孤独な彼の戦士は、今日も悪事を100%見抜く
今日ものんびり、パラレルでパロディでイカれたローファンタジー世界チック=ニ=チアサ。
彼の戦いは終わらない。
※この駄作には社会的、社会人的に痛々しいシーンが散見されます。社会で揉まれ、辛い思いをなさっている方は注意が必要です。もし辛くなりましたら、ブラバ等をして回避なさって下さい。
20XX年。
侵略を基本とした各種悪い組織は、なんで地球を狙い続けるのか。
~~~
己の親友が現在敵対中の組織に改造されて利用されていると知り、何とか助け出したいと願うある日。
意思の強そうな太眉、ライダースジャケットをカッコ良く着こなし、革の指貫きグローブとスキニージーンズを着用した好青年。
そんな漢、コウザブロウは強い違和感を感じていた。
コウザブロウは敵対組織に捕らえられ、改造手術をされてしまった改造人間である。
最後の脳改造直前に逃げ出せた彼だが、その後は彼の家族や近しい人達に災難もしくは不幸が降りかかり、自ら離れて孤立する道を選んだ優しい漢である。
その彼が敵組織の影を感じ取ったのだが、どうにも曖昧で特定までは出来ないのだ。
なのではっきり感じようと、最近めっきり冷え込むようになった街を歩き回っているのだが、まったく分からない。
「どこだ……何かがおかしいのは分かっている。分かっているが、そのおかしい所が分からない」
とある街の大通り。多くのビジネススーツ男性、その表情がとても暗い。
道行く者は追い詰められている顔をして、公園のベンチに座る者のほとんどは悲しんでいたり魂が抜けた顔をしている。
「どこだ……探せば見つかるはずなんだ」
十字路を赤信号で止まっているビジネススーツ女性達の顔も悪いのが多い。
携帯端末を怖い形相で睨み、焦っている様子を隠そうともしない。
「よく探せ……見つけてみせる。ゴムゴンめ……」
あ……携帯端末を見つめていた数人の男女。それの顔が今呆然として、青信号になっても動き出せない。
コウザブロウはまったく全然、本当に今何が起きているか分からないのだ。
まったく感知できぬまま彷徨うコウザブロウ。
彼の現在地はとある地方にある町の片隅、近くの住宅から出るゴミを一時的に集める場所。
そこで世間話に興じる、奥様方の声がコウザブロウに飛び込む。
「奥さん、聞きまして?」
「なにかしら?」
「最近都会の大きい会社で、違法行為が告発されて大変な事が立て続けに起きているらしいわよ?」
「ああその話ね。大変な事がおきる程度ならまだマシで、信用がなくなって倒産する所も出てきているって聞きましてよ」
「それで下請け孫請けも仕事が減って、連鎖倒産もあるらしいわよ?」
「この辺ものんびりしていられないそうよ? 大手資本のスーパーやコンビニ、ホームセンターだってあるし」
「それ以前に公務員だって不正告発の嵐を受けて、公共の機能がにぶっているし」
「いつ地方や小さい企業へ飛び火するか分かった物ではないわね」
「どこまで広がるか、保証もないものね」
『………………』
「怖いわねえ(悔しそう)」
「怖いわねえ(勝ち誇ってる)」
『………………』
「ウチのダンナ、大丈夫かしら?(不安そう)」
「こっちもよ(不安そう)」
『はぁ……(ため息)』
コウザブロウに衝撃が走った。
こんな事件を起こせるのは奴らしか居ない!
「これはゴムゴンの仕業だ!!」
ついに異変の尻尾を掴んだぞ、この国をゴムゴンの好きにさせてたまるか!
