◆八話◆ 【side*柚樹】
翌朝、よく晴れた月曜日。
空気は冷たいが、肌を滑るシーツの心地良さと胸に触れる暖かさに、柚樹は浸っていた。
しかし、身に覚えのない頭痛もある。
「あーくっそ……記憶ねえ……
昨日どうやってかえったんだっけ……つか、あったけーなー……」
どうも体がだるい。
そう思いながら肘をついて起き上がると、自分は上半身に何も身につけていなかった。
隣には、同じく半裸の知裕が寝ていた。
―数分後
ベッドの脇のフローリングに正座した知裕を見下ろす。
「何もしてねえだろうな」
「……はい」
「ぜってーだなっ!? じゃ、なんで俺は服をきてないんだ!」
「それは……」
「なんかしたのか!」
「いいえ! 自分は苦しそうだったので前のボタンを外しただけです!
あとは朝倉くんが自分で脱いだんだと思います!」
「……ならいい。」
いや良くない。
よく考えればあんまり良くないがこれ以上やっていても意味がなさそうだ。
「まあ、なんかしてたらそんなに動けないと思うけ……」
「なんか言った?」
「いえ」
不自然な知裕の脇を通りぬけ俺は洗面所を借りることにした。
どうも目が冷め切らない。
きいたところ、どうやら俺は昨日酒を飲んでいたらしいので、そのためだ。
「あ、そ。じゃあ、ちょっと洗面所借りるわ。顔洗いたい」
「駄目だ!」
「え?」
「洗面所ち、散らかってるから!!!」
「あーいいよ別に。……ってか、そんな散らかってなく……」
「…………」
「おい、トモ」
「……はい」
「これは、お前がやったんだな?」
「はい」
俺の首もとには、しっかりと真新しいキスマークがひっついていた。
その日一日俺が知裕と口を聞かなかったのは言うまでもなく。
更に印が消えるまでの数日間、俺の首もとから絆創膏が外されることはなかった。
しかし、そんな出来事からしばらくたった月末のある日。
俺と知裕は近くある期末テストのため、昼休みに図書室で勉強しようということになっていた。
知裕に呼ばれ、俺がノートと参考書を抱えて教室から出たとことに、そいつは居た。
「……はっ、っ結局平岡かよ。m、結局男はべらせれりゃ誰でもいいんだろ」
……俺が何したって言うんだ。つか誰だよ。
そう思って無視を決めようとしたとき、知裕が俺の横をすり抜けて。
鈍い音とともに振り返ると、男は頬を押さえてうずくまっていた。
少し…遅れましたゴメンナサイ。
平岡くんには悪いけれども、ヘタレ攻めとツンデレ受けは黒星の中での黄金比率。
なんとかこのままヘタレていただきたい。
さて、くっつくのも時間の問題ですか。
何話で終わるんでしょう←