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33 彼女ははしゃぎ回る。

 学祭第三日目。現在時刻14:32。

 元気だった?って・・・・

「そっちこそ元気だった?だよ!いつ以来?三年ぶりだよね!元気だった!?」

 あたしは興奮して早口にまくし立てる。ルイは苦笑して見せた。

「ん、ウチは元気だったよ。梓こそ、元気そうでなにより」

「うんうん、そりゃもう元気元気!!え、あれ?ルイって今どこで生活してるの?」

 県外に引っ越して、それっきりだったはずだ。音信不通だったから全然知らないんだけど・・・・

 ルイは、苦笑の色を少し変化させた。

 申し訳なさ、見たいな色が浮かぶ。

「ん、いや、実はね・・・・桜高なんだよ」

「え、桜高?近くじゃん!そうだったの?」

 近くって言うほど近くじゃないかもしれないが、ばっちり県内で、それも自転車で行ける距離だ。

「連絡くれたらよかったのに・・・・」

「家は県外だからね。電車で通ってる。それに・・・・まあ、何となくね。連絡すればよかったけど・・・・」

 ルイは目を伏せる。何か思うところがあるんだろうか。

「うちは一昨日からやってたから、一昨日から来てもよかったのに。面白いイベントたくさんあったよ?あたしも割と暇だったし」

「あ、いや、ウチも一日目に来ようと思ってたんだけど・・・・」

 ルイは困ったような笑みを浅く浮かべ、頬を掻いた。

「ウチのクラス、うちはうちで学祭近いのに遊んでばっかりでね。他ん所で学祭始まったってなったら作業ほっぽって遊びに行きやがって、絶対終わんないって感じでさ。ウチも来ようと思ってたのに、一昨日なんて誰もいなくなるってわかったから、一人でやってたんだよ。必死でやってたら割といいとこまで進んで、昨日は何人か来たからもう少し進んで、さすがに今日は来させてもらった」

「おお・・・・大変だったんだね。お疲れ様です」

 ぽんと肩を叩くと、ルイはまた小さく笑んだ。でも今度は、力の抜けたいい笑みだ。

「でもそういうとこ変わってないんだね、ルイ」

「え?」

 こちらを見るルイに、あたしは笑って見せた。

「責任感が強い、頑張り屋さん。でもあんまり無理しちゃだめだよ?」

「・・・・梓も、あんまり変わってないね」

 そうかな?と首をかしげると、ルイは頷いた。

「能天気すぎ」

「・・・・ってそれ、褒めてないね?褒めてないでしょ!」

 ルイはからからと笑う。

 三年分の距離も、あっという間に埋めてしまった。

 と、そこでようやく、あたしはルイの隣に所在無げに立っている金村君を思い出した。

「そういえば、金村君とルイって?」

「ん?ああ、剣道部の知り合い。こいつ、中学の時は剣道やってたからさ。ツチヤ・・・・他の知り合いと一緒に、大会んときに会えば話す感じの」

 ああ、成程。こいつ、と言うからには結構気安い仲なのかな。それにしても、

「世間って狭いんだねえ」

「ほんとにね。ウチも梓と金村が知り合いだってわかったときは驚いたよ」

 うんうんとルイと二人で頷き合う。と、そこでその金村君が、

「あの、そろそろ時間」

「ん?あ、ホントだ」

 腕時計を見て、あたしは頷く。そうなの?と自分の腕時計を見るルイに、あたしは頷きを送る。

「十五時からなんだよ。そろそろ行かないと場所無くなっちゃう。ルイも観に行くんでしょ?」

 うん、とルイは頷き、三人で連れだって歩き出した。そこであたしはふふっと笑ってしまった。

「どうしいたの?」

 不思議そうにこちらを見るルイと金村君に対し、あたしは緩く首を振りながらルイの右手首を指す。

「ルイ、やっぱり腕時計は右につけてるんだね」

 ああ、とルイは右手首を持ち上げた。

「もうずっとこっちにつけてるから、こっちで慣れちゃってさ。左につけると返って違和感あってね」

 ルイは右利きだ。なのに腕時計は右手首につけている。

「そういえば、何でなのかって聞いたことないな」

 ふと金村君が言った。そうだっけ?とルイは首をかしげ、ちょっと言い渋る。

「あんまり胸張って言えることじゃないんだけどね・・・・」

「あ、じゃああたしが言おうか?ルイはねえ」

「いい・・・・自分で言うよ。えっとね」

 ルイは意味もなく頬を掻いた。

「中一くらいのとき、ウチは結構ひねくれててね」

「ああ、それは知ってる」

「やかましい。・・・・で、『何で右利きなのに右につけてるんだ?』ってさせるために右につけてて、むしろウチにはそれが普通になったと」

「・・・・へえ・・・・」

「何よ。笑いたければ笑え」

 金村君は淡く微笑した。けっ、とルイは吐き捨てるけど、これはルイの照れ隠しってものだ。

 体育館に続く階段を下りて息、短い廊下を進んで体育館の入り口をくぐる。暗幕が下ろされて、真っ暗な中に思っていた以上にたくさん人がいた。

「うわ、これいい場所とれるかな・・・・」

 人ごみを縫って前の方へ行く。

「人多いね・・・・ウチ、ここの演劇部の初めて観るんだけど」

「あ、そうなの?実はあたしも初めて」

「あ、僕も」

「・・・・そういうもんなの?」

 話にはよく聞くんだけどね、とルイは真っ暗な舞台の方を見ながら言う。だんだんと目も闇に慣れてきた。

「今年はあたしの友達が脚本と監督やっててね。絶対凄いと思うよ」

 郁奈には悪いけど、どんどんハードルを上げてしまう。でもそれに応えてくれるって信じてるよ。

「へえー・・・・じゃ、楽しみに待ちますか」

 闇の中で目を凝らして腕時計を確認したルイは、前の人たちが座っていくのに合わせて座った。あたしと金村君もその場に座る。

 がんばれ郁奈、シノハラ君。

 あたしたちは約束通り、観に来たよ。


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