ようやく得られた違和感の手がかりを胸に、意気込んだコウザブロウは勢いよく駆け出した。
決して口に出してはいけない、秘密結社の名を叫びながら。
いきなり駆け出したコウザブロウと衝突しそうになり、慌ててよけたスーツの男性が手に持っていたゴミ袋を景気良く放り投げ、大惨事を起こした事に気付かぬままに。
~~~
「見つけたぞ、ゴムゴンの怪人め!」
あの後も捜索を続け、コウザブロウは決定的な情報を得た。
それによると現在大都会で有名な億ションに、前線の活動拠点を移す計画だった。
それを信じて乗り込もうとしたら、億ション前広場で丁度作業をしているゴムゴンの怪人達と出くわした。
コウザブロウは既に戦闘態勢となっており、全身黒くて深緑色の縦ラインが入ったプロテクターに見える、何かを装着している。
頭部もしっかりしたフルフェイスの仮面をかぶっていて、素顔は分からない。が、その気迫と熱意で背景が蜃気楼みたくなっていた。
コウザブロウの声に反応し、ゴムゴンの面々がゆっくりそちらへ視線をやる。
「ほほぅ、これはこれは。我らゴムゴンの動きを邪魔し続けているクロではないですか」
コウザブロウ……クロと対峙している者の中で、一番くたびれた様子のバーコード頭痩せ中年会社員風男性が口を開いた。
ここで喋ると言う事は、このくたびれた男性が一番偉いと言うこと。
「日本告発作戦が我らゴムゴンの仕業だと、よく気付きましたね」
丁寧な口調で言うには、ずいぶん安直な作戦名だと思うが、そんな事は今の時点でどうでもいい。
「告発自体はとても良いこと。どんな小さな犯罪、不正行為でもそれを明るみにして、しかるべき罰を受けさせる。悪事ではないですよ」
そう、これは悪くない。悪い事をする者達をネット上で証拠もまとめて晒し挙げる。
本来なら証拠は警察機関に提出すべきだろうが、警察機関の不正行為まで挙げている事もあって、単純な話ではなくなる。
ゴムゴンが億ション前で行っていた作業は、その告発する証拠を集めるべく用意されたハッキング機器や、集めた証拠をネットに上げるサイト用自前サーバー1式等まとめて運び入れる作業だった。
「ぐぅ……っ!」
言葉に詰まるクロ。
負けるなクロ! 奴等の言い分には、悪が伏せられている!
頭を高速回転させ、次の句をどうにか探しだしたクロが反撃に出た。
「問題はその後だろうが」
そう、そこだ。
指摘を受けたヨレヨレ中年は、日付が変わるまで残業して苦労した分の成果を上げられ、報われた会社員みたいな顔をする。
「ええ、ええ。よく分かりましたね。 我々が睨むのはその後。
悪を告発し続け、正義を行い続けた英雄として、混乱・弱体化した社会を導く指導者となって国を支配する。
そのやり口が日本で成功したら、あとは世界各国で繰り返し、ゆくゆくは世界を統一。そんな計画ですよ」
ゴムゴンの策略、恐るべし。
自らの悪を隠しつつ、正義を名乗り悪を為す。
それはなんと身勝手なことか。それこそが悪と言い切れるだろう!
「なんと巧妙な悪事か……許さんぞ、ゴムゴン!」
あまりにも悪辣な所業を知ったクロが、正義の怒りを噴出させる!
その怒りのまま、クロはヨレ中年へ人差し指を突きつけて吼えた。
「貴様達の悪事を止めてみせるっ!」
突きつけられた当のヨ中は眉をキュッ!と寄せる。
「それは困りました、作戦が失敗したら上司に怒られてしまいます。 来なさい、戦闘員達!」
今まで作業していた戦闘員達だが、その指示に従いヨレた人の前で横列で並ぶ。
「クロを止めるのです」
号令一下。 勢揃いした10人程の戦闘員達がクロへ襲いかかる!
