ブラックライト
黒い正しさ、みたいなものがテーマです。ホワイトライの対義語、とはちょっと違うか。髪の毛の色を染めるのは規則違反だけど、生まれつき髪の茶色い個人は黒く染めないといけなくて、それは規則に載ってない。
あの日の教室
探し回る口実
やられるよりはやる側へ
目配せして歩調を合わせ
嫌いでもないあの子のこと無視をしたり
今となっては自分の行動が腑に落ちない
僕が裏切ったのは誰だい?
あの子は高校を辞めたし
入学から半年であの子が浮いたのは
ほの赤い髪の毛が目立ちすぎたのか
全然似合わなかった染めた黒い髪を
笑い合えなかったのがずっと痛いよ
きっと思い悩んで決めたこと
見えない振りした犠牲者ごと
人から嫌われるような奴じゃない
目立った少数のノイズが煩わしい
誰もが誰かの創った空気を読んで
誰も望まない総意に意見を呑んで
一人いなくなったいつもの教室には
新たな標的を探す眼差しが横溢した
誰かの役回り
知れた猿廻し
いくらでも存在する代役
持ち回りにされてる災厄
知らず知らずのうちに総意は形成されて
その行為を否定しない未必の命令だけで
みんなと少し違うだけさ
同じ仮面が似合うわけだ
髪が茶色い生徒は黒く染めなさいと
染髪を禁止しておいてそれはないよ
自分の色が絶対に正しいと思ってる?
視野の狭い狩猟動物の顔が揃ってく
軽い気持ちで下したその裁定
軽い気持ちで唾を吐いていい
やらなくちゃやられるとか何とか
子供のことが心配なお母さんもさ
自分の子供だったらどっちがいい?
加害者か被害者かを演じるお芝居
何も違わない他人なんていないだろ
逆に何も違わなかったんだ被害者も
透明のペンで書いた合い言葉でおふざけ
本当は読めずに聞き耳を立てた僕だって
無作為に標本の中から選ばれて
見えない紫色の光に照らされて
粗悪な偽物を見破るための印がさ
僕には施されてないと気付いたら
友達はみんなで掌を返して
みんながみんなの真似して
だってみんなやってるからって
自分の答えは合ってるかなって
目配りして手を染めて
演じるけどでもそれで
粗悪な偽物を見破るための印がさ
君にも施されてないと気付いたら
友達はみんなで掌を返して
みんながみんなの真似して……
さあブラックライトを掻い潜れよ
狩猟動物を演じる日々が退屈でも
この目が黒いうちはなんて白い目で
誰を敵に回すのも怖くて見といてね
今回は韻を踏むことにあまり重きを置きませんでした。それでも六十行に渡って脚韻を踏み続けてるんだから病的ですよね。韻は踏まないと気が済まないけど、それだとどうしても言いたいことが直球で表現できなくて。直球が気恥ずかしくてこのスタイルなんですけど。染めるのは悪いことだけど黒くないのはもっと良くないっていう、この種のダブルスタンダードが、それも慣習法的に当然のように運用されている世界。どうなのよ。