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ゴミ溜めの王  作者: 如月陣
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セレナ③

 今日は待ちに待った旦那様との密会の日。


「今日は久しぶりの旦那様との密会の日とても楽しみだわ。それに今日は旦那様に大事な話もある」


 そんな風に考えながら貴族の男を待ち侘びていると一つの豪華な馬車がやってきた。


 それに気づいたセレナは急いで下へ駆け寄り出迎えた。


「お久しぶりです旦那様。お会いできて嬉しいです!」


「久しぶりだなセレナ。取り敢えず中に入れてくれ」


 そう言って2人は屋敷に入っていった。


「取り敢えず何か飲みますか?旦那様」


「そうだな紅茶を頼む」


「はい。今用意しまますね」


 そう言ってセレナは手際のいい手つきで紅茶の準備を進めていった。


「オールツク産の紅茶です。滅多に手に入らないんですけどたまたま見かけたのでつい買っちゃいました」


「ふむ。この私でもなかなかお目にかかれない紅茶を用意しているとはな。相変わらず用意のいいやつだ」


「ふふ、旦那様にそう言っていただけると光栄です」


「それにどうやら紅茶を作るのも随分と上手くなったようだな」


「最近、暇だったんです。だから旦那様のために練習したんですよ」


「そうか、ならお礼に今日はとことん愛してやるとしよう」


「はい♪旦那様」


 そうして二人の長い密会は始まった。


 愛し合いはじめ数時間後


「ふう〜とりあえず何か飲み物を飲むか」


「わかりました。すぐに用意しますね」


「やはりこの紅茶はうまいな!」


「そう言っていただくだけで私は嬉しいです。旦那様」


「そうか。だがこの美味い紅茶をただ飲むだけでは勿体無いな。ついでに一緒に飯でも食うか?丁度うまい肉を持ってきている」


「ほんとですか?嬉しいです」


「うむ。では用意してくれ」


「はい、わかりました。」


 そうして食事の用意を進めて行った。


「旦那様、食事の準備ができました」


「うむ、では食べるか」


「はい」


「このお肉とても美味しいです。旦那様」


「当然だ!この肉は一般庶民では到底買えないような値段だからな」


「こんなお肉食べれるなんて私とても幸せです」


「ふん!お前はわたしの愛人なのだから当然だ」


「ありがとございます旦那様!」

 

 そうして2人は色々な会話を楽しみながら食事を済ませて行った。


 食事が終わる間近、セレナはずっと機会を伺いながらもなかなか切り出すことができなかった話題をついに口に出すことにした。


「旦那様、今日は大事な話があるんです。聞いてくれますか?」


「そうか、食べながら聞いてやろう」


「私、妊娠したんです」


「何を言っている?」


「旦那様の子供がお腹にできたんです」


「私の子供だと?お前は娼婦だろう?私の子供とは限らんではないか」


「旦那様、どうしてそんなことを言うんですか?半年前、旦那様の愛人になってから私は誰にも身体を許してません」


「そんなものはお前の言い分にすぎない。私とお前が会うのは多くても一週間に一回だ。その間に他の男と会っていてもおかしくない」


 セレナはこの言葉を聞いて絶望していた。


 その絶望を知ってか知らぬか貴族の男はさらに言葉を紡いでいく。


「セレナ、お前が私にとって都合のいい存在だと思ったから私はお前を愛人にしたんだ。まさか私の子供を孕んだなどと虚言を申すほど愚かだったとはな」


「旦那様、信じてください。本当に旦那様の子供なんです」


「まだわからないかセレナ。お前の子供が私の子供であろうとそうでなかろうと私はどうでもいいのだ。私はお前との子供など必要ないと言っているのだ」


「どういうことですか?私を愛してくださっていたのではないですか?」


「本当に烏滸がましいんだなセレナ。私がお前をのような汚れた女を本気で愛すはずがないだろう」


「そんな、嘘だと言ってください。旦那様」


「全て真実だ。むしろ何故大貴族である私がお前のような汚れた女を愛すると思えるんだ。本当におめでたい頭だな」


「そんな、私はこれからどうしたらいいのですか?」


「そんなもの私が知るわけないだろう?ただお前が孕んだ子供を私の子供などという虚言を広めないでくれよ?そんなことをすればお前も子供も殺さなければならない。これでも半年間一緒にいた仲だ。そんなことを私にさせないでくれ」


