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プロローグ、そして愚痴

大幅に加筆修正して再投稿しました。

趣味全開ですが生暖かい目で見守ってください。

 火星周辺宙域

「こちらの停船信号に応じません、速度を上げながら所属不明艦なおも航行中。どうやらこのままこの艦を振り切るつもりのようです、艦長」

「了解、総員、第二戦闘配備から第一戦闘配備へ」

 オペレーターから伝えられた状況に艦長は席に座りながら少しも考える時間を感じさせず指示を出した。

「ブリッジ、格納します!」

 先程とは別のオペレーターが告げる。

 ブリッジが格納されるのを確認した艦長は直ぐ様次の指示を出した。

「SD部隊、直ちに発艦、所属不明艦を足止め及び無力化してください」

 SD(スペースドール)、人型兵器の略称である。

 何を積んでいるのか分からない以上下手に沈めるのはまずい、条約による禁止兵器という可能性もある。


「艦長の命令だ!敵艦は沈めるなよ!」

 SD部隊隊長ドラザ大尉が確認させるように言う。

 SDの格納庫では新米パイロットと整備士との間で怒号が飛び交っていた。

「とっとと武器をSDに持たせろ!」

「だったら早く武器を寄越せ!」

 再編成されたばかりの部隊というのもあるが、基本的に平和だからこそこういった事が起きるのだ。

「お前らもたついとる場合か!」

 ドラザ大尉が怒鳴る。


(怒鳴り声はいつ聞いても嫌なものだな)

 無線越しにいまだ慣れない隊長の怒鳴り声を聞きながらナトカ・ナルサ少尉はカタパルトまで機体を移動させていた。

 彼女の機体は整備士との連携により既に万全であり、機体の性質上最も早く出撃する必要があった。

「ナルサ機、発艦どうぞ!」

 発艦を許可する青いランプがカタパルトの隅で点灯すると同時にオペレーターの声が聞こえた。

 十五メートルある機体の姿勢を低くし、発艦する際の衝撃に耐える。

「ナルサ機、レント・リメイク、出撃する!」

 衝撃を受けながらナトカは愛機と共に発艦した。


 パイロットの生体電流に反応して動くSDに複雑な事は要求されない、ただ戦えるかどうかが重要になる。

 臆病者では生き残れない、逆を言えば勇猛果敢な者ほど重宝される。


「所属不明艦、高熱源体を射出。数は二、いや三!急速に近づく!」

「やはりSDを所持していましたか」

 オペレーターからの報告に艦長は特に驚く事はなかった。

「所属不明艦から発艦したSDは撃墜しても構いません」

 彼女にとってこの程度は予想の範囲内、直ぐ様指示を出した。

「敵SDは囮ですが見過ごすわけにはいきません、少尉は先行して敵SDを撃破しつつこの宙域を離脱しようとする所属不明艦の足止めをお願いします」

「了解!ナルサ機、突貫します!」

 ナトカはペダルを踏み、バーニアを吹かせた。


 ガードナー第七部隊所属哨戒艦アガノ級巡洋艦ヤハギ

 ナトカが配属されている部隊の軍艦である。

 彼女の愛機、GD-97Rレント・リメイクはこの艦に搭載されているSDの中で最も機動力が高い。

 故に現在先行して敵SD及び所属不明艦を叩きにいっている。

 敵SDは既に旧式のGL-05ワンデが二機、そしてまだモニターにデータは映らないがもう一機。

 モニターに映った情報では先行してきた二機のワンデには100mmマシンガンが握られていた。

 型落ちもいいとこだがさすがに何十発も被弾すれば只ではすまない。

(油断はならないか)

 ナトカは両腕部に付けられている150mm機関砲を向け、敵の射程圏外から発砲した。

 四発撃った弾丸は正確に敵に命中し、二機を火球へと変える。

 それと同時に最後の一機の情報がモニターに表示された。

(あと一機……確実に墜とす!)


「ナルサ少尉!そっちはどうだ!こっちはもうじきそっちに着く!」

 ここで隊長であるドラザ大尉から通信がきた。

「あと一機です、私は敵艦の方へ向かいます。」

 モニターで敵機の詳細を確認しながら報告するナトカ。

 敵はワンデの次世代機であるGL-06ニザツ。

 やはり旧式ではあったが大きく改修されているのかその姿は大きく変わっていた。

(強敵か……?しかし!)