~~~
戦闘員達は戦闘員達だった。
多勢に無勢。 それを示すべく集団戦法で戦ったがクロには及ばなかった。
最近戦闘員の改良が進み、赤いベレー帽やオシャレなマフラーを搭載して戦闘力が増そうとも、それ以上に強くなるクロの敵ではない。
ある者がクロを羽交い締めにして、そのままサンドバッグになるのかと心配したが、そんな事はなかった。
今にも殴りかかってきそうな正面戦闘員。それを蹴り付け、羽交い締めにされている部分を重心として逆上がりみたくクルッと1回転。
なんとそれで逆に後ろをとり、そのまま逆ジャイアントスイング。
……いや、むしろ子供から遊びをねだられて奮起したお父さんが「頑張っちゃうぞー!」とばかりに、後ろから抱き上げてグルグルするアレが近い。
それで一掃したりした。
…………回された戦闘員は仲間へぶつけられ続けた足に、深刻なダメージを受けて立ち上がれない。南無。
良い子のお父さんは真似しちゃダメだぞ!
回す際には、きちんと周囲に気を配って事故が無いよう、安全かつ楽しくお子様とお遊び下さい!
それにしても、戦闘員は謎が多い。
最初整列していたのは10人程だったのに、既に30人は倒されている。
しかも倒されたはずの戦闘員、その遺体が地面に転がっていないと来た。
どんな方法で倒された戦闘員でも、ちょっと目を離した瞬間に消えている。
繰り返し言う、戦闘員は謎が多い。
「やれやれ、戦闘員ではどうにもなりませんか」
一通り倒し終わりクロが呼吸を整えていると、疲れきっている風のオジサンが話しかけてきた。
???………だれだったかな。
「ゴムゴン幹部、死神男が相手しましょう」
そうそう、こいつはゴムゴンの怪人。そして幹部。
………………って、え!? 幹部!? なんと今回の作戦は幹部が直接指揮を執っていたなんて!
いつの間にか纏っていた高襟黒マントをひるがえし、いまいち迫力に欠ける風体の死神男が戦う構えを見せた。
手に携えるは脱穀棒。唐棹だのクルリだのと名前の付いた、いわゆるフレイルと呼ばれる武器の原型。多分だけどヌンチャクの原型でもある……はず。
これを持った死神男が、ニヒル……にはちょっと遠い笑みをこぼす。
「実家に呼び出されて、手伝わされた野良仕事を思い出しますね」
中年社会人の悲哀をほのかに見せつつも、その構えは堂に入ったもので、決して油断は出来ない様だ。
「行きますよ、クロ」
両者勢いよく突進し、まさに両雄が今激突した。
~~~
未だ勝敗は決せず。
最初は長物を持つ死神男が優勢だった。
攻撃範囲の長さを活かしてクロを近寄らせず、脱穀棒の性質を利用してグルングルンまわる珍妙な棒先で翻弄する。
距離的に殴れず、蹴れず。
ならばと駆け出し距離を詰めようなど行えば、棒先グルングルンで阻止され、強引に打たれながら前進を試みれば、棹尻で突かれ押し返される。
飛び越えようとしても同じ。いやむしろ、棹尻で突かれた時の衝撃はこちらの方が大きい。
回り込もうとしたらそれこそ餌食。脱穀棒の本領発揮。 振り回して叩かれ、とても痛い。 中身が出ちゃいそうな程痛い。
ああ、いや。 中の人など居ない。 居ないったら居ない。
攻めあぐねていたクロだが、突破口は正面に有ったのだ!
