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リハーサルと招かれざる客

 翌日の朝、ハジーマ村は穏やかな朝だった。カケルはレミィと話し込んだおかげだろうか穏やかな眠りにつくことができた。変わったことと言えば、朝食時にサリーにそれとなく深夜外出に関してからかいの言葉をいただきカケルは苦笑いで返すほかなかったことだろうか。軽めのストレッチをした後、昼からハジーマ村の噴水広場で演奏をする予定になっているらしくそのリハーサルの現場を拝見することになった。

「カケル君、リトルプラム楽団は先代の団長、私の父親から受け継いだ楽団なんだ……その目的は混迷を続ける大陸の村々に明るい希望を音楽に乗せて届けるためなんだ。今日は私たちの音楽を聴いていってほしいな」

 ハジーマ村に安置された特設ステージ付き魔導飛空艇(一点ものらしい)は地球のライブハウスのステージとそん色ない大きさで壮観だった。歓迎会の時、サリーから聞いた話だとガリバルディ王国の最先端魔導技術を惜しみなく投入していてリトルプラム楽団の生活の場を兼ねているとのことらしい。

「カケル、ウチの魔導飛空艇はすごいでしょ!? あたしも初めて見たときは凄く驚いたのよ!」

 レミィは自慢げに魔導飛空艇について話していた。

「オレはこんなデカいステージが付いた飛行船は生まれて初めて見たぞ……こんなステージでライブができるなんてレミィは幸せだな」

 カケルは思わず驚嘆の言葉を漏らした。

「おい、レミィ! そろそろリハを始めるからステージに来い……カケルにオレたちリトルプラム楽団のライブを見せるんだろ!」

 ステージではリトルプラム楽団のメンバーがスタンバイをしていて、フレッドマンが手を振ってレミィにステージに来るように促す。

「ごめんごめん!今ステージに上るから待ってて!」

レミィは慌ててステージに向けて返事をする! そしてレミィはカケルに向けてウインクした。

「じゃあ、あたしたちのステージを楽しんできてね」

 そうしてステージに向けて走り去っていった。


 レミィがステージに持つと待ちかねたかのようにリトルプラム楽団は楽器のチューニングを始めた。チューニングが終了し、しばし静かな間が生まれるとジェラルトが現れた。

「どうも皆さま、今日はリトルプラム楽団のライブにお集まりいただきありがとうございます……これからしばし、日常の喧騒を離れ、リトルプラム楽団が織りなす音楽の世界に皆様をご案内したいと思います。では心してお聞きくださいませ! リトルプラム楽団のライブスタートです!」

 ライブ開始の口上を終えるとジェラルトは素早くステージ脇にはけていった。それを合図にリトルプラム楽団のメンバーは演奏を開始する。

 ……カケルはその演奏を聞いて深い感慨を受けた。この異世界に伝わるおとぎ話を題材にしたアンジーの歌とリトルプラム楽団の演奏がかみ合い素晴らしいハーモニーを奏でていた。気づけばカケルはリトルプラム楽団の演奏に夢中になっていた。


 1曲目、2曲目、3曲目を終えたあと、いったん舞台転換の為ステージの幕が閉じられた後、にわかに騒がしくなった。ハージマ村の警備兵が走って広場に駆け付けてきた。

「リトルプラム楽団の皆さん! 大変です! 前触れもなくゴブリンがハージマ村に襲撃してきました! 急いで避難してきてください!」

 警備兵が声張り上げて、突如、ゴブリンの襲撃を告げた。

「えっ、ゴブリンですって! それは大変だ! 急いで楽団の荷物を飛空艇内に入れるんだ!」

 ジェラルトの一声でリトルプラム楽団のメンバーは大慌てで楽器の片付け作業に入った。カケルは大変なことになってきたと思いながら警備兵に近づいた。

「すみません、ゴブリンが襲ってきたっと言いますが被害はどのくらいですか」

 思わずカケルは警備兵に被害状況を聞いてきた。

「突然、ゴブリンが襲撃してきて村の建物を破壊し、目についた子供や女を次々と捕まえ出したのです」

「……なるほどわかった」

 カケルは警備兵の答えを聞き終えると同時に走り出していた。それは考えるより先に動いていたのだ――リトルプラム楽団の演奏を楽しみにしていた罪のないハージマ村の村人になんて理不尽だ。少しでも早く襲撃を終わらせないと。カケルはそういう想いで現場に駆け付けていた。

「カケル! ちょっとどこ行くの!?」

 レミィは広場から走り出すカケルを見て思わず叫んでいた。

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