難波 龍翔
2095年、世界大戦で地球は滅んだ。
激化する戦争。大量の殺戮兵器を行使した戦いは、核戦争に発展までしようとした。
しかし、人類はウイルス兵器を用いた。
ウイルス戦争は、さまざまな細菌が複合し、もはやワクチンも作れないほどに進化した。
各国の政府は機能しなくなり、食糧不足に陥るなど、世界で史上最悪の災害となった。
対抗手段は無く、人類は絶滅の一途をたどるーーはずだった。
突如、抗えないはずのウイルスに抗体をもつ者が現れたのだ。
国がその細胞を調べ、一つのワクチンを作り出した。
そこでは、その細胞を持つ者しか生きられなかったが、絶滅したはずの人類が徐々に回復していく。
これを機に、世界から争いの類いを一切を禁止。
平和の象徴となったワクチンは、研究の結果、ありとあらゆう病気にも効く万能薬である事が判明する。
これを、人々は絶滅を免れた人類を表し、
不滅の抗体ーー『immortal細胞』と呼んだ。
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「あれー?おっかしいなー?」
とある山奥。密集した杉林が、うねうねと生え渡る樹海。人も寄り付かないであろう森の中に一人の少年が、鋼よりも硬い幹から別れた太い木の枝に飛び乗り、手をかざして遠くを見渡していた。
「このままじゃ、晩飯抜きだ………。なんとしても見つけ出さないと!」
生きる活力を取り上げられる恐怖に身を震わせ、必死に目をこらす。
ボサボサな伸びた髪に目力のあるつり目、スラッとしたしなやかな体躯。服装は濃い紺色の道着に草履を履いている。
そしてその上からでは分からないが、一般より多い筋肉量。これはひとえに、物心ついた頃からの厳しい鍛錬によるものだろう。
すると、林の間に開けた場所があり、そこに目標の人物がいるのを発見する。
内心で、ニタリと笑いながら、興奮する鼓動を抑え、標的の後ろ側へと忍び寄る。
慣れた動きで木々に飛び移り、地面に着地する。
「(よしよし、バレてねぇな)」
一本の巨大な木の裏で体を隠しながら、標的を確認する。
綺麗に整えられた白い髭に長い白髪。堂に入った姿勢で木刀を中段に構えたまま、目を深くつむり静止している。少年と同じ紺色の道着を身に包む。
自分より長身な体躯で、老人とは思えない太い手脚を備えている。
体中から強者然とした雰囲気を放ち続けているのは、少年の祖父、難波 岩慶だ。
「(…………隙がねぇ)」
己の祖父に舌を巻きながら、その孫は腰に下げた木刀を腰から抜いた。
「(殺らなきゃ、殺られるんだ……!)」
常々教わっている祖父からの言葉を胸に、少年ーー難波 龍翔は木の陰から飛び出した。