「旦那様、今言ったことは嘘ですよね?私にこんな酷いことを言うのは私がいると旦那様の不利益になるから仕方なく言っているんですよね?私の子供が旦那様との子供だとばれたら貴族たちの笑い物になるから」


「何が言いたい?」


「私の子供が旦那様にとって利用価値があるものだとすればどうですか?」


「どういうことだ?詳しく話せ」


 貴族の男はここに来て今まで見せることのなかった興味を見せた。これをチャンスだと思ったセレナは自分の有用性をここだとばかりに畳み掛ける。


「私はある大商会の正式な跡取りなんです!今は嵌められて経営権を奪われていますが、旦那様が手伝ってくださればすぐに取り戻せます。そして取り戻したあとの商会を継ぐのは私と旦那様の子供、つまり旦那様は大商会を手に入れることができるんです」


「なんという商会だ?」


「ロック商会です」


「ふむ、たしかに興味がそそられる話だ。だが、お前は大きな勘違いをしている。貴族の笑い者?私のことを笑えるような貴族はこの国にはいない。私はこの国の貴族の中でも莫大な権力を持っているからな」


「では、なぜですか?そこまでの権力があるのなら私の子供を認めてくれてもいいではないですか?私は貴族の跡取りとして認めてほしいと言っているわけではありません。庶子でもなんでいいから認めて欲しいと言っているんです」


「私の妻は元々王族の出でな。もし私が愛人と子を作ったなどと知られれば王族を敵に回すことになる。たとえロック商会を得て多くの財力を手にしようと王族を敵に回してしまえば財力など何の価値もない。それに、お前にとっても私の子どもではない方がいい。私の妻は最近生まれたばかりの息子をとても愛していてな、その息子を守るためならおそらくなんでもやるだろうな」


「私を殺すということですか?」


「そんな甘いものではない。お前に関係した全ての人間を殺すのだ。そしてそこまでしても許されるほどの権力を私と妻はもっているのだ。わかったらさっさと不貞をしたと認めてここから去れ!」


 セレナは今にでも泣き出して私を見捨てないでと懇願したかった。しかしそんな情けない姿を自分を裏切ったこの男に見せることはプライドが許さなかった。


「そうですか。私はこれから商会を取り戻すために動きます。あなたの子供だということは一切他言しません。それでは失礼します旦那様」


「少し待て、セレナ」


 この言葉にセレナは愚かなことだと理解していても引き止めてくれるのではないかと期待してしまう。


 しかし、結果は


「商会を取り戻そうと動くことも許さぬ。お前が産んだ子供が私と似ていてみろ要らぬ疑いが向くではないか。お前が目立てば目立つほど私のリスクが高まるのだ。お前はスラムにでも行って残りの人生を流石に過ごせ」


「いくら旦那様でも私の生き方に口を挟む権利はないはずです!」


「もちろん私がお前の生き方に口出しすることはできん。ただお前を殺すことならできる。お前が取れる選択肢は二つだけだ。一つは商会を取り戻すために動き、私に殺される。二つは私から今後の人生に困らないほどの金を受け取り、静かに子供と2人でスラム街で暮らすだ。どうするかはお前次第だがな」


 あまりにも残酷な二択にセレナは選択したくなかったが、それでも選択せざるを得ないのだ。


 セレナは少し息を吸い答える。


「スラム街で静かに生きます。さよならクソ野郎」


 そういってセレナは一生暮らせるほどのお金をもらい全てを憎みながらスラム街へ向かったのだった。




セレナ編はこれにて終了です。ついに次から本編です。

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