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幕間
暗い部屋を松明の灯りがぼんやりと照らしている。随分長く使われていない部屋は埃だらけで、さらに地下にあるためか薄ら寒かった。私は天井の蜘蛛の巣をぼんやりと見ながら彼がやって来るのを待つ。 じじっと羽虫が松明の炎で焼けた音がした。
どれぐらい経ったのか。やがて石の階段をこつこつと降りてくる音がして寂れたドアを軋ませて彼が入ってきた。彼は人がいないことを慎重に確認してから扉をしっかり閉める。
「計画を実行する時が来た。彼女が旅に出ている間に殺せるのが一番良い形だが万が一に備えてあれの作業も進めるように。」相変わらず私と二人きりの時はなんの感情も読めない顔である。「あれさえ出来ればレクターがイニティウムの子孫である必要はないのだと世間に証明できる。」それだけ言うと私の顔もろくに見ずに再び部屋を出ていった。それはそうか。私は失敗作なのだから。彼のいなくなった部屋で手をぎゅっと握りしめる。「大丈夫、必ずできる」そう呟いた私の言葉は誰もいない暗いこの部屋でむなしく響いて消えていった。