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113.待てが出来ない者達のお陰で、品質改良

大気のざわめきで目が覚めた。朝にしては早すぎる気がする。

少しカーテンを開けると窓の外はまだ夜の空。だけど目を凝らせば、薄っすらと光が差し込み始めたのが分かった。夜明けだ。時間にして朝の4時半前後。

数年前なら、少しずつ周りの人たちが起き始め、朝ご飯や仕事の支度に追われ始めることだが、最近は事情が変わった。それは主にあたしのせいだけど。

夜に明かりが灯せるようになったし、酒や料理が充実してくれば当然、大人たちは酒を交わすようになり、夜更かしになった。

子供たちも以前のように家の手伝いを任されることが減り、その分朝食を食べたら集会場で昼間まで勉強。昼から家の手伝いか公園などの遊びに変わった。少し日が暮れても、村のあちらこちらで火の精がいるせいで明るいし、陽が落ちるとともに食べてすぐ寝るという習慣が無くなってきた。その分夕飯はゆっくりと時間をかけて食べるようになったし、お風呂に入って衛生管理や体調管理を推進してる。


もはや村の生活というよりは文明が進み、町を通り越して街並みになってきている。あくまでこの辺りの比較でしかないけど、あの国の文明よりそこまで劣っているとは思えなかった。

そこは精霊がいるからなんだけど。


だからね。何が言いたいかと言えば!もっと寝たいのあたし!

なんでテンションが高くなったみんなの気に、起こされなきゃだめなわけ?

あたし、何度も言うけど…こ・ど・も!

冒険者じゃないんだから、こんな朝早くから魔物狩りとか行かないから!

わかった?!

後2時間は確実に寝るの!子供は寝て育つんだからね!

この時間に起きて動くのは、朝露草という夜明けにしか生えてこない薬草を取りに行く人だけだ。これは本来のこの村で飲まれていた万能薬の元。

飲み薬には胃腸薬・風邪薬・頭痛薬

磨り潰して軟膏になれば、切り傷やしもやけなど皮膚疾患に効くと言われている。実際鑑定をしてみたが、簡単に作れるものとしては万能だった。強いてケチをつけるならば、苦い、臭い、飲みにくさだろうか。

今は果実水ポーションがあるから、この村の人たちは飲まなくなった。だけどこれらを外に出すわけにもいかず、昔の製法を失うのも良くないということで、少量だが村の年寄りたちが作っていた。


この朝露草は魔素が多くしかも水が綺麗な場所しか生えないらしく、中々手に入らないとのこと。子供たちを引き受けてくれたお礼にと、年寄りたちが道中を安全にと渡したのだ。

それらは商人たちに思いのほか喜ばれた。

薬師と言われる人から買うと、小金貨はいるのだそうだ。

その言葉に皆唖然。

だったら自分たちが当たり前に飲んでいる果実水ポーションなんて……。

皆の視線を集め、何か言いたげな表情で見られ続けて、物凄く居心地が悪かった。

いいじゃん!美味しく飲めてみんな健康になるんだからさ。お陰で皆病気知らず。まあ、ここを出る時は、色々と覚悟をしてくれ。


―――ということで、お小遣い稼ぎをしようという者が森へ出かけるだけだ。最近では精霊も増えたのとサクレの守護の範囲が広がったことで、小動物しかいない浅い森でとれている。

まあ、カランキ村にいた、子供たちの新たな仕事だ。本人たちも役割が与えられて喜んでいるから、問題ない。まあ、問題があるとすれば、あの味だよね。この村の果物を混ぜるわけにもいかないし…。


八ッ!あたしは寝るんだ!



だぁぁぁぁぁぁl!

寝れない!

朝から頭を使ったせいで、またいらないこと思いついてしまったじゃんか!

