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葛藤
両親は共働きだ。
だから、この時間はいつもいない。
その方が気楽だった。
一人でやって、一人で帰ってくる。
充実はしてないけど、一人の時間はたくさんある。
それでよかった。
今までは。
今は、寂しい。
心配されるのになれてしまうと、人の愛が欲しくなってしまう。
学校に行けば寂しくない。
けど、
それは――学校に行ってみないと分からない。
先生が話を真剣に聞いてくれるかもしれない。
それも――学校に行ってみないと分からない。
けど、怖い。
もしこうだったら。もし――
でも、行きたい。
なんとか玄関の前まで来た。
あとは――学校に行くだけだ。
ゆっくり深呼吸をする。
振り替えるな。
自分を制止させる。
ドアノブに手を伸ばす。
――怖い。
けど、行くと決めたのは自分だ。
目を瞑って学校の先生の顔を思い浮かべる。
優しそうな笑顔を浮かべている。
「学校においで。」
そう言われた気がした。
目を開いて、震える手でドアノブを押す。
「よし。行こう。」