禁忌
やっとこさ更新……しかも派手な戦闘が無い……。
所属不明機の接近、つまりそれはこの宙域が戦場になることを意味していた。
「少尉!軍曹!おままごとは終わりだ、至急帰投しろ!」
隊長であるドラザの声が無線で聞こえてくる。
ナトカは了解と言いガイへ呼び掛けた。
「軍曹、聞こえたな?帰投するぞ」
呼び掛けるが、反応が無い。
「どうしたケイコウ軍曹!帰投するぞ!」
コックピットの様子をモニターに表示するとガイはコックピットでうずくまって震えていた。
「二人共何をやっている!早くそこから離脱しろ!」
ドラザが無線越しに怒鳴る。
ここは状況を説明する必要があった。
「ケイコウ軍曹が仕掛けた機雷に囲まれております、レーダーを妨害するNJCタイプの機雷ですがケイコウ軍曹の乗機であるレントではもし触雷した場合に無事だという保証がなく、ケイコウ軍曹は現在恐慌状態に陥っています」
この機雷は模擬戦用のダミーではなく本物だということは分かっている、NJC機雷にダミーは存在していないからだ。
「何とかしてみろ……としか言えん」
「やってみます」
ドラザの無茶ともいえる命令にナトカは答えると、同時に両前腕部に内蔵された150mm砲を後ろに機雷が存在しているデブリに向けた。
「どうやら整備ミスにより本機には実弾が搭載されたままのようです」
「何!?」
姿さえ見えればペイント弾でも機雷を爆発させて撤退するための道を開けるが、ガイはナトカからは見えない位置に機雷を置いた。
だったらデブリごと破壊すればいい。
「ならばやれ!」
ナトカはドラザが言い終わる前に発砲した。
放たれた弾は外すわけもなく命中し、デブリは破壊され後ろに設置された機雷も同時に爆発した。
ちょうどSD一機が通れる隙間ができ、ルートを確保したナトカはガイへと通信を入れた。
「軍曹、今から撤退するために開けた退路のデータを送る、そのデータ通りに進んでここから撤退しろ」
「りょ……了解!」
帰投できる事に喜びを隠さずに返事をしたガイはフットペダルを踏んでバーニアを吹かせ、その退路へと飛び込んだ。
ペイント弾のみで勝つつもりだったのとこういう事があるやもと考えナトカはコクツに内蔵武器へ実弾を積ませたのだがガイにとってはどうでもよかった。
(私も離脱するか)
そう考えほとんどその場から動いていなかった自分の機体を動かそうとした時、アラートが鳴った。
(高熱源体が急速接近中?)
ナトカが反応した瞬間、離脱しようとしていたガイの搭乗しているレントが「光」に撃ち抜かれて爆散した。
「ケイコウ軍曹!」
返事を求めたが返ってくるのはノイズだけだった。
それはSDの速さではなく、弾丸よりもさらに速くこちらに接近していた。
まだモニターに映っていないこの距離での攻撃、それが可能な兵器は一つだけあった。
(まさか……ビーム兵器!?)
禁止兵器
それは製造、所持、及び使用が禁止されている兵器とそれに相当するものの総称である。
その中には火力が強すぎるという理由で禁止となった分子を振動させることにより生み出されるエネルギーを使った兵器、ビーム兵器の存在があった。
「今そちらに向かっているが何が起きた!軍曹はどうなった!」
「ケイコウ軍曹はビーム兵器と思われるものに墜とされました、生存は絶望的かと」
ドラザの無線に事実だけを伝えた、今は感傷に浸っている場合ではない。
「ビーム兵器だと!?」
「ここは私一人で対処します、この状況では的になるだけです。艦長、敵の数はどれ程のものでしょうか?」
こちらの射程圏外から一方的に撃たれたこの状況、万が一にでも被害をこれ以上増やすのは得策ではない。
ここは単機行動が最も被害を抑える事ができる。
「敵はこちらから見て十時の方向から四機そちらへ接近しています、三機がGL-06ニザツ、もう一機は不明ですがおそらくその機体にビーム兵器が搭載されているのでしょう。ドラザ大尉は帰還して下さい」
これ以上被害を大きくするわけにはいかない。
リュウホはナトカに敵SDの情報を伝えドラザに帰還を命じた。
「了解、頼んだぞ少尉!」
ドラザもナトカに後を頼んだ。
普通狙われた際は動き回るか隠れるのが基本である。
