表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/47

23 彼女は聴く。

 学校祭第一日目。現在時刻13:16。中庭ステージで凄いものを見た。

 午前はシフトが入っていたので、昼にバザーで智江と待ち合わせて、昼食をとってから中庭に出ていた。ステージではちょうど生徒会主催のカラオケ大会が始まったところだった。出店を見て回っていると、あの指に包帯巻いた男の子が剣道部のチョコバナナで店番していたのを見つけたので声をかけがてら智江の分と合わせて二本買う。包帯君は友達に手伝いを頼まれていただけで、剣道部ではないのだそうだ。ちなみに私の指は完治。斎藤さんも満足そうに笑ってくれた。斎藤さんは今日も暇そうだった。いいことだよ、と笑いながらお茶を飲んでいた。気楽な人だ。まあケガ人もサボリもいないというのは確かにいいことではある。

 で、今、私は中庭ステージで凄いものを見た。というか聴いた。カラオケ大会も前半戦が終了したんだけど、最後から二番目の人が凄かった。もの凄くうまかった。男の人なのに高い声も裏返らずに出ているし、ビブラートも・・・・うわあ、同じ歳とは思えない。どこの歌手だよって感じ。背も高くて格好いいし。

 で、あろうことかその人が百点を取った。審査員の先生が五人とも二十点を入れ、見事に綺麗な満点。司会の生徒会役員も興奮してるし、会場も湧いている。満点は歴代でも初なのだそうだ。これであの人は優勝最有力候補。

 このカラオケ大会は毎年やっていて、参加者は有志。二日間かけて予選が行われ、前半戦と後半戦の一位通過者が後夜祭で決勝。

 でもこれじゃあ、優勝は決まったようなものだよね。

「うわカッコいい・・・・あれ確か三組の北条君だよね」

 横で智江がテンション高い。

「知ってるの?」

「知り合いではないけどね。割と有名な人だよ。部活の何かで全国大会行ってるし。頭いいし格好いいし性格いいし。何でもピアノとかトランペットとかヴァイオリンとかできるとか。縁は知らないの?」

「いや、知らないかな・・・・」

 超人じみた人だ。何でもできる人って本当にいるんだなあ。

「惜しむらくは、美人の彼女がいるってとこよね・・・・」

「え、いなかったら何かする気だったの?」

 私が驚いて訊くと、智江はまさか、と肩をすくめた。

「うちじゃどうしたって釣り合いがとれないよ。第一、うちってああいう超人じみた人ってちょい苦手なんだよね」

 ふーん、と私の返事は何だか適当になった。まあ、それだけ何でも持ってるような人は遠くから眺めていたいっていうのならわかる気もするけど、智江のもそういうことだろうか。私の場合はもっと、ちょっと畏れ多くてってのも混ざるけど。

 でも、そういう人でも実際話してみれば凄く面白い人かもしれないよね。性格がいいっていうのならなおさら。案外ふつうの人と変わらないかもだし。

 そういう人と対するときは、素直に憧れたりしてるうちが楽しいと思う。羨ましさとかを感じるようになったら辛いかもだけど。

 最後の人の歌が始まった。二人組だ。こっちもかなり上手。

「智江のダンスって明日だっけ?」

「ん、そう明日。午前が中庭で午後に体育館。後夜祭も踊るんだぜー」

 ニヤニヤと智江は笑う。と、ふと智江はこちらを向いた。

「そういや、縁は後夜祭誰と行くの?行くんでしょ?」

「あー、うん。まあ」

「え、誰さ誰さ。あ、さては篠原君だな。昨日教室から一緒に来てたでしょ。教室で何してたの」

 何となく私は目が泳いでしまう。別に悪いことはしてないんだけどね。

「篠原君はカーテン開けてくれてたみたいだったよ」

 完成品を眺めて悦に浸ってたというのは、篠原君のために内緒にしておこう。

「財布はあったんだよねえ」

「うん。篠原君が拾ってくれてた」

「ふーん。で、行くの?」

 そこはやっぱり、逃げられないか。まあ、いいか。別に隠すようなことでもない、よね?

「ん、まあ」

「おー縁もとうとう青春女子に一歩近づいたわけかあ」

 何だその青春女子って。

「なっはは。でもあれだよ。篠原君て、かなり仲いい女の子いるみたいだし、がんばりなよ」

「そうなの?」

「うん。知らない?」

 ほらほら、智江は少し考える顔をする。

「あのー、何組か忘れたけど、演劇部のマニワさん、だっけ?しょっちゅう絡んでるらしいよ」

「絡んでるって・・・・」

 どう取ってもいい響きじゃないんですケド。

「それに別に、そういう意味で誘ったわけじゃあ」

「え、何、じゃあ縁は何の目的も下心もなく男の子を後夜祭の連れに誘ったワケ?」 

 少なくとも下心はない。目的っていうのも、まあ、ない。

「ただちょっと、何となく・・・・かな」

「うわー・・・・何となくとか」

 けっ、と智江は失礼にも吐き捨てた。

「まーいいよ。せいぜいがんばれ。ん、それじゃあ三日間目の演劇部は見に行くの?」

「うん、行くよ。智江も一緒に行かない?」

「んー・・・・まあ、いいけどさ」

 何で智江は微妙な表情なんだろう。私はそんなに変だろうか。

 先の男子二人組の点数が出た。

 九十九点。

 一人だけ十九点だった。二人ともステージ上でひっくり返った。会場は拍手に湧く。

 順番も悪かったんじゃないかな。あの人の直後じゃなあ。でもかなり上手だったよ。

 惜しい、と私も二人組に拍手を送った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