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101.これから

正直全く誤魔化せていないのが分かっているけれど、どれだけ詰め寄られても森の一族のことは話せない。森の一族だけならともかく、妖精族全体がどうなっているのか、全く把握が出来ていない。


出来るだけ早くダンジョンに顔を出して状況を知りたいけれど、恨めしいこの体。それなりにスキルアップしていると言っても、子供の域を出ていない為に体力がない。子供のままでいたいと言いながらも、大人でしか解決できないことが多すぎて、ジレンマ。

今はもっふもふになっている長にくるまって、充電中だ。


「焦ることはない。我とて出来ぬことが多い。マリーはもっと周りを使え。皆を助けたい気持ちはわかるが、マリーも我らにとって、一人しかおらぬ」

「・・・うん」

「もう少し心を休ませるがいい。我らに任せてな」

「いいのかな」

「最低限の衣食住は賄えておる。それ以上は妖精族のためにもならない。虐げられてきたからこそ、自力で立ち上がる必要があるのだ」


「マリーは精霊村のマリーだ。妖精村の村長でも一員でもない」

ああ、確かにそうだ。絶対的な力であれこれ口に出してしまえば、あたしにそんな気がなくても、妖精族の人たちは逆らえない。Noと言えないことをやってはダメだ。

「わかったよ。ダンジョン村だけ管理して、その他の場所はみんなに任せるね」


妖精族については、精霊達が守護者として見守ることになった。

あたしはテーレたちに頼まれたことだけをするようにした。

要は救出要請に応えて、転移で運ぶだけにしたのだ。

闇は深い。





それから3年の月日が流れ、あたしは10歳となった。

まあ、色々あった。

ありすぎて誰だそれ?と呆けること多数。

それらのことを語るのはちょっとやそっとでは出来なので、今は割愛。


一番気になっていた妖精族が住んでいるダンジョン。

今から長とテーレたち精霊の案内で、入ることになっている。

今からドキドキしっぱなしだ。


テーレたち精霊たちから聞いた話をまとめる。


森の一族を含めた妖精族を助けて半年は、心や体に傷を残しながらも、穏やかで温かい、そして清浄な空気のダンジョンに癒されたようだ。

そして皆、それぞれ自分たちの得意分野を活かし生活をしていた。


森の一族、フェアリーは得意の薬草などでポーションや塗り薬。

エルフは豊かな土を活かした農耕や森に住まう動物の狩りを営み。

ドワーフは物を作ることに長けている為、森の木や鉱山で鉱物を掘り出すことで、皆の家や道具を作る。

獣人族は草原で放牧を営む者や森で狩りを営んだ。


始めはそれぞれ習慣や習性、(ルール)が違うため、衝突も多かったようだ。だけど人間に虐げられてきた仲間ということで歩み寄った結果、それなりに村として機能し始めたようだ。


それを聞いて、正直、胸が痛かった。

妖精族が人間を敵視することでしか、前を向けなかった現実が。

それでも、前を向いて生きていける術が出来たことを、嬉しく思う。

それは完全に自己満足でしかないけれど、助けられた命があったことだけは、確か。


それを自分の目で確かめられる日が、今日というわけだ。

森の一族のヨルじいが、妖精族を纏めてくれたおかげで、あたしに対する敵意はないとテーレは言う。

ヨルじいと精霊たちの尽力というやつだ。


そのことに感謝しながらも、やっぱり不安は募る。

「大丈夫よ。恩知らずがいたら、私が制裁するから」


「テーレ。それはそれで頭痛の種になるから止めて」


いつもは慈愛タップリに愛情を注ぐテーレが豹変するのは、いつだってあたしのことだ。

とても嬉しい反面、秩序を大事にし、冷酷な一面を持つところをみると、森の秩序を守るドライアドなのだと思う。

あたしや家族が関わると、ちょっと公平さが欠けているのが、人間臭くて好きだけど。


「マリー、あれだけ外で騒がれてるのに、相変わらずね」

「あれは、あたしのせいじゃないもん」

「「いやいやいや、マリーでしょ」」


なんでそこで息が合うかな。

何処のコントよ。


「それよりも、早く行こう」


あれを語り始めた精霊たちの話は長い。いったいどこのおばちゃんの井戸端会議を真似てきたのか。

人間臭くなった自分たちの精霊たちは、とても可愛いのだけど、加減を知らなくて困る。


誤魔化すためじゃなくて、これからの為にみんなを急がせる。


ダンジョンに行くために、部屋にある扉を開いた。

何故か始めに乗り込むのが長というのが、不思議だけれども。

その次にはテーレ、次いであたし。

あたしの後ろにはその他の精霊たちと殿がシャンス。

どこの殿様行列かと思うほど、ちょっと仰々しい。


これもパフォーマンスなのだと長が言うので受け入れているけれど、こんなことしてるから外の騒動が大きくなったのではないかとも思う。

だけどそれが心からの善意だから、断れない。


流されやすい性格は、ちょっとやそっとでは変わらないね。


あ、着いたみたい。


さあ、勇気を振り絞って前に進もう。

きっとまた何かがこれから始まる!




読んで頂き、ありがとうございました。

これから不定期になりながらも、再開させて頂きます。

これからもよろしくお願いします。

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