エントロピー
おとなって、こどもの無秩序の度合いが増大した存在なんじゃないかって思って、思いついたのがエントロピーというタイトルでした。基本的に言葉遊びです。言葉遊びとメッセージ性の兼ね合いが難しいですよね。
夏休みは不意に終わって
軽はずみな月日となって
染めた髪も決まった色に戻して
それが最後になった酷い思い出
あちこちの手付かずの宿題が
毎年の結末とうるさいな
前にもおんなじことがあったっけ
誰しもぼんやり物語ったって
長い話 聞くのは苦手だからまとめて
甘い罠に幾度間違えた? また後でね
未来のことは後で過去のことは前で
不思議に思うのはいつも言葉だけで
まるで後ろ向きに歩いてゆくみたいだね
そうして躓いて転んで痛いだけ
だからかな未来はいつだって不確かだ
見えちゃったらそれはそれで辛いから
背中を向けて歩いてゆくんだね
さっきよりほんの少し進んだぜ
きっと整然としているのは過去だけで
ちょっとだけ夏休みの最後に遊ばせて
大人にはなりたくないねと
言葉には出したくないけど
ひとつまたひとつと矛盾を孕んで
秘匿なら美徳と区分を学んで
天罰みたいな光景なら絶えない
原発被害は到底贖えない
秩序普通正しさは与えられていた
いつも苦痛な「らしさ」なら建前でした
寄りかかれた楽な正答に甘えていたいんだろ
歳重ねたはずが迷走し暴れていたいんだよ
決まってるんだ明日は昨日よりも冷たい
それならば冷め切る前に君の手に触れたい
無秩序の増大則が叫ぶ心から「原子力!」
矛盾を指摘してやるんだ子供なら元気良く
着地点も見えていないのにする跳躍
不都合な真実ならば情報をすぐ焼却
時代はいつだって崖っぷちだから
後ろ向きに歩く過去を蔑みながら
火遊びに魅せられた愚かな猿の群れが
最後の最後に辿り着く場所があるとすれば
今回は言葉遊びの回と決めて取りかかったのですが、思いのほかメッセージ性を帯びる内容となりました。韻は開幕の「夏休みは不意に終わって/軽はずみな月日となって」がハイライト。ここ褒めなかったら褒めるとこないです。「原子は物質を構成する最小単位である」って秩序と「原子は原子核と電子から成る」って秩序とがダブルスタンダードで共存できる状態が、大人になってゆくってことだと思うんですね。矛盾したルール。