10.寝ている間に 精霊たちが大活躍という大暴れ
焼き肉のたれで焼いたお肉と野菜をたっぷり食べて、果物を絞ったジュース飲んで、満腹になったあたしは気が付かないうちに宴会からフェードアウトしていたようだ。
目が覚めたら、家のベッドにいた。
子供って便利!どこかで電池が切れたように倒れても、寝ても運んでもらえる!
前世ではベッドまでたどり着くことが出来ず、ラグに転がったまま気が付けば朝だったということもしばしばあった。その時は体がバキバキで、動くのに10分以上要して大変だった・・・。
それは、置いといて。
目を擦りながら、部屋の中を見渡す。
何かが違う気がするのは、なんだろう。
テーレがいない!隣で寝ているエディもいないし、何があったの?!
覚醒した視野で家を見れば、どうやら陽が高く昇っているのがわかる。
あ、もしかして既にお昼?
寝巻からすぐにワンピースに着替え、リビングに行く。
テーブルの上にはいつもの朝食のパンとマンダリン(みかん)があった。
みかん久しぶり。皮が簡単に剥けるのがいいよね。
お腹が空いていたあたしは、誰もいないことを不思議に思いながらも席に座って食べ始めた。
凄くお腹空いてる。
もぐもぐ。
もぐもぐ。
ちょっと堅めのパンを水で柔らかくしながら1つ食べきったとことで思う。
確かにお昼になっているみたいだけど、昨日あれだけ食べたにしては減りが早くない?今までの燃費で考えると、寝ていただけでここまでお腹空かないと思う。
まるで育成をした後みたいに・・・?
ん?
そうだよ!魔力が凄く使われた感じ!
あんなに纏わりついてた精霊たちもいなし、テーレもいない。
かーさんが一人あたしを置いていないのも、気になる。
これは何かが行われているに違いない。
あ、テーレとかーさん。
というか、テーレ大きくなってない?
1歳児と同じぐらいの大きさになってるし!
「起きたのね。体は大丈夫?」
「うん。よくねて、おなか空いた」
「マリー、ごめんね。たくさん魔力使ったの」
「う、うん」
「持って帰った木を植えて、『水の』に水をかけてもらって、『森の』眷属たちが育成して木を大きくしたまでは良かったのだけど、『水』がね・・・ごねて」
「木を育成させて樽を作っても、元になる果物があっても、元になるもの精霊の泉がこの村にはないのだからと言い聞かせてたのだけど。村のお酒を分けてもらったら久しぶりのお酒で、楽しくなっちゃったみたい。・・・で、ここ掘れ、ここ掘れと『水』がみんなで騒いで、サクレもね精霊の泉の水は大歓迎だというから、掘っちゃった」
掘っちゃったって。
「テーレが『水』『森』『サクレ』の通訳してたんだけど、上手くしゃべれないから進化することにしたの。だから、マリーの魔力たくさん頂いちゃった」
てへっ。みたいな可愛く言われても、めっちゃ違和感。
あたしより小さな子があたしより流暢にしゃべるんだよ?それも一日で。
違和感というか敗北感というか、流石ドライアドというか。
あたしの魔力がなくなった理由はわかったし、木の苗はきっと水の精や森の精が張り切って大きくすることは想定内だったけど、水脈あてて泉を作るとか。
そして、テーレが進化するとか。
精霊たちやりたい放題だね。
とりあえず、みかん食べたら外の様子が気になるから見に行こう。
もぐもぐ。
このみかん。1つ800円ぐらいしてた高級みかんに似ている。凄く美味しい。
この世界でこの味に出会えるとは思ってもみなかった。
「このマンダリン、今まで食べたことがないくらい美味しいわよね。酸っぱいだけじゃなく、香りもいいしみずみずしくて甘くて。やっぱり森の精が育成すると特別なものになるのかしら?」
お?
この世界のみかん改めマンダリンはここまでフルーティじゃないと。
もしかしてテーレとあたし精神的なもので繋がっているから、あたしの記憶から引き出してるのかな?そうだとしたら、かなりこの世界では魔改造されていることになる。
あの世界の特に日本の果物や調味料などは努力と時間とお金をかけて出来た英知の結晶。それが出来たなら、この世界の常識が変わるよ?
大丈夫なのそれ!
テーレが意味深にニコッと笑う。
確信犯がここにいる!!
元々精霊というだけでこの世界の常識は崩れるのに、さらに魔改造するとか、欲望に忠実で実にけしからん。
だけど、美味しいものは大事だよね?
「あ、かーさん。マンダリンの皮すてないで」
「肥料以外に使えるのね?」
「たぶん、はだがつるつるに」
って、早いし。
みんなが食べた皮を肥料にする前に、集めに行ったんだろうな。たぶん・・・。
「テーレあんないして」
「びっくりするよ!」
聞いただけでも、やばそうだもんね。
玄関のドアを開けるとそこは・・・。
マジか!
サクレ植えてから3日でここまで変わるとか、誰が想像した?
サクレがもはや大木と呼ばれるまでに大きくなってるし、そのすぐ近くに湧き出ている泉がある。その大きさがマンションに取り付けられている貯水タンク並み。それでも溢れてくるから用水路が作られ、鈴なりになっている果物の木を囲っている。
なんて贅沢な。
まあ、それはいい。
精霊達の為でもあるんだし。
ただ、庭が確実に大きくなってるんですけど!
確かにうちの家は村の端のほうにあったよ。だからといって、無造作に増やしてどうする!うちは果実園でもするの?
それだけでなはい。
果実園ほどの大きさでないが、手前の方には畑が出来ていた。
畑には見たこともないような物がある。
花の蕾が膨らんだような形に近い白い実
ブルーベリーのような黒くて堅そうな実
芋の弦のように地面を張っている下に成っているのは、大人のこぶし大のピーナツのような殻
全くもって、なんだかわからない。
絶対これ魔改造した野菜か薬草のたぐいだ。
・・・なんだろうね。
マンダリン美味しいって、これに馴染んでいるかーさんが凄いよ。
なんて現実逃避してる場合じゃない。
だけどね。
遠い。
村の塀の位置も、あたしの気も遠くなる。
やりすぎでしょ!
自重捨てたと確かに昨日言ったよ?
言ったけど、あたしのいう自重捨てたは昨日の醤油ぐらいだと思ってた。
「凄いでしょ!これでジャムがたくさん作れるし、お酒も造れるね!」
そうだね。
うん。
諦めが肝心。
テーレが凄いのであって、あたしが凄いわけじゃない。
村人たちに聞かれたら、テーレ凄い!で終わらせよ。
実際仕切ったのテーレだし、間違いじゃない。
ただジャムは母でもほかの人でも出来るしいいけど、酒の熟成はあたしがすることになるのだから・・・。
忙しいの、あたしじゃん!
テーレは可愛いけど、これから水の精の暴走の結果がこれだから、全くもって嫌な予感しかない。
誰か精霊たちに自重という言葉を教えてあげて。
1~5を少しだけブレていた設定とか、しゃべり方とか直しました。
ストーリーに変化はありません。
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