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プラネタリウム  作者: 黒星 白
◇本編◇
2/14

◆二話◆ 【side*柚樹】

 

 翌日、放課後に知裕とまちあわせている校舎の西階段に行くと、そこには知裕ではなく同じクラスの狩野かりのが立っていた。


 正直こいつは苦手だ。


 常に相手より優位に立ちたいという考えが態度に透けて見える。

 今日はいつにもまして寒いというのに、背中に嫌な汗が滲んだ。


「あ、悪い」


 そう言って立ち去ろうとした柚樹の肩をつかみ、狩野は言う。


「そう避けんなよ」


「や、別に避けてるわけじゃねえよ」


「そ?じゃあ、話があんだけど」



 言葉とは裏腹に、肩を掴む手は強い。



「い、痛いって。わかったから……離せってば」


 「お前、俺の女になれよ」突然そう告げられても、驚かなかった。

 狩野には以前からよく嫌な絡まれ方をしていたが、うまく交わしていたのだ。



「……は? 言ってる意味が……」


「分かんねえわけねえだろ。笑わせんな、どうせ平岡にもやらせてんだろ。

 俺にもやらせろって言ってんだよ」


「はっ?!」


 今度は本当に驚いた。


「い、みわかんねえっ! 放せっ!」


 引き寄せようとしてくる狩野を相手に、必死で抵抗するが身長も170センチ弱の柚樹では学年でも大柄な狩野を押しのけることはできない。


「ったぁ……」


 鈍い音と共に、地面へと押し倒される。


 直接地面に後頭部をぶつけて一瞬めまいがする。


「……っ」


 いつの間にか馬乗りになった狩野の手は、既に柚樹のカッターのボタンにかかっていた。


 とっさに手を押し返そうとするが、やはり無理だ。

 急すぎることに、自然に視界が濡れる。


「やだっ……やめろ! っは、なせってば……いやだっ……」


 やめてくれ。というのに手はのかない。

 うるせえな。狩野が低い声で言った。


「黙ってやられてればいいじゃねえか。どうせ……」



 ドンッ



 という鈍い音と共に体への重みが消え、狩野の言葉も途切れた。

 体を起こすと、知裕がそこにいた。


「トモ……」


「黙れ」



「え……?」


 それは、聞いたことのないほど、怒気を孕んだ声だった。

 そもそも、知裕が俺に対して怒ることがまれなのだ。


 知裕の視線は頬を押さえて経たり混んだ狩野に向けられているが、今の言葉は明らかに柚樹に向けられたものだった。


「お前ら、ここで何してた」


 依然低い声で問う知裕に狩野が応える。


「朝倉にやらしてもらおうと思ってな。なんだよ、邪魔すんな」


 その瞬間、明らかに知裕はショックを受けて柚樹を見る。


「ち、違うっ! 狩野がっ……」


 もういい。帰るから服を直せ。そう言って、知裕は狩野に歩み寄る。

 狩野の頬は既に青くなっていて、少し腫れているから、相当強く殴ったんだと思う。


 人が殴ったり、殴られたりを直に見るのがはじめてだった俺は心配になって知裕の手に目をやると、血が指を伝っている。


 しゃがみこんだ狩野の胸ぐらをつかみ、再び拳を振り上げた知裕を見て、とっさに叫んでいた。


「もういいからっ!」


 知裕は複雑な表情でこちらを振り返った。

 悔しそうで、半分怒っていて。でも、どこか泣きそうな顔だった。


 その後、知裕が狩野になにか耳打ちしていたけれど、どんなことかは知らない。

 帰り道、駅までの道が、こんなに長くなんじたのは初めてだった。


 沈黙を破りたくて、先に言葉をはっしたのは俺だった。



「……わ、わらっちゃうよな。男なのに襲われるとか。俺ってそんなに女っぽい?」


「は、なんだよお前」


「え?」



 どこか呆れたような、ばかにしたような声に、いつものように笑って「そうだな。」と行ってくれると思っていた俺は驚いた。



「誰にでも媚売ってるからこんなことになるんだっ!」


「……なにそれ。っ意味わかんねえ……」


「どうせ、誰でもいいんだな」


「な、なんでっあいつと同じこと言うんだよっ……!」


「だってそうなんだろ! 誰にでもやらせるって俺もその一人かよ!」


「ちがっ……だいたい俺はっ」


「……もういい、じゃあな」



 そう言って、その背中は駅に消えていった。

 嘘だと思った。

 助けに来てくれて、「大丈夫。」っていってくれると思ったんだ。


 気持ち悪い。


 初めて、自分のことをそう思った。

 いままでどんなに露骨な絡まれ方をしても、狩野に押し倒された時だって、悪いのはいつも相手側だった。


 違うんだろうか。


 本当は俺が汚いから?


 なにより、


「知裕に軽蔑された」


 その事実が、うまく飲み込めなかった。


 いつだって知裕は俺を認めてくれていた。

 口が悪くても、すぐに殴っても怒鳴っても笑ってゆるしてくれたのに、その知裕に……




「そっか、俺。・・・嫌われたのか。トモに」



 震える肩を自分で押さえ込みながら、俺はあやうく、泣きそうになった。



こんばんは。黒星白くろぼしあきらです。


人肌恋しい受けが良い(しつこい



朝倉『どうでもいいんだけどさ、アンタ勉強とかしないの?』

黒星『してるよ、歴史とか歴史とか歴史とk・・・(幕末&戦国好き)』

朝倉『歴史ばっかじゃんっ!数学は?!俺こないだの数学の点知ってんだからな!』

黒星『言ったら総受けにしてやる。。。』

朝倉『…まだ全然人いないじゃん。』



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