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青バラのお菓子

作者: 白虹

俺のクラスメートで変わったヤツがいた。


例えるならば、野良猫と乙女を足して2で割った感じ……だろうか。


男に対する評価としては、キツイかもしれないが見た目は、いい。

日に当たると赤く見える大きな目とサラサラな髪。彫りが深く驚くほど白い肌。

日本人にはおよそ見えず、どこぞの王子だと言われれば納得出来る程だった。


なぜ野良猫と例えたかというと、学校に来ないのだ。

ふらりと来たかというと何日も来ない。

よく、進級出来たなと思うが、とんでもなく頭がいい。テストは常に満点、首席。

噂では、高等学校卒業程度認定試験をパスしているが、学校生活を楽しみたいから通ってるんだとか。

羨ましい……


そして、乙女というのは、学校に来る度に俺に変わったお菓子を渡してくるのだ。

ある時はちょっと焦げたクッキー、またある時は何かのミニパイ。

それらは明らかな手作りで美味しいのだが、美味しいのだが。

ある日のお昼。

「なあ、これは、なんだ?」

「ん?バラ、かな?」

ふぅーん、バラねぇ。

俺は手のひらサイズのタルトに乗る真夏の空より青いバラを箸でつまむ。

サイズはミニバラと同じ位。味は青リンゴ。

……青バラは不可能の代名詞ではなかっただろうか。いつの間に完成したんだろうか、いや完成してても青リンゴ味はないだろ。

また、ある日のお昼。

飲むのを躊躇うようなドピンク色のお茶のお供で出たスコーン。

さっくりしてて美味しいのだが、中から抹茶色のジャムが溢れる。ちなみに味はスイカ。

ギャップ萌えを目指したのだろうか。

見た目が変わってるせいか、周りから羨ましがられる事はなかった。むしろよく食べられるなと尊敬された。


ただ、気になることがあった。

俺の少ない趣味の1つに携帯小説がある。よく読むのは異世界召喚や転生。所謂テンプレ。

「なあ、異世界に召喚されて、チーレムっていいよな!」

軽い気持ちで言って、即座に後悔した。

白い顔が更に白くなり、小刻みに震えていた―――明らかに怯えていたのだ。

謝ったがその日、変な空気のまま終わってしまった。


そして、その翌日から彼は消えた。

まるで、存在しなかったかのように誰一人覚えていなかった。

……俺を除いて。




あれから、何年経過しただろうか。

男に見られるほどのショートカットから、ロングヘアーになった。

女らしくなったからか、男性から声をかけられるようになった。

クシャッと握りしめた同窓会の知らせ。

出席してもあの意表をつく菓子は出てこないだろう。

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