悪かったのはクロである。 叩かれたくないなと怖れる心が悪かったのだ。 棒の動きに気を付け過ぎていたのが悪かった。
要は棒なのだ。 決まった軌道でグルングルン回る棒先を掴み、そして繋がっている棹も併せて掴んでしまえば、武器として使えない。
たったそれだけの事。
なお、連結部を壊すと長尺の棒になって、逆に危険となる。
そこから格闘術で戦ってきたクロが逆転、優勢。
…………とは、ならなかった。
~~~
「はははっ!よくぞ我が武器を攻略しましたね。 では次です、行きますよ!」
仕事に疲れて自宅へ帰ってきたが、妻からお使いを頼まれた感じで笑う死神男が、次の段階へ進むと宣言した。
その言葉通り脱穀棒から手を離して、クロと距離をとり動きを止めた。
何をするのか、様子を窺おうとしていたクロだが、気付いてはいけない事に気付いてしまう。
その気付きに従い、ゆっくりと身を落とす。
「今こそ魅せましょう、真の姿を!」
理不尽な上司命令を受け、ヤケッパチ感あふれる拝命の叫びっぽいものを見せた死神男。
外したマントを桃なお侍さんみたいに1度持ち、正面から見えないようバサリと翻したら、なんとその姿が変わっていた!
……変わった姿は、とてもタコタコしかった。
人みたく手足で4本、そして腰回りから垂れる様に4本。 ベルトに見える辺りに目と口。
そして全体的に赤く、よく頭と間違われるタコのふくらみ部分から覗かせる、死神男の顔。
「これぞ真の姿、デビルフィッシュだ!」
と、見栄を切ったは良いが、正面にクロが居なかった。
「どこですか! まさか、あまりの恐ろしさに逃げ出したのではないでしょうね!」
慌てて周囲を見渡すデビルフィッシュだが、まったく姿が見えない。
なぜなら、
「クロジャンピングキーーーック!!」
動きが止まった事実を勝機と見て、トドメの一撃を放ってしまっていたから。
無防備なデビルフィッシュに大きな穴を作り、そのベクトルのままスライディングして距離を稼ぐ。
「…………」
スライディングが終了し、立ち上がる。
立ち上がったら、なにやらカッコいいポーズをとるクロ。
なんか背景からボボボボボボボ!とか聞こえてきそうだが、本人の醸す空気から、充実した雰囲気が出てるし……まぁ、良いんじゃないかな!!
そのクロの後ろで「馬鹿なぁぁぁ!!」とかオジサン世代では、まずあり得ない新人の大ポカを、見てしまった感じの叫びをあげながら爆発。
信じられないほどの大きい火柱をあげている怪人が居るけど、自身に酔っているクロはなにも聞いていなかった。
コウザブロウ・クロの活躍により、今週の平和が約束された!
ありがとうクロ!頑張れクロ!
この国の平和は君の双肩にかかっている!!
……んだけど、今週の敵はとても複雑だった。 ゴムゴンによる告発が無くなると、今後は誰が浄化機能を担うのか。
とても悩ましい問題を抱えつつ、社会はそれでも回って行く。
~~~
今回は死神男周辺の言い訳。
笑って流して頂くか、そもそもここで読了として頂くかとなります。
ここで読了となる方は、読んで頂き誠にありがとうございます。
今後も読んで頂く機会がございましたら、その時は楽しんで読んで頂ければ幸せです。
死神男。
死神は○せではありません。あんな渋くて格好良いお方をパロってふざける訳にはいきませんので、別怪人であると明言します。
死神なんだから大鎌じゃないのか? と訊かれるでしょうが、そのままではつまらないので脱穀棒としました。
変身中の大技禁止だろ?
いえ、変身“直後”ですので変身中ではありません。禁忌は犯しておりません。
幹部なら爆発前は「ゴムゴンバンザーーイ!」じゃないのか?
もちろんそれを言わせたかったのですが、掟やぶりまがいの変身直後キックをされたので、そのショックが強いだろうと思いまして。
前回のコウザブロウと展開変わらんと思われた方。
同じですよ。日常パート(組織の思惑)→異変発生→異変確認→異変元凶捜索→元凶討伐→アフター。この流れの中で、異変確認と元凶討伐2つを取り上げて書いているので。
しかも基準が“マグ○が消えた日”みたいなトンデモ異変ネタですからね~。
投稿が12月23日だけど、季節ネタは……。
やりません!(血涙流しながら、魂の絶叫)