SDGs~ふたりが視るポテトチップス~
「SDGs?」
「そ、SDGs。」
「は、なんじゃそれ?なんかの左翼団体?オレ様の言うこと聴かんヤツは、バーンッってやつ?」
「いや、そんなんじゃないし。」
「じゃあ、なんなんだよっ。あぁわかった、あらたな宗教団体?」
「…なんでそうなる?」
ふたりの学生は帰宅中の都心モノレールに揺られながら、難しい話をしていた。
「いや、難しい話をしてるのはお前のほうだろよ。」
「突っ込むなよ。俺の方だって、つい最近ヒットして勉強し始めたんだから…」
とにかくふたりがこんな調子なのも無理はない。SDGsとはつい最近出てきた言葉で、左翼団体でも新たなる宗教団体でもない。簡単に言うと、SDGs(持続可能な開発目標)とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標を、英語表記にし、それによる頭文字をとった名前なのだ。Sustainable Development Goals=SDG…s。いくつものある目標ゴールなので、複数形の"s"をつけて『SDGs』とされる。
「いやいや、余計にわからないし。お前、小学校からやり直せよ?」
「あぁ、たぶんね。でも、学ぶならこの『SDGs』をメインに勉強したいよ。」
この、持続可能な開発目標とは限られた人による内容ではなく、すべての人に当てはまる話なのだ。
「俺たちが乗るこのモノレールのように、『大きな目標をひとつ掲げながらも、自分たちが出来る17つの世界目標の中でどれかでも達成していきましょう?』みたいなお話なんだ。それぞれ行き先は違うし、乗車駅も違うけど、ひとつの線路を使って目標を達成しましょう?ていう内容なんだ。」
「え?そのためにオレは、この話のために無理やり遠回りするモノレールに乗せられたの?」
「え?たまたまなんだけど・・」
難しい話に聴こえるかもしれないが、実はわたしたちはいつの間にか17つの目標のひとつをやり遂げようとしているのを知っているだろうか。それは何かは自分の目で確かめてほしい・・。
「いやいや、ちょっとまって!!オレにここまで話を振っておいてそれはないだろう?いや、オレにも解るような話をな、ほら、あるだろ?」
ふたりの学生は周囲の偏見顔を気にしながら、目の前に空いた座席に腰を下ろした。そして勉強したての学生が頭を抱えながら、文を組み立てて、例を出してみた。
「たとえばの話なんだけど・・。お前って、お菓子を買うよな?」
「あぁ、腹空くしな。」
「あん?えーとな、チップスか?チップスならよく食うけどな。安いやつ。高いやつもあるけど、俺たちには手が届かないぜ。」
「いただきっ!」
話を切り出した彼は、思わず微笑んだ。話を聞き込んだ相手は不満そうに、それが何か?、という顔つきで続きを催促をした。
「ようするにな、安いチップスを買うということは・・」
「あん、それで?」
「そう!安いお菓子を買うには、売るほうも何かあるよな?」
相手の顔が少し引きつったが、答えはすぐに出た。
「低コストで販売する。」
「低コストで販売するにはどうしたらいい?」
「安い油とか、ジャガイモとか?なんかそういうのとかで、頑張ってんじゃね?」
「じゃあ、ちゃんとした話を知識としてつけておくぞ。いま話をしている菓子形のほとんどは、パーム油というものが使われている。ちなみにそのパーム油は、一人当たり5kg消費をしているわけよ。」
「はぁ?それってすぐに創造に付かない話なんだけど、ていうか本当の話なわけ?」
「信じるか、信じないかは任せるけど…。じゃあ、このパーム油は世界で多く使われているわけなんだけど…どんな生産方法だと思う?」
「しらねぇよ、そんなもん。でも、一人あたりがそんなに消費してんだから、なにかしら大きな問題抱えてんじゃね。」
「なかなか、鋭いじゃん。」
「まぁな。」
ふたりは時間を経つのを忘れて、世界の問題に向き合っていった。
「要するにだ。そのパーム油は、インドネシアとマレーシアで生産している訳なんだがな・・」
「あの、地震が多い国の両国か?」
「…そう。その両国でパーム油を作っているんだが、モノカルチャー栽培のために、森林減少、生物多様性の喪失、また労働集約的な産業であるという性質上、その地域に昔から生活している地域住民との土地を巡る紛争や労働者の権利侵害など、社会的な側面からの問題などがあげられているんだぜ。」
「・・・ということは、よう」
「俺たちのたった小さな行動で、地球温暖化や生物のいのち、人権侵害を起こしているということなのか?」
「そう、そういう話につながってくるんだ。」
「で、でも、よう・・・そんなの俺一人が知ったところで世界は変わりはしねよ。それに、」
「ストップ!!」
話を聴いてくれた動揺する相手に、そっと肩に手を置いた。そしてそっとうなずき、次のことを話した。
「俺だって、判っている。これは、自分に遠い話でもあるし短すぎる話。それでもたまたま聴きに行った講演をしてくれた先生は云っていたんだよ。『まずは知るだけでも違う。』と、それは『いまのおとなたち、私たちがまず大々的に動かないといけない。いまの社会を作っているのは学生じゃないから。わたしたち大人だから。』と」
「あぁ、うん・・・」
「それにこんな話もあったんだ。『すぐ食べるときには前列から取ろう。そうすることで、期限で切れるロスも少なくなる。そうすることによって、作る側もセーブしていく。作る側の責任・使う責任。17つのひとつの目標につながる・・・』と」
「そうだな。」
「そして、『そのいま日本であるロスは、飢餓状態にある人たちを全員救えるんだ』と」
「は?そんなにヤバいのか?」
「あぁ、でも驚くのはまだ早いよ。実は、救えるのはたった数日限りのことじゃなくて、2年は食べさせてあげることが出来るらしいんだ。」
「はぁ?おい、どうなってんだよ。オレ、ここに黙って据わってらんねぇわ。」
ふたりの学生の顔はどんどん真剣になっていく。そこらじゅうでスマホをいじって真剣になっている人たちよりも、強いまなざしを持っていた。
「ということで、次が成田空港なんだな~。勉強受講料として、ロイズのチョコチップスをお願いね?」
「なんじゃそりゃ??」
こうしてふたりは、SDGsということを頭に入れつつも、自分なりの努力で世界目標の一歩へと近づけようと歩みだしたのだった――――。
「ちなみになんだけど、知ってるか?もう旬が過ぎたけど、あのPPAPのピコ太郎が動画で"SDGs"を踊っているぜ?それ観て覚えて、お前のTik Tokで彼女と配信すれば~?」
「パイナポアッポペンっ。って、いや、やんねぇし。」
「あ、そう。」
「・・・なぁ、それって・・・すぐに出てくる?」
「気になるんかい!」
※この作品は『SDGs』という言葉に引っかかりを持ってほしく書き上げました。よろしければ、お調べのうえ目標になさってください。