103.妖精村で止めを刺されたマリー。
歌って踊って、笑って、食べて、飲んで。
精霊達の光のショーを楽しみながら、沢山の妖精族の人たちと話をした。
今を楽しんでくれているのはわかった。
だけど、ちょっとだけ物足りなさも感じているらしい。
良くも悪くも危機感のある生活って、大事だもんね。
そして、ヨルじいからこれを受け取って欲しいと渡された。
「これは?」
「わしらが作った物じゃ。対価には足りないが・・・」
そこにあったのは。
ハンドクリーム・石鹸を始めとする、生活用品から化粧水のような美容商品。
ハンドクリームとか手に付けてみたけれど、とても馴染みやすくていい匂いがする。
あたしが作り方わからなくて、何でもかんでも精霊たちが作った果実で、力技で作った物じゃないのはよくわかる。
これは精霊村に卸してもらえたら嬉しい奴だ。
美容商品なんて、言わずもがな。
そして、この匂いは。
チーズ!
なんちゃってチーズじゃないよ。
山羊か。いいなー。
これも交換したい。
お?
クンクン。
これって、ウイスキー?
前世でも接待的な感じで嗜み程度にしか飲んだことはないけど、匂いはそれっぽい。
流石にこれは飲んで確かめるわけにもいかず、何かあった時に父さんに進呈しよう。
それにしても、流石だ。
蒸留できる術を持ってるなんて。
あ、だからか。精油が作れるからハンドクリームから美容商品が作れるのか。
こんな技術があるなら、欲しいと思うね。
特に上流階級ならば、身分と金に物を言わせて作らせていただろう。
この妖精村の強みにして、精霊村同様に力を付けたら、交易出来るといいな。
精霊村でも少しずつ交易始めたし。
「ヨルじい。凄いね」
良くも悪くも、人間と居たから技術が培われている。
「良かったのじゃ」
ヨルじいがホッとした瞬間に、周りの空気も和らいだのが分かった。
どうやら皆あたしの反応が気になっていたようだ。
「凄く嬉しい!凄く欲しかったものだよ」
「だったら」
何かを言いかけてやめた人の方を向くと、ドワーフらしきお爺さんだ。
ラノベでいうところの酒かな?日本酒は多分この辺りにはないと思うんだよね。
流石にあたしは甘酒をちょっとだけしか飲ませてもらえてないけど、美味しいもんね。
「グンミ、水の精が持ってきた日本酒のことでしょ?」
「な、なんで、わかるんだ」
「蒸留酒を作っているぐらいだから、好きだろうと思って」
「あの酒のことがわかるのか!」
「飲んでないけど、匂いでなんとなく?」
食いつき方が半端なかったので、上半身をちょっと反らした。目線が変わらないだけに、迫力がある。
「あ、すまない」
「いいえ。多分あのお酒を蒸留したら、別のお酒になるから・・・」
最後まで言わせてもらえなかった。
担がれてどこかに連れていかれるらしい。
まあ行先はドワーフが固まっている日本酒の樽のところだと思うけど。
蒸留したら焼酎になることは知識としては知っていたけど、飲めないお酒に対してそこまでの情熱はなかったし、蒸留する器機をつくる情熱もなかったからね。作って貰えるなら、ここで作ってもらいたい。
水の精もキラキラお目目で、ワクワクしている。
本当に水の精、好きだよね、お酒。
湧き水的な精霊の泉があったら、いいお酒作ってもらえそう。
あ、グンミ!
念を拾ったグンミが、これ幸いと精霊の泉を作る計画を話し始めた。
いつもは控えめで可愛いグンミも、やっぱり水の精なんだなぁと納得。
そして蒸留する様なものが作れるなら、きっとあたしとソルとで力技で作った物を、人の手で作れるようにしてくれるのではないかと思った。
そこは追々だね。良い感じで技術が融合出来たらいい。
それよりも、今は酒ですかね。
これはお酒を造ってくれている村の人たちと要相談かな。あの時みたいに、米作りが何度も繰り返されるようなことは避けたい。
それとも、ここでも作りたいというかな?
話が大きくなるようなら今までならともかく、他のところと交易を始めた村にとって大事なことになる。あたしとしては正直どちらでもよいのだけど、やっぱり村の人と相談かな。
そう思っていたのに、why?
ヨルじいがあたしに告げた話は衝撃過ぎた。
ああ、終わった・・・。
妖精村は精霊村の地下にあり、
(ダンジョンがあたしの部屋の下にあるしね)
妖精村があるダンジョンコアは、聖女マリー様の眷属であり、
(ああ、そうだったかも。ダンジョンの中は世界樹の為だけに来てたから、忘れてた)
妖精村は、聖女マリー様の村ということです。
(あたしの村ってことで?)
はあぁぁぁい?
村長的な役割はヨルじいがするけれど、この村のトップは実質はマリーだと告げたのだ。
いやいやいやいや。
あの悪夢が正夢になりかねない、案件だよ?
なんですんなりみんな納得してるわけ?
「マリー、今更だ。精霊を掌握し、天馬を使役し、我を友としている者に、この世界の誰が物理的に勝てるというのか」
長の容赦ない突っ込みに、手と膝をついた。
『神が認めている聖女に、身分でも誰でも勝てないがな』
クロが止めを刺した。
僅かに残っていたHPは、1だ。
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