しかしナトカは動かなかった。
こちらのモニターでは確認できない距離からの狙撃、最新機であるMR-01より優れているとはいえない以上相手はレーダーを頼りに狙撃をしたと考えられる。
しかし周りにはレーダーを誤認させる機雷がまだまだ設置されている。
撃墜される瞬間ガイは機体を動かせていた、だから狙われたのだ
つまり止まってさえいれば相手からすればどれが本物なのか分からない。
苛立ちをおぼえたのか相手はビームによる狙撃を始めた。
一定間隔置きに発射されたビームは機雷へと的確に命中していったが、当たる角度から来るか否かは分かるためナトカは機体を動かさなかった。
やがてビームが来なくなり、敵機が三機こちらのモニターに映った。
砲身の短いMR-01の武装では以前のように敵の射程圏外から攻撃するというのは不可能だ。
(近接戦か)
両肩にシールドを装備し小さいバックパックに大きなプロペラントタンクを取り付けた黒いボディの赤い単眼、今度のGL-06ニザツは外見に変更点は無かった。
装備している武器はいずれも以前GL-05ワンデが装備していた100mmマシンガン。
(こちらの位置は知られてしまうが仕方がない)
自分より敵の射程が短いという事はそれ相応に近づかれる、ナトカのいる位置が分かれば相手は何処へ狙撃すればいいか味方の報告で分かってしまう。
(避ける事はできる以上まずは目の前の敵を殲滅する!)
ナトカはまずは一機に向けて照準を合わせると同時に発砲し、命中させてスクラップに変えた。
もう一機へ照準を合わせるとその敵機はデブリへと隠れた。
が、この機体の固定武装である150mm砲は大きさにこそよるがデブリを破壊できる。
右腕と左腕で時間差をつけて撃つことでデブリを破壊しつつ敵機を火球へと変えた。
装甲の厚さと高い出力からくるパワーにより扱うことのできる弾頭が変わっており、以前よりも火力が大幅に上がっているからこそできる芸当だった。
(あと一機……!)
しかしあと一機が見当たらない。
「紛れたか?」
周囲にはまだNJC機雷が残っている、ガイは敵機として機雷を設定していたため紛れることができたのだ。
このままでは位置を伝えられ続ける。
(まあ意味など無いか)
ナトカはさっきまで反応の無かった場所、すなわち機雷が無かった場所へと発砲した。
だが相手も読んでいたらしくそこから飛び出してマシンガンを撃ちながら突撃してきた。
隊長機を示すブレードアンテナがついているということは多少は腕が立つらしい。
(隊長機ならば情報を持っているだろうな)
ナトカは最小限の動きで弾をかわしながらわざと接近させた。
相手はマシンガンを捨て斧を両手で構えてナトカの機体へと降り下ろした。
しかしMR-01の装甲には傷が少しついただけであり、ナトカはペイント弾で敵機の頭部カメラを塗り潰すことで視界を奪った。
ここでナトカは敵機に向かって通信を入れた。
「聞こえるか、5.82だ」
掴み掛かってきたSDの手を掴み返して握り潰しながらこちらと通信をするよう呼び掛ける。
しかし静寂しか返ってこない。
どうやら黙秘を貫くつもりをしているらしい。
(仕方がない、機体はそのままに)
ナトカはニードルピックを機体の右手に持たせた。
(パイロットには死んでもらう)
コックピットを一突きする。
人の悲鳴と潰れる音がしてノイズが聞こえてくるが気にしていては兵士は務まらない。
これでこの機体から情報を抜き取れそうだ。
まあ自爆されなければなのだが。
(!、来たか)
痺れを切らせたのか詳細不明だった残りの一機がこちらのモニターに映し出された。
「おい、女……お前相当強いな」
どうやら周波数がこの敵機にも伝わったらしい。
「俺の狙撃を全部かわしやがって……俺のプライドはズタズタだ、だから」
その機体は全身を黒とグレーで染められており、背中には一対の翼状のバインダーがあった。
「セブンスの一機であるこの機体、フェクダでお前をぶっ殺す!」
GL-06ニザツの見た目は
ザ○II+ヅ○+シナ○ジュ÷3
ジーク・ジ○ン!
フェクダの見た目は
バトル○ンバー+俺☆ベ○ター
もはやロボットですらねぇのがいる!
\変な奴がいるぞ!/