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第０話～プロローグ～

　皆様は、リセットマラソン（通称：リセマラ）という言葉をご存知だろうか。

　ゲームアプリを何度も繰り返しリセットすることで、一定確率でアイテム等が当選するくじ引き、いわゆるガチャガチャ（略称：ガチャ）を引き直しし、欲しいアイテムやキャラクターを手に入れる方法である。

　課金（現実世界のお金を支払い、ゲーム内ガチャを引くためのアイテム等を購入する行為）を行えば、そもそもこのような行為を行う必要はないが、何も気にせず、ポンッ（コマ○ドー感）とゲームへ投資できる人間は少なく、苦労してでもお金を節約したいという人間の性《さが》がリセマラという手法を編み出したのだ。

　リセマラの具体的なやり方は、各ゲームによって異なるが、一般的には・・・

『ゲームダウンロード→チュートリアルの完了→ガチャ引く→お目当てが出ればリセマラ終了、出なければゲームデータ削除→始めに戻る』という流れになる。

　お目当ての排出確率が低いと10回、20回・・・とリセマラを行う羽目になり、この苦行はゲームをしているにも関わらず、某魔法少女《ほむほむ》も体験したであろう絶望をタイムリープしているかの様にプレイヤーへ錯覚させ、リセマラが辛過ぎてそもそもゲームを始める前にゲームをやめていた、なんてことは粗《ざら》なのだ。

　この物語の主人公である俺氏は、その苦行を趣味とし、リセマラのプロと呼ばれ（自分で呼称しているだけなのだが）、そして何故かこのあと異世界へ転生してしまう一風変わった25歳のニートなわけだ。

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　スマホゲームアプリ、ワールドコレクション（通称：ワルコレ）のサービスが開始して半月が過ぎようとしていた。

　某掲示板にて

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　１　以下、コロンビアでVIPがお送りします

　　　---気に入った娘《コ》と世界を創造しませんか？君と共に創るSLGワールドコレクション---

　　　公式HP→http://www.○○○○○.xxxxx・・・

　　　ワルコレ本サービス開始したけど、ガチャ確率えげつない件についてｗｗｗ

　２　以下、コロンビアでVIPがお送りします

　　　ベータ版からやってるが、まるで恩恵ないわ

　　　てか、SSR出た奴いんの？

　３　以下、コロンビアでVIPがお送りします

　　　＞＞１　乙

　　　SR 1％、SSR 0.1％とか、運営も搾取する気満々だよな

　　　物売るってレベルじゃねーぞ・・・

　４　以下、コロンビアでVIPがお送りします

　　　早速、リセマラやっているが１回あたり１時間近くかかるわ

　　　しかも、チュートリアル終わってもガチャ２回しかまわせんぞｗｗｗ

　　　せめて１０連にしとけ＞＞ｋｓ運営

　５　以下、コロンビアでVIPがお送りします

　　　＞＞４　それな

　　　ん？排出確率なんかおかしくね？

　　　N 68.46％　NR 20.28％　R 10.15％　SR 1％　SSR　0.1％

　　　0.01％足りないんだが

　６　以下、コロンビアでVIPがお送りします

　　　＞＞５

　　　どうせ、四捨五入の関係だろ

　　　カード１枚１枚に確率が設定されていると表示の関係上、そうなることがたまにある

　　　あ、ちなみに俺はリセマラしないで無料でSSRゲットできたけどね。

　　　無料でワルコレガチャ10連を10回、計100回引く方法→http://××××××.○○○○○.87646・・・

　　　俺も嘘かと思ったが、やってみたら本当にできたｗｗｗｗ

　　　登録も個人情報の入力も一切不要で安心してやれるし、指定されたことを10分程度やっただけ。

　　　まじオススメ

　７　以下、コロンビアでVIPがお送りします

　　　＞＞６　釣乙

　　　今時、こんなのに騙される奴いんのか

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　「どいつもこいつも分かっちゃいねーよ。低確率上等！リセマラの数だけ強くなれるよ・・・じゃなかった、当たった時の快感はたまんねぇ。」

　掲示板を映したPC画面を見つめ、独り言ついでにニタリと俺は笑う。

　机の上のリセマラ専用タブレット（６台）とPC画面を交互に操作しながら、今日も今日とてリセマラ真っ最中なわけだ。

　「さて、記念すべき１万回目のガチャ排出だ。まぁ正確には、9,997回目～10,006回目の10連ガチャなんだがな！この時点でのSSR確率は約63.2%・・・いけるっ！よし・・・乱数調整完了・・・よろしくおねがいしますっ！」

　勢い良くエンターキーならぬ10連ガチャボタンを押す様は、さながらサ○ーウォーズであるのだが、なんの取り柄もないこの男に確率の神様は微笑んだ。いや、微笑んだのか？

「！？　キターーーーー！！！レインボー枠！SSR確定演出キタコレｗｗｗｗ遂にリセマラ終了かぁああ！ウヒョォォォオオオ！！！」

　近所迷惑という単語自体、知らぬと言うほどに奇声を発するその様は、キモいの一言に尽きる。

　ただ彼には、胸の内側から込み上げてくる、これまで経験したことの無い最上級の快感を抑制することができないのだ。

　あと、補足説明ではあるが、ゲームのガチャによって希少価値の高いアイテム等が排出される場合、固有の演出が描写されることが多い。ワルコレも例に漏れず、最高レア度のSSRカードが排出される際は、カードの枠が虹色に光るという専用演出が設定されている。

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　カード名：世界改変-ワールドオルタレイション-

　そこには、地球の様な惑星が両手で支えられた絵のみが描かれた、正直SSRカードにしては何とも殺風景なものが表示されていた。

「こんなカード・・・排出一覧にあったっけ？それに・・・なんか、意識がもうろうとしｔ・・・」

　突如、意識だけがスーっと体から抜けていく様な感覚に襲われる。

　スマホゲームのガチャを引いただけの彼であったが、座っていた椅子から崩れ落ちるようにバタリと倒れてしまったのだ。

　薄れゆく意識の中、遠くでシステマチックな女性の声がする。

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---・・・ではこれより、転生プログラム実行します。記憶の複写、言語の解析、身体能力の確認・・・どの能力も呆れるほどに低いですね・・・。っ！？神様《マスター》、この男のパラメーターは異常です。こちらの値を見てください。どうしますか、一度初期化して存在そのものを再構築しますか？---

　何やら異常事態が発生したらしい。毒舌なその声からは、明らかな動揺が感じ取れる。

　そして、もう１人いたらしい。神様《マスター》と呼ばれたその男は、一時、思案した後、楽観的にシステマチックな声に答える。

「ふむぅ・・・まぁ、不本意ではあるが、このまま転生させちまえばいいんじゃないかのぅ。曲がりなりにもコチラ側に選ばれた素質ある者じゃ。この意味不明なパラメーターにも何か意味があるんじゃろう・・・多分。しかし、不憫《ふびん》な奴よのぅ。まさかこんな形で転生されてしまうとは・・・。」

---了解いたしました、神様《マスター》。転生を行います。生前の記憶を転生体へ移譲、新言語の追加、そして身体能力については、例の異常数字以外は一般村人にも劣るゴミの様な数値のため、筋力（STR）、器用（DEX）、体質（INT）、運（LUK）、機敏（CON）、体力（HP）、魔力（MP）を一般村人と同等に設定します。---

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　俺の体は、まるでSSR確定演出のごとく、虹色に包まれ・・・そして転生した。

　いや、タイトル回収するなら、転生しますた。