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真実の愛のその後  作者: シエル


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2/5

結婚理由




小侯爵様は嫌味だと受け取ったのでしょう。


眉間にシワを寄せ、不快そうな表情を隠しておりません。




「…どういう意味だ」



「どういう意味も、この結婚は小侯爵様の為のようなものですのよ?フェアリー男爵令嬢に操を捧げ子も作る気がないとおっしゃるのであれば、ただ単に時間の無駄ですわ。そんな事なら離縁いたしましょう?」



「なっ!マリーの事を知っているのか?」



「…なぜ、知られていないとお思いですの?むしろ、学園に通った者なら知らない人の方が少ないと思いますわよ?」




思い人がフェアリー男爵令嬢と知られている事に動揺していますね。


当時、14歳で学園に入学前の子どもだった私に知られているとは思っていなかったのかもしれません。



 

「それに私の父は王弟ですわ。アレク兄様の事を知らないわけないでしょう?」

 



そう、私の父は現国王陛下の弟なのです。


つまり、アレクサンダー王子殿下とエドワード王子殿下は従兄弟になります。


私の台詞で思い出したのか罰の悪そうな顔になりましたが、そういえば小侯爵様とちゃんと顔を合わせたのは結婚式が初めてでしたので忘れていたのかもしれません。



 

「…そうだったな。しかし、離縁は…その、君にも良くないのでは?」



「よくない…ですか?あぁ、次のお相手という事でしたらご心配なく。筆頭侯爵家であり、王弟の一人娘ですので縁談には困りませんの」



「そうか…」



「えぇ、ですので私の事よりご自分のご心配をされた方がよろしいと思いますわよ?もう、後がないのですから」




はぁ、疲れ損のうえ時間の無駄でしたね。


幸い私がブラックウッド侯爵家へ嫁ぐわけではなく、シュトラール侯爵家への婿入りでしたので引っ越しの手間がないのは助かりました。




「待ってくれ!後がないとはどういう意味だ?」




立ち上がり夫婦の寝室から出ようとすると手をつかまれ引き止められました。




「どういうって…この結婚がなくなると小侯爵様はブラックウッド侯爵家を廃嫡・廃籍される事になってますよね?」



「は、廃籍?!」




なぜ、こんなに驚いているのでしょう?




「はい。小侯爵様はいったいどうお聞きになっていましたの?」



「…結婚しなければ廃嫡するとしか…」



「あら、少し説明が足りてなかったのですね。まぁ、あえて言わなかった可能性もありますが…では追加でお話いたしましょうか」




この国の宰相でもあるブラックウッド侯爵は真面目な方ですから、あえて話さずに小侯爵様の事を試したのかもしれません。




そもそも、今回婚約期間を吹っ飛ばし、いきなり結婚になった理由は我が従兄弟であるエド兄様からのお願いから始まりました。





⸺⸺⸺






「アイリーにお願いがあるんだ」




それはエド兄様に王女殿下が生まれたお祝いに行った時の事でした。


普段から笑顔が基本装備のエド兄様ですが、この時の私の愛称を呼ぶ笑顔は明らかに何かを企んでいる時のものでした。




「まぁ、エド兄様が私に頼みごとなんで珍しいですわね。何かしら?」




私とエド兄様は性格が似ております。


その為、お互いに頼みごとをする事は滅多にないのです。


…だって、高くつきますから。




「ははは!うん、実はアイリーにグレン・ブラックウッド小侯爵と結婚して欲しいんだ」




…ついにお腹の中にある真っ黒なもので頭がおかしくなったのかと思いました。



詳しく聞けば、エド兄様に二人目のお子が生まれた事で立太子が決まり、スペアとして置いておいたアレク兄様を廃籍し、後に問題が起こらないように断種したうえで一代男爵位を叙爵する事になったそう。



その際に王命でフェアリー男爵令嬢と離婚不可で結婚をさせるのと同時に現在結婚している側近達を離縁させるとの事。


どうやら、彼らはまだフェアリー男爵令嬢に傾倒しており白い結婚を貫いているそう…



…事故物件である彼らを拾ってくれた妻を蔑ろにしすぎではないでしょうか?



彼女は王城の近くのアレク兄様が用意した屋敷に住んでいるそうですが、そこに側近達もよく訪問しているそうです。



公務など仕事はそこそここなしてはいますが、いかんせん5年経った今でも相変わらずで悪影響が大きすぎます。


その為に国王や側近の家の当主達と話し合った結果、子を作らないうえに家の役にも立たない子息達を廃籍し放逐する事になったそうです。



ただ、そこで一つ問題になったのがグレン・ブラックウッド小侯爵様です。


ブラックウッド侯爵家に子はグレン様しかいないうえに彼は優秀すぎました。



王太子になるエド兄様には側近はおらず使えそ……有能な彼を手放すのは惜しい…




「そこで思いついたのがアイリーなんだ。アイリーならグレンの手綱くらい握れるだろう?だから、グレンと結婚して欲しいんだ」




いい事を思いついたでしょう?と言わんばかりの笑顔で、思わず扇子で引っぱたきたくなりました。





「私も最初は拒否してましたのよ?だって、側近の方々は先ほどの小侯爵様のように「君を愛する事はない」などとほざいて白い結婚をしてますもの。これでも私も次期女侯爵で後継が必要ですから白い結婚などあり得ませんわ」




先程の自分の言葉が胸に突き刺さったのか、ぐっと言う声が漏れました。





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