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114.アルルへ

完全に夜が明け始め陽が森の中に届き始めると、朝露草は枯れる。それを合図に朝の採取は終了だ。

あたしも自分で採取したものを持って帰った。採取と実験をやったことを、父さんに話す為だ。

上手くいけば、この村の特産に出来る。商人になる子にも、冒険者になる子にも朗報ではないだろうか。

朝食を食べながら父さんに薬の改良のことと、そのメリットを話した。

お前はまた…そんな顔をしたが、村にとってもいいことだと思いなおしたようだ。


「後でその薬見せてくれ」

「うん。サンが持っているし、作れるようになってるよ」

「そうか。それはいいな」

「でしょ。森の精霊が居たら出来るから、父さんでも作れると思う」

「そうか!なら一緒に一度作ってみよう」

「後ね。後マーティンさん達が来たら、外貨得るチャンスでしょ?そこでも売れるし、この先のことを考えたら、大事だと思うんだよね」

「そうだな。この村の物をあれこれ外に出すわけにはいかないからな」

「うん。でもその辺村の子供たちは、理解していない人が多いと思うの。まあ、主にあたしがやり過ぎたせいだけど。だから7歳になってスキル授与する時にこの村の特殊性を話しておく。そして森での薬草採取の経験とか、プログラムを組んで外のことを知って貰ったらどうかと」

「そうだな。それならマーティンさんが来たときに、話をして貰ってもいいかもな」

「あ!それいいかも。実際に外のことを知っている人から話を聞くって大事だよね。後は今回外に出た3人からの体験談発表」

「体験談発表?」

「うん。実際に体験して知ったこと、学んだことを話してもらうの」

「みんなにも話してみよう。で、マリーはこの後、何処へ行くんだ?」


やっぱり誤魔化し効かないよね。これだけ村全体の気が高揚してたら。

「あ、うん。長達が狩りに行きたいというから、シエロに乗って付き添い」

「ああ、だから朝からみんなテンション高いのか」

「ストレス溜まってるらしいから、行ってくる」

「まあ、駄目だと言って止まる者達ではないからな」

そこに一定の理解はあるが、まああたしだし、心配ではあるよね。

それに村長になってから気苦労も多くなっているみたいだし、本当はそとで暴れたいんだろうな。それは母さんも同じかもしれないけど、妖精族と仲良くするのが楽しそうだから(化粧品関係で)ストレスはなさそうだ。


「父さんも一緒に行く?長が行きたがっている場所だから、かなり大暴れできるんじゃない?作っただけで使われていない武器や防具なんかも試すのにいいかもよ?」

少しだけ悩むふりをしてたが、すぐに行くかと腰を上げた。

ミスリルの武器等ほとんど使うことないまま、スタンピードも解決したから絶対に使いたいよね。


あたしは近くで魔物とかみたくないから、コレで!

