◆六話◆ 【side*知裕】
数日間、訳の分からない思考を持て余した俺は、いくらか思考を持ち直し、まずは話を聞くことだと思い、いつも一緒に弁当を食べていた場所へ向かった。
もしかしたら柚樹がいるかも知れないと思ったのだ。
しかし、またも目にしたのは、胸糞の悪いところだ。
「トモ……」
男に両腕を掴まれている柚樹が、俺を見て俯く。
今日は、俺はその仕草をみて冷静さを取り戻すことができた。
男がさってしまってから、俺は「なあ。」と柚樹に声をかける。
肩がすくみ、俺の目をみようとしない柚樹に先日俺の柚樹に対する対応の悪さを思い知る。
「あっ、ありがと。じゃあ……」
震える声で俺に告げ、その場をさろうとする柚樹の泣きそうな顔を見て俺は不覚にも、ときめいてしまった。
「待てよ」呼び止めて、とっさに口にする。
「俺、お前好きかも」
「はあ?」
驚いた声をあげてやっとこちらを見た柚樹に続ける。だんだんいたたまれなくなってきた。
「いや、なんか見てたら……ってか、なんか最近お前のことばっか考えてて、なんでお前に告白とかする奴が気持ち悪いんだろっておもったら……」
「やっぱりきもちわるいんじゃねえか」
地雷を踏んだようだ。
「や、でもお前はそうじゃないっていうか、むしろこう……」
急かされるまま俺の口はとんでもないことを告げた。
「ムラっと……」
「はああっ?」
や、驚いたのはこっちなんだが。
まあいい、ここまで来たもう後戻りはできまい。
「取り敢えず付き合ってくれ。……色々してみたらわかると思うし」
これは本当だった。
お互い女には苦労してないわけだし、まあ、もうここまで来たら実践あるの・・・
「ざっけんなっ!!!! 死ねボケッ!」
顔を真っ赤にして肩を震わせているのは、もうさっきの怯えからくるものではないんだろう。
その証拠に形の良い眉は釣り上げられ、渾身の悪態と共に俺は殴り飛ばされた。
「あ、おいっ!」
俺の引き止める声など聞かず、柚樹はさっさと校舎の方へ戻っていった。
その日はそれからバタバタし、柚樹に合うことはなかった。
翌日の朝、校門のところで柚樹を見かけたので話しかけた。
「昨日のアレさ、俺本気だから、考えといてよ。ま、すぐにってのは難しいしな」
開いた口がふさがらないらしい柚樹を尻目に、俺はまあ。のんびりやることにした。
それから数日は、何事も無く。(ちょくちょく柚樹に冷たい視線を浴びながらも)毎日は以前と同じように過ぎて行った。
そんな月はじめの週末、世の中はバレンタインなどというどこぞの製菓メーカの陰謀にまんまとはまり、女も男も、ごく一部の殺気だった男共を除き浮き足立っている。
俺と柚樹の周りも例にもれず、バレンタインチョコレートが欲しいが為に女漁りに精を出していた。
「なー知裕……お前さ、今週末暇?」
授業の合間に前の席から話しかけてきたこいつは俺と柚樹の数少ない共通の友達、森本信行だ。
よくコンパだ合コンだと主催している。要は女好きだ。
「だが断る」
「おおふ、まあそう言わずにさあ……
やっぱお前と柚樹がいるのといないのじゃ集まりが違う
んだって。」
「知るかっての」
「ちぇーしゃあねえ。柚樹に行くか」
森本が席をたったので慌てた。
「……ちょっと待て。やっぱり俺も行くから、柚樹は俺が誘っとく」
嫌がるのは分かっていたけれど、こうなるとなんやかんやで付いて行ってしまうのが柚樹の人のいいところだった。
俺にはあれこれ文句もわがままも言うが、それ以外には当たり障りなく接して無意識のうちなのか意図しているのか壁を作る。
酒も飲めない、人見知りも激しい柚樹を俺無しでそんなところに放り込めるほど今の俺に余裕はない。
「おっ! まじで? ま、王子で釣ればお前が付いてくるのはなんとなくわかってたんだけどな」
「は? なんでそんな事分かるんだ?」
俺はそんなに過保護だったかと思い直すが、ここ数日はととにかくとして柚樹にそこまで構い倒した記憶は俺にはなかった。
「なんでって……お前。このパターン通算六回目。
……なに、マジで自覚なかったの」
自覚も何もあるか。
俺が柚樹に対する自分の執着に気づいたのはつい二週間前だぞ。
要は、俺は無意識にずっと以前から柚樹を好きだったのかもしれない。
まったく、バカげてる。
俺は恋愛覚えたての中学生か。
「ああ、そうかそうか。うん……だよなあ。はは、やっぱり」
思っていることが口に出ていたらしい。
「は? お前、大丈夫か? 頭湧いてんじゃねえだろうな……」
あ、と森田は続けた。
「そういえば柚樹もお前で釣ればくるんだよな。お前らってお互いおんなじ思考回路なのな」
ん?
柚樹も俺と同じ……?
聞き捨てならないことを聞いた気がする、が。いや待て。
そんなに簡単にいくもんでもないだろう。
取り敢えず、俺は保健室で寝ているだろう柚樹に週末の予定を伝える為席を立った。
こんばんは黒星白です。
ヘタレ平岡が・・・頑張ってるっ・・・・(驚;)
まあ、彼の試練はここから始まるんですよ。鬼畜。
いえいえ、私はSとかそんなじゃないです^^
平岡『まあーだああぁー??』
黒星『まだまだノ』




