◆四話◆ 【side*知裕】
次の日の放課後、俺は柚樹と待ち合わせていたが、日直の仕事で遅くなることをすっかり忘れていた。
急いで待ち合わせの場所だった階段のそばに行くと、柚樹は誰かと話していた。
様子を伺ったその時、
「黙ってやられてればいいじゃねえか……」
という声と、地面に倒され、男に馬のりにされる柚樹の姿が目に入った。
俺は衝動的に飛び出し、めいっぱいそいつを殴り飛ばした。
「トモ……」
かすれた声で柚樹が俺の名前を呼ぶ。大丈夫か。そう言おうとしてでたのは、自分でも驚くほど低い、地を這うような声だった。
「黙れ」
「え……?」
怯えたような柚樹の声が耳に届き、更に頭に血が上るのがわかる。
柚樹には目もやらず、柚樹にまたがっていた男に向かって聞いた。
「お前ら、ここで何してた」
男は、頬を抑えたまま言い放った。
「朝倉にやらしてもらおうと思ってな。なんだよ、邪魔すんなよな」
分かっていたことだけに、ショックだった。
柚樹を見ると、瞳を濡らして俺に訴える。
「ち、違うっ! 狩野がっ……・」
「もういい。……もういいから、服を直せ。帰るぞ」
言いながら、俺はその狩野とかいう男に改めてまたがり、もう一度拳を上げた。
この執着はなんだ。
自分でも、変に思う。
同級生が、押し倒されたってだけじゃないのか。
こいつが嫌な絡まれ方をるるのなんて、いつものことだ。
「もういいからっ!」
いつの間にかブレザーを着込んでいた柚樹が、俺を止める。こいつを、庇うのか。
柚樹を見ると、その顔は今にも泣き出しそうだった。
しょうがなく、狩野には「次こいつに触ったら、覚えとけよ。こんなので済むと思うな」とだけ残してその場は去った。
その後は最悪だった。
言葉の揚げ足をとっては自分でも整理のつかない言葉で柚樹を傷つけて、慰めてやることも、話を聞いてやることもせずに背中を向けた。
俺の後ろで動かないまま、遠ざかっていく気配が、あいつが傷ついたことを教えてくれた。
それから数日、俺は柚樹と全く話をしなかった。
こんなことは、俺達がつるみだして初めてだったから、俺達の仲のいいことを知っている連中を中心に、ちょっとした話題になった。
同時に、俺の中で割り切れない思いがふつふつと沸き上がってくる。
どうして俺は、こんなに苛立っているんだ。
柚樹を軽蔑した?
そんな考えは、早々にかき消した。
それだけは在り得ない。と自分でも思うからだ。
狩野を殴ったのだって、柚樹を大切に思っていたからだ、だからこそ、柚樹に告白して俺からを奪おうとしたあいつが許せなかったのだ。
……奪おうとした?
浮かんだ思考をバカげてると思い直す。
「くそっ」
いつもニコニコそばにいた柚樹がいないことで神経が逆立っているのがわかる。
結局俺には、柚樹が必要なのだ。
キリの良さを求めたら短くなってしまいました・・・。
うーん、平岡頑張れ!
.*★お知らせ★*.
受験がありますので、来週の投稿はお休みしますノ
次の投稿は、3月11日22時頃です☆
朝倉『まったく、勝手な作者だよね。』
平岡『予約投稿しようにもストックがないらしいぞ。』
朝倉『マジでか。』
平岡『で、勉強はすすんでんのか?』
黒星『・・・・・・。』
朝倉・平岡『(駄目だこいつ…)』
平岡『おーい、アンタが頑張ってくれないと、俺もそろそろ限界だぞ。』
朝倉『・・・お前はもう少し考えてモノを言え。』