じゃじゃーん。聞いてびっくり見てびっくり、ソルが張り切って作った杖。もう伝説級のものが出来上がったぜ。

ソルにどんな杖が欲しいと言われたから、なんとなーくイメージしてみた。

流石に魔女っ娘に憧れてた時は違うから、キラキラしてないよ?大きさや形状など自在に変えられることが出来る、シンプルなのを。

うん。形状は注文通りだった。だけど見えないように、杖の中に埋め込まれていた宝石や魔石に付与された内容が酷かった。


テーレからは世界樹の葉を結晶化した水晶に『結界』

グンミからはブルーサファイアに『浄化』

ソルからはSランクの魔石に『地脈掌握』

リュビからはルビーに『浄火』

シンからは『変幻自在』を杖本体に 『空間把握』をSランクの魔石に

眠っているはずの精霊王からはダイヤに『祝福』


クロからは『精神安定』と杖自体を全体を闇で覆ってもらい、杖はただの木にしか見えないようにしているらしい。

勿論杖の本体はサクレの枝から作られており、絶対に折れることがないのだそう。

どんな杖だ。

落としたらどうするのかと心配してたら、マジックバッグのようにどんな場所に居ても手元に戻ってくるように、シエロが『転移』を応用して、付与してくれたみたい。

カッコいい!って褒めたら、何個か作ってくれたので、父さんたちの武器や車などにも埋め込んでおこうと思った。誰かの手に渡ったら、危ない。


なんてものが、あたしの元にはある。だからどんな敵だろうと、負けようがないのだ。

まだ一度も使ったことがないけどね。

この際、父さんと一緒に試してみるのもいいかな?いざという時に威力が大きいとか困るし。


「マリー20分後に出発でいいか?一応出かけることを村の相談役に伝えておかないと」

「うん、いいよ。ただどんな状況かわからないから、エディや母さんには内緒にしておきたいから、宜しくね」

「ああ、分かっている」

大きく同意だとばかりに、頷いてくれた。


あたしは念のためマジックバッグの中身を確認しよう。

腹が減っては戦はできぬ

とりあえずは大丈夫そうだ。足りなかったら肉は現地調達でいいし。


『シエロ!』

颯爽と現れた。いつみても神々しくカッコいいのだが、食いしん坊なので締まらない。

「シエロ、口元に果汁がしっかりと付いてるわよ」

『気のせいなのだ』

といいながらも、必死に綺麗にしている。

『長たちも行く準備OK?』

『何時でも行けるぞ』

張り切って家の中にシャンスと競うように入ってきた。

ドンだけ、行きたかったのよ。

次々に精霊達も集まる。

「リュビも行けるの?」

最近はずっと精霊王の守りに付いていたはずだ。

「王がたまには主と戯れてこいと」

「じゃあ、久々にぎゅー。相変わらず、もふもふだね。いや、モフ度合いが増えたね。階級が上がるともふもふ度も上がると。うーん。素敵な毛並み」

リュビと戯れていると、父さんが駆け込んできた。


「マリー急いでいくぞ。母さんが気づいた!」

「うわぁ、なにそれ。父さん急いでシエロに乗って」

いいながらも自分も飛び乗る。

「さあ、シエロ皆が行きたがっている場所へGO!」


「待ちなさい、ホセ!マリー………」

間一髪!

「帰ってからが怖いね」


なんて呑気なことを言ってたら、抱っこしてたリュビからと杖から『浄火』が放たれた。

それはもう圧巻で、結界の中にいるお陰で熱くもないし、酷い匂いもしないけど、凄いことになっているのは分かった。目に映るのは視界全体の『アカ』しかない。

赤・紅・朱…深い色から淡い色まで色とりどりで、熱さがなく逆に実感がない分、綺麗だと思った。

正しく死が訪れる瞬間だからかもしれない。


状況としては、負の魔力のたまり場となっていたのか、争いに負けたモノたちがアンデッドになっていたという、最悪なところだ。

どうしてこんな場所に、あたしたちをど真ん中に放り込んだ!

父さんが放心状態じゃない。

プスプスとあちらこちらがまだ燃えている中、グンミと杖から『浄化』が放たれた。

エフェクトキラキラが地に着いたところから、真っ黒で何も見えなかった地から、草が生え始めた。

どうやらあたしの仕事はこれが最重要事項のようだ。


「父さん、大丈夫?」

「…ああ」

大の大人がこんな状態なのに、何故あたしが通常運転かって?

クロの契約者で、すぐに精神異常が解除されるから。

こういうことがある場合があるのかと、ちょっと勉強になった。精神異常解除とか、精神異常耐性とか付与したものを皆には、身に着けてもらってた方がいいかな。

そんなことを考えていたら、杖からふわーとした靄が出てきて、父さんを包んだ。


「ふー…これは予想外だった」

どうやら、正常に戻ったようだ。

「あたしも想定外過ぎたよ」

「それにしても色々と規格外だな…ここはあの例の街か?」

「うん。妖精族がいなくなって、街が廃れて人が居なくなったから魔物が住み着いたみたい。で、覇権争いしてるらしく、長が秩序を正しに来たんだけど、人間の欲の塊だった街だったから、死んだあと、色々と呑まれていった感じかな?」

「あり得るな。さて、俺の仕事は」

「どうやら浄化した場所を狙いにやってきた魔物?」

「だな」


その瞬間から長とシャンスたちと一緒に父さんも飛び出していった。

鬼神とまではいわないけど、さすが元Aランク冒険者。チートな武器持ってると、簡単に倒すなぁ~。

私も参加してみたい気がするけど、あの火力で行くとなるとな。

「シエロ…他にも負の吹き溜まりがあるなら、この際やっちゃうから行って。リュビもグンミもそれでいい?」

「「いいよー」」

シンは父さんと共闘し始め、魔物の手足を切り裂いている。

ソルは焼け跡に散らばっている魔石などの回収。

テーレは焼け跡に木を植える。それぞれがそれぞれのことを始めた。

落ち着いたのはどれぐらい経ってからだろうか。


父さんが疲れたと戻ってきたことが合図になって、一度結界を張ったまま食事をすることにした。

アイテムバッグに入っていたおにぎりと色んな味付けで焼いたお肉がお昼ご飯だ。

ただその前に美味しいご飯を食べるには、今の状態は頂けない。体中についている埃や色んなものの汚れを取るために、グンミに全員に浄化を掛けてもらった。

よし!みんな全身綺麗さっぱりしてから、食べ始めた。


テンションMaxで動いた後からなのか、長とシャンスの食事があり得ないほど早くなくなっていく。

これお肉全部なくなるかも。素材だけならまだまだあるんだけどね。この場所で焼き肉とか絶対に無理。

そしてお腹が膨れてくると、いろんなことが頭に浮かぶ。

これだけのアンデッドと魔物が居て、人間がいる方向へ行かないなんてことないよね?

ここがこれならここが所属していた国、無くなってたりしてないよね?

自分の手に余るようなことまで首を突っ込みたいわけじゃない。だけど知ってしまえば…ね。

まずはここをどうにかしないと。その先を考えるのは、まずはここが落ち着いてからだ。

結界の外からわらわらと客がやってきたよ。

「長、シャンス。やっておしまい!!」



読んで頂き、ありがとうございました。

ブックマーク&評価も嬉しいです。

ボチボチになりますが、がんばります。

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