プロローグ
23xx年
世界は核の炎に包まれた…わけではないが、大国が戦争を繰り返す混沌とした世の中になっていた
科学の発達や魔力の発見、それらが戦争の大規模化に拍車をかけ被害は拡大し続ける一方である
市民の安全が保証出来る大国や一部の富裕層には関係無いが貧しい小国は一般市民にまで被害が及び数え切れない程の死傷者を出していた
そして滅んだ小国の跡には廃墟の街が残り、生き残った数少ない人々も地獄のような環境で細々と息を繋いでいる
衣食住の全てに問題が有る中、加えて稀に来る人身売買のグループや奴隷狩りに怯える生活
この辛さに耐えきれず自ら命を断つ者も後を絶たない
この世はまさに地獄絵図
救いも無けりゃ神も居ない
そんな絶望の世界にて三人の子供が不思議なオッサンに拾われた
この物語は真っ白な三人の主人公達がどう成長するか
最後に何を選ぶのか
それを見守るオッサンの暇潰しである
世界が震撼したのは21世紀末、新大陸の出現
突如として現れたその地に世界中の学者が少年の様に胸を弾ませ調査しようと試みたがことごとく失敗に終わった
常に荒れ狂う海流に空には消える事の無いハリケーン
誰かが言う
この地の周りで悪魔が踊っている、と
まさに手も足も出ないまま30年の月日が流れ人々の興味が薄れ始めた頃、新大陸側から動きがあった
世界首脳会議の場にて本当に悪魔が現れた
比喩でも何でもない実物の悪魔が
しかし悪魔は角こそ生えていたがそれ以外20代の青年とまるで変わらない姿形
誰もが悪質な悪戯だと思っていた
だが彼は正真正銘の悪魔
後に世界中の教科書に顔が載る事となる『最初の悪魔・バモ』
彼は各国の罵倒を浴びながら持っていた本を閉じた
五月蝿かったはずの会場に本を閉じる乾いた音が寂しく響く
その瞬間、口を開けていた人間が意識を失い床や机に倒れた
後に調べると倒れた全員の死亡が確認される
「僕は案内人、悪魔のバモ、以後お見知りおきを」
悪魔の第一声が透き通る様に耳に入ってきた
生き残った全員は何故だか通訳も無しに悪魔の言葉が理解出来る
「そうです、今この瞬間、言葉の壁は粉々に砕かれチシャ猫が食べてしまいました」
実際にこの日を境に世界の言語が意味を成さなくなった
「これも我らが神の成せる業」
悪魔はこみ上げてくる笑みを噛み殺しながら淡々と語っていく
「僕は皆さんが言うところの新大陸からやってきました」