ハジーマ村に平和が戻る
リーダーをやられて形勢逆転されたゴブリンは撤退していった。アインフェニックスはハジーマ村の平和を守ることに成功したのである。そして、リトルプラム楽団のライブは後日改めて行われることが決められた。リトルプラム楽団のライブを楽しみにしていた村人は多かったのである。リトルプラム楽団のメンバーは胸を大いになでおろした。
そして劇場艇に戻ってきたカケルはリトルプラム楽団に質問攻めにあった。カケルはたじたじになりながらも地球のこと、ユニオンのことを話したのであった。リトルプラム楽団は驚きながらもカケルの秘密を受け入れたのであった。
そして、翌日はリトルプラム楽団がハジーマ村を旅立ち、次の興行先に向かう日の深夜の噴水広場。カケルとレミィはベンチに座って飲料を飲んでいた。
「カケルの世界のこと最初は驚いたんだけど、あたしの世界とそんなに変わりはないわね」
「確かに言われてみればそうかもしれないな、ろくでもない奴らばかりがいっぱいだからか?」
カケルはレミィを茶化した。
「本当にどんな世界でも世界は理不尽なものだね……でもね」
そこでレミィは真面目な表情になった。
「でも?」
「でもそんな理不尽に立ち向かうのがヒーローかもしれないね」
「あぁ、オレがアインフェニックスになったきっかけも子供がアルゴスの怪人に襲われるのを黙ってみてられなかったからだし、たしかにそうかもしれないな」
カケルとレミィはまじまじと見つめ合い、なんだかおかしな気持ちになった。
「カケル、ごめんね。変なこと言っちゃって……あたしの言ったことを忘れて!」
レミィはそう言いながら誤魔化すように笑う。
「オレはレミィが言ったことを忘れないぞ」
カケルはぼそりと言った。
「え? カケル?」
レミィははっとした表情になる。
「レミィがヒーローについてそんなこと言ってくれて、オレは嬉しかったよ」
カケルはそう言って笑った。
「カケルは喜んでくれたのなら、あたしはそれでいいよ」
笑い合うカケルとレミィを噴水公園は静かに見つめていたのであった。
一方、アシュタロス平原に存在する破壊神ヴラドベインを祀る破壊神殿では冷厳なアトモスフィアが包まれていた。
「ガルドがやられたとは……アインフェニックスとは一体何者だ?」
破壊神官ヴォズワルドは突如現れた謎の戦士の正体に思案を巡らしていた。
「カースウェッジ卿がガルドを支援した形式が見えない……カースウェッジ卿は一体何を考えているのか」
そこに薄暗い闇から謎の影が現れる。
「哀れなものだな……破壊神官ヴォズワルドよ」
「あなたは破壊神官ヴィクトラス! 何しにやってきた!」
ヴォズワルドは突如現れたヴィクトラスに戦々恐々としていた。ヴィクトラスはヴラドベイン教団で随一の武闘派、ヴラドベイン教団員でも恐れるものが多い男である。何故その男がヴォズワルドのもとに現れたのか!?
「常々ヴォズワルドのやり方は生温いと思っていた。ここは俺様に一つ任されてみないか?」
ヴィクトラスは恐ろしく高圧的な口調でアインフェニックスの件は任せろと言った。
「言っておきますがアインフェニックスは強いですよ?」
「強敵ほど壊しがいがあるからな」
ヴィクトラスは不敵な表情で笑った。
カケルの旅路は危険を増しつつあった。