犯罪と美少女
彼女に出会ったのはもう深夜と
言ってもいい時間だった。
月明かりしかない真っ黒な農道。
いつものように会社からの帰宅中、
車通りが少ないことを理由に
ランニングしていたときだ。
はっ..
突然僕の体を
雷が落ちたかのような衝撃が
突き抜けた。
月明かりに照らされたその彼女は
真っ白なブラウスにミニスカ姿で
僕に駆け寄ってきた。
可愛すぎる。
僕の心はもうメロメロだった。
「ごめんなさい!」
「大丈夫ですか!?」
彼女が僕に近づくと....
香水だろうか...何やら甘い
香りが僕の鼻腔をくすぐる。
暗くてはっきりとは見えないが
細い体に長い髪だけは確認できた。
話し方からして育ちの良さかが
うかがえる。
僕は彼女を心配させないと、
ゆっくり片手をあげた。
「よかった!」
「本当にごめんなさい!」
「でも大丈夫そうで何よりです。」
彼女はそう呟くと僕に添えていた
手を離し、ゆっくりたちあがる。
顔をあげたことで月明かりに
照らされた表情に笑みが溢れたのが
確認できた。
「では私はこれで失礼しますね。」
彼女はそう言うと僕から
離れるように歩き出した。
運転していた高級車に乗り込み、
走り去ろうとする。
「(待ってくれ!)」
そう口に出そうとするが、
言葉にならない。
どうやら僕が思ってた以上に
僕の心と身体は彼女との出会いに
衝撃を受けていたらしい。
必死に声を出そうとするのだが、
どうしても言葉にならない。
「あ......ぅ....」
彼女が行ってしまう。
こんな運命的な出会いは生涯
二度とないはずだ。
「あ....ぁ......」
何とか名前だけでも....
いや...それよりも.....
「は...救.....急...」
ダメだ。意識が薄れてきた。
それは轢き逃げっていうんだぞ..
せめて救急車を呼べ......
その頃、彼女は
高級車を運転し急いでその場を
離れていた。
「............」
その男にもう意識はなかった。
心も身体もボロボロだった。