『ねえ、テーレ』

何を言い出すのかわかってるわよ。って顔で直ぐに現れた。

『はぁ…出来るんでしょ?』

『出来るわよ。この村には必要ないと思ったからね』

『だよねー。じゃあ、一度試してみるよ。森の精と契約している子なら出来るんだよね?』

『正解!欲を言えば水の精とも契約している子がいれば、パーフェクト!』

『ああ、そうか。ここなら水の心配ならいらないけど、外では違うもんね。……仕方ない一緒に動こうか』


『言っとくけど!アルルには朝ごはん食べてからだからね!今からは森の果実を採りに行くの!』


それでも動くということが嬉しいのか、何故か全員が勢ぞろいで精霊の森に行くことになった。

これが成功すれば、あの子たちもここにいる存在価値が高められて、自信を付けることが出来るはずだ。実際に精霊と契約している子も増えてきているし。


さあ、行こうか。


森に入ればすぐにたくさんの小動物がいるのがわかる。

森に果実がなるようになって、餌が増えたせいだ。昔はここまでよく採りに来ていた。村にも果実園をつくることで、森にあるものは森のモノに食べてもらおうと何となく決まり、それ以来よほどのことがないと採ってない。

だけど村の果実は効果が出すぎる。

自然に森に生えているモノの方が、誤魔化しがきくというものだ。

といっても多分、他の果物よりは間違いなく品質はいいはずだ。森の精の祝福で出来たから。でも村の果実園のものに比べたら、言い訳できるレベルだ。


村を出て川を渡ったところで、サンと出会った。

サンはエディと同じ年ぐらいだと思っていたのに、実はもう少し年齢がいってて、今年で成人なんだそうだ。だから子供たちの監督を兼ねている。


「マリーおはよう。今日は早いね」

「うん。なんか起こされた」

「ああ、なるほど…今日は精霊達みんなテンション高いもんな」

「うん、やっぱりわかるんだ?」

「僕のララも朝から早くいこうって言うし」

「やっぱり?今日は朝露草だけじゃなくて、ポムも何個かとるよ。実験が上手くいけばサンがそれを作って他の村に売ればいい」

「え、でもそれって…」

「問題ないって。精霊村で作るのならララが居れば作れるから。ただ、村の果実だと問題があり過ぎて」

「あれは反則だよな。サクレのお陰なんだろうけど。―――だけど俺たちはそのお陰で死ぬことなく、今がある。コッコやトットの世話、そして薬草づくりとか、生きる上で大事なものを貰えた。ちゃんと村の一員にしてもらえて、嬉しいよ。その上薬草の改良にも関わっていいのか?」

「だから問題ないって。これから冒険者や商人など自分がなりたい職業になる為に、外に出る人もいるでしょ?その人たちが持って出られる物が、欲しいんだよ。ここから離れるのなら、村の物は最低限しか持ち出せないとおもうから」

「…だよな。色々と対策はされていると思うけど、欲が出た人間は何をするかわからない」


まだ子供なのに、子供でいられなかったサン。来年成人といっても、外に出て戦闘が出来るわけじゃないし、村の中で仕事をする方が向いているだよね。人を纏めるのもうまいし。これが上手くいけば、妖精村の化粧品とかハンドクリームとか昔でいう薬局の店とかやればいい気がする。今回の商隊が成功すればすぐにマーティンさんなら来そうだし、妖精村のなら精霊村の女性たちも食いつくだろう。母さんがいい例だ。


「そこは追々だね。さあ、実験するために朝露草とポムをとらなきゃ」


結果から言えば、森の精が手伝ったら簡単に品質改良が出来た。昔子供が飲んでたシロップの様な薬になった。いいんじゃないかな?効果はそれなりに抑えられているし。


胃腸薬・・・軽度の腹下しから、中度の炎症まで治る。品質A 


鑑定をしまくっていたからだろうか。何故か品質まで出るようになった。

まあ商隊に売ること前提なら、いいか。



読んでいただき、ありがとうございました。

次こそはアルルへ!

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