◆十話◆ 【side*柚樹】
触れたのは、唇だった。
見開いたまさに目と鼻の先に知裕の顔。
少し伏せた瞳はしっかり俺を見据えている。
それは羽みたいな感触だけ残して、すっと離れていったけど、俺の時間と呼吸はその瞬間に止まったままだ。
「……なに」
聞いた俺に、知裕は一瞬困ったような顔をした。
「なに……って、もうちょっと聞くことないの」
そんなことを言われても、今起こったことが本当にあったこととは思えなかった。
そもそもなんでこんなことになったんだっけ……
「あ、そうか。トモは俺の事が好きなんだっけ」
「そう」
じゃあなんで好きな俺にこんなことをしておいてこいつはこんなに冷静なんだろうか。
最近のトモはもうちょっとバタバタしてて……焦ってたような?
だんだん頭がこんがらがってきた。
もともとあまりよろしくない頭だ。最近酷使しすぎたのかもしれない。
一旦思考を休めるべく目を閉じたとたん体が宙に浮くのを感じた。
「……え?」
「眠いんだろ?」
「あ、うん」
そういえば、そんな気がしないでもない。
なにより今は、この心地いい感覚に身を任せていたくて、入れは目を閉じた。
目が覚めると、ベッドの上だった。
霞んだ頭で考えるのは、眠る前のことだ。
知裕が俺を好きなのは知っていた。
それも、友達としてではなく恋愛の対象として。
そもそも男同士で恋愛もなにもないだろうと思っていた
ただ、知裕のそばにいるときの心地よさがほかの友達のそばにいるときの感覚と違っているのも確かだ。
「うー……わからん……」
考えるのは苦手だ。
これが恋だと言われればそんな気もしてくるし、かといって友情でないとも言い切れない。
青い枕に顔を埋める。
知裕の臭いがした。
ああ、シャンプー一緒のなんだなー……
「ユズ?」
「うわあっ!!」
すこし心配そうな顔の知裕が俺を見下ろしていた。
俺が体を起こすと、そっとベッドの橋に腰掛けてきた。
「気分わるい? 家に連絡しようか?」
「気分悪いってなんで? てかなんで家……」
俺の体調まで気遣う知裕に違和感を覚えた。
そして知裕の言葉に気づかされたことが一つ。
「や、あと一時間で日付けかわるぞ?」
マジかよ……
俺の家はそんなにうるさいほうではない。
というかむしろ放任だから、その辺は心配することもないのだけれど、知裕を一応見舞い……
というかお詫びに来た挙句寝こけてしまうというのは、さすがにどうなんだ……
さて、と。
もうサクっとくっつけてしまいたくてしょうがない黒星のアレが滲み出てないですかね。大丈夫ですよねうん。
明日は七夕用に書いたSSを載せようかなと思ってます。
季節外れ……?ですが笑
明後日からはちゃんとプラネタリウム載せますね^^