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102.新生妖精村

ドキドキしながら妖精村に一歩踏み込む。

ふわ~と森の精が飛んできて、頬を撫でる。

「くすぐったいよ」


思いもよらぬ森の精の接触に、首をすぼめた。

どうやらこの森で育った森の精は悪戯好きらしく、あたしの様子を見て楽しそうに頭の上を飛んだ。


聖女様だ~

聖女様が来たよ。

僕たちが育てた森を見て。

こっちだよ。

こっちが先だよ。


森のあちらこちらからピンクの毛玉が飛んでくる。

精霊村の森の精と比べて、妖精村の森の精はとても活発的というか、子供っぽいというか。

興味津々な心を隠すことなく、接触してくる。

まるで飼い猫から生まれた、子猫のようだ。


森の精のお陰で、肩の力がいい感じで抜けた。


森の精の案内で着いた先は広場らしき場所。

そこには森の一族フェアリーを筆頭に、様々な妖精族がいた。

ドワーフやエルフ、獣人族とも呼ばれているケット・シーやクー・シー。

そして奥の方には心許なく佇んでいるようにみえる獣人?


あたしを見る目は敵意に満ちたものは何処にもなかった。

どの顔も助け出したときのような悲壮感はどこにも見られない。

穏やかな表情で、感謝の意が伝わってくる。

もしかしたらあたしに反感を持つような者は、ここに来てい居ないだけかもしれない。

それでも、ここにいる人たちだけでも、この現状を受け入れてくれているのだと思ったら、泣けてきた。


ああ、激情のままに、行動したことで何度も夢を見た。


『同じ人間を滅ぼして、妖精族を救うのか』

『お前に何の関係がある。お前だけが独り占めするつもりなのか』

『人の財産を奪っておいて、何様だ』


あの時、そんな声を拾ってしまった。

繰り返される夢。

自問自答の日々が、救われた気がした。


温かな目であたしを見る長や精霊達。

その視線が煩くて、追い払うように腕を振り回した。


「ああ・・・マリー殿」

マリー殿?そんなこと言う人知らないけど、声はヨルじい?

ここが何処だったか思い出したあたしは、袖で乱暴に目を擦って涙を拭き顔を上げた。


「元気だった?ヨルじい」

10歳になったあたしは、完全にヨルじいの背を抜いている。

大きくなったのだ。


がばッと跪いたヨルじいに、あたしは戦いた。

な、なにが始まるの。


「聖女マリー殿、我ら森の一族だけでなく、様々な妖精族をお救い頂き、感謝の念にたえません。本当にありがとうございました」


感謝の言葉を言われるのはまだいいとして、ヨルじいのこの体勢は頂けない。

「ヨルじい、うん。ちゃんと伝わったから、起きて」


涙を流しながら、あたしの手をギュッと握って、ありがとうを繰り返すヨルじい。

起こそうにも、跪いているヨルじいの力が思いの外強い。

どうしていいかわからず辺りを見渡すと、広場の皆も同じように泣きながらありがとうを言い続け、泣いていた。


あたしの手はまだまだ小さくて、その手に乗せて助けてあげられる人は少ない。

だけど、小さな手を必要としてくれるなら、これからも手を差し伸べてみようと思う。


「シン、声を届けて」


「皆さん。あたしは、精霊村のマリーです。人間です。精霊達と仲良く暮らしています。同じように妖精族の皆さんとも仲良くしていきたいです」


キョトンとした顔の妖精族の人たち。


「皆さんは、あたしと仲良くしてくれますか?」


手を握っていたヨルじいが、顔を上げ笑った。

「相変わらずじゃの」

「えー、だって、気取ったところであたしだし。猫被ってもすぐに脱げるんだから、意味ないでしょ?」

「そう、じゃの」


ヨルじいの満面の笑みで、勢いづいた。

「仲良くしてくれますかー?」


「もちろんじゃ」

ヨルじいの声が届けられると、あちらこちらから声が届く。


「こちらこそ」

「お願いします」

「仲良くする!」


森の精が一番テンション高い。

もしかして、始まる?


くるくると回りながら森の精たちが手を繋ぎ、数珠のように連なって行く。

お、久しぶりに輪舞が見られる!


『おどれーおどれーみんな手をつないでおどれー』

『なかよしこよしで、輪になっておどれー』

『みんなで酒のんでさわげば、なかよしハッピー、ハッピー』

『さあ、さわげ。みんなではっぴぃ、はっぴぃ!』


「グンミ、水の精が作っているお酒、分けてもらえる?」

「いいよー。村にいる水の精も呼んでくる」

「お願い」


ぐるぐると回る森の精とあたしたちの動きに付いていけてない妖精族。

ヨルじいに「みんなで食事するんだよ」と伝えると、慌てて皆のところに伝えに行った。

ごめんね。これに慣れて?


「お酒とお肉、野菜など材料は全部あるから、料理をお願いしたいです!」


オーブンが出来たから使うことがなかった鉄板をデデンと出す。

テーブルも出して、そこにお肉をドン!と次々とだして、カゴに野菜も置いて。


次々とリュックから出していく物に、さらにあんぐりとする妖精族の皆さん。


あ、これ、やっぱり普通じゃない、か。

でも、自重しない。


「これ、お願いします!」


みんな背丈が変わらないのとあたしより背が低かったりして、必殺上目遣いは発動できないが、にっこり笑えば大丈夫だよね?


金縛りから解けたように、みんながあれこれと動き始めた。

しんみりより、わいわいがやがや。

これがあたし流ってことで。


森の精の輪舞の中にテーレと入っていく。

みんなと手を繋いで、輪になって。

妖精族の子供たちも輪に入って来て、みんなで歌う。


みんなで手を取り、笑って、歌えば、はっぴぃ、ハッピー!



読んで頂き、ありがとうございました。

ブックマーク、誤字報告、ありがとうございます。



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