


森と聞いて行きたいと思ったが、足元でキラキラさせている水の精を放置はできない。

「とーさんきがえた後、タル作って」

その言葉で足元の水の精に気が付き頷いた。


「他の者にも声かけよう。マリーは無茶をするな」

「うん」

無茶をするのは、精霊たちですけどねー。


綺麗にはなったが服が乾くわけじゃないので、父はすぐに着替えに行った。

火の精居たら乾くの早そうだけど、さらに無茶が加速しそうだから悩みどころだよね。

樽の材料になる木の育成はあたしだけでは魔力足りないから、森の精にも手伝ってもらって。お礼の果物とお酒用の果物を収穫して。


砂糖がたっぷりいるんだけど、謎作物に代わりになるものあるのかな?

間違いなくあると思うけど、どれなんだろう。取りやすいものだといいな。


「テーレが案内するよ」

ふらっとどこかに行っていたテーレが戻ってきた。


鼻歌混じりのテーレの様子に、既に準備が整えられている気がしてきた。

砂糖がどれとも、樽の木を育てるとか何も言ってないのだけど。以心伝心なのか、精霊たちに転がされているのかわからないけれど、Win-Winなのでどちらでも問題ない。


テーレがこれだよと指した作物は、花の蕾が膨らんだような形に近い白い実だった。

「この実の中身が甘い砂糖なの!」


そういって、テーレは白い実を収穫し始めた。

柔らかそうな皮なので採るだけで破けないかと心配だったが、触ると弾力がブドウの皮に似ていて、意外にしっかりしている。


1つがテニスボールぐらいの実だから、沢山あるように見えるけど樽の大きさによっては1つで限界かな。果物以外のお酒も造るだろうから、そこは村の人たちに丸投げだ。

ビールとか焼酎とか、全く作り方わかりません。飲む専門の人でした。

熟成頑張ります!


テーレの腕の中が白い実で一杯になったころ、マンダリンの皮を集めた袋を持って母が帰ってきた。

「その白い実が砂糖なのね」

「そうみたい」

「桶をいくつか持ってくるわね」

「はーい」


何処に入れようかと思っていたから、母の提案は助かった。目の前に集めた皮の袋を置いて行かなければ。

精霊たちに急かされてお酒つくりに励むあたしに、どうしろと?

このままだとと腐るだけだから、この際干して乾かせるしかない。使い方はその後考えよう。最悪はお風呂と称して精霊の水に浸すだけでも効果があるのだから。


桶を持ってきた母さんに「この皮は天日干しだ」と伝えると、桶を置いてすぐに洗濯を干す場所に袋を持って行った。

・・・。

母よ。何をそこまで駆り立てる?


我が身を振り返ってみれば、マリーは自分が一番好きなことに猛進していることに気がつくのだが、精霊のチートぶりに隠れてわかっていない。


テーレが森の精にも呼び掛け、収穫を手伝ってもらう。ピンクの綿毛がふわふわと飛んで、白い実を集める様子はとても可愛らしい。

それを見て水の精も手伝わないとお酒が飲めないと思ったのか、用水路に流れてわらわらと集まってきたが、砂糖が濡れてはいけないので諦めてもらった。


しばらくしょぼんとしていたが、何かを思い出したようにまた用水路に流れて行った。

それを見守っていたが、どうやら用水路は庭の周りを循環しているらしく、水の精の行動経路になっているようだ。


水の精より今は砂糖。

集まった白い実から、サラサラと白い砂糖が中から出てくる。グラニュー糖だ。

少し摘まんで舐めてみる。

ン。甘い。

これなら美味しいものが一杯できる!

甘い白いパンとか、ホットケーキとか、醤油できたから美味しい煮物も出来るし、夢広がるね!


マリーは食べたいものに夢をはせながら、森の精とテーレによって桶に積まれていく白い実から、砂糖を黙々と取り出していた。

水の精が何かをしに行ったことは、忘れて・・・。



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