 ここは敵艦を抑える事が先決だと判断したナトカは敵機を無視し、バーニアを吹かせた。


 しかしナトカの機体が敵艦へ向かう事はなかった。

「!?、これは……ワイヤートラップ!?」

 どうやら残りの敵機が遅れていたのは罠を張っていたかららしい。

 ワイヤーはがんじがらめとなってナトカの機体を拘束した、近くのデブリに仕掛けてあったようだ。

(この先はデブリ帯か……)

「どうした少尉!」

「ワイヤートラップに引っ掛かりました」

 周囲の状況を確認しつつ隊長からの通信に事実のみを伝える。

「あと三十、いや二十秒耐えろ!」

 隊長がもう間もなくやってくるがその間にも敵機は(トマホーク)を構えて確実にこちらを墜とそうと接近している。

 間に合わない。


「仕方がない、リミッター……解除!」


 相手が斧を振りかぶった瞬間、ナトカの機体はワイヤーの拘束を力任せに引きちぎり敵機の背後に回っていた。

「コロニーを牽引できる程の強度だぞ!?」と、相手が驚愕しているのが見てとれる。

 一時的に増設されたバッテリーの出力を上げ、機体性能を上昇させる奥の手だ。

 ナトカは機体の左右の腰部に取り付けられた近接戦闘用装備、ニードルピックを両手で構えてこちらに向けられた敵機の頭部を左手に持ったニードルピックで突き潰した。

「がっ……!」

 接触回線により敵機から声が聞こえたが気にも留めない。

 そのまま胴体のコックピットを右手に持ったもう一本のニードルピックで突く。

 少しの悲鳴とノイズが聞こえ、敵機は沈黙した。


(次!)

 しかし敵艦はデブリ帯である遥か遠方まで離脱していた。

 さらに

「機体が動かない?」

 無理な力を出させたからか彼女の機体はへそを曲げてしまったらしい。


「申し訳ございません!」

 自分に非があると感じたナトカは格納庫にやって来た艦長に頭を下げ、謝罪した。

「あなたに非はありませんしあったとしても責めはしません、その時間がもったいないので。それよりも無事に帰還してくれて何よりです」

 艦長は冷静に、しかし暖かく答えた。


 あの後ナトカと彼女の機体は直後に到着した隊長に回収され、今に至る。

 敵艦を足止め、無力化するという作戦は失敗であり、敵SDも自爆したため得られるものはなかった。

「報告によると機体が動かなくなったと」

「はい、どうやら一度艦内ではなくドックにてオーバーホールをする必要があるとのことです」

 つまりその間ナトカの乗る機体が無いということになる。

 現在すぐに動かす事のできるこの艦の搭載SDはナトカの機体を抜いて三機、それに対してパイロットは四人と空きは無い。


 しかしこの艦には調整さえしてしまえば戦闘に参加させる事のできる機体が一機あった。

 元々艦長はその機体をみるために格納庫まで来たのだ。

「ナルサ少尉、こちらへ」


「……」

「どうかしましたか、ナルサ少尉」

 艦の格納庫で自分に支給されたSDの詳細データを見て、絶句しているナトカに艦長が尋ねる。

「!、し、失礼いたしました、何でもありません」

 少尉の態度は特に気にならなかったのか艦長は冷静沈着そのものといった表情を向けて続けた。

「私はこの機体のパイロットにあなたを選びました、その意味は理解していますね?」

「はっ!最善を尽くします」

 表情と姿勢は取り繕う事に成功したがその内心は彼女にとって不安の一言だった。


 人類が宇宙にまで生活圏を広げてからおよそ四世紀、その間に西暦は終わりを迎えた。

 Separation Century、通称SCと暦はその名を変え

 宇宙の人間は地球と

 地球の人間は宇宙と

 完全に別れてしまった。

 分かれるにあたって当然争いも起きたがそれも昔の話、SC暦二百四十五年現在、完全に別れてしまった今ではお互い興味も無い。


 だからといって兵器が不必要になったわけではない。

 スペースドール、通称SD

 宇宙という環境で人は力を欲した、そしてそれに対して当時民間企業であったイカズチ社が開発した物である。

 全身に小型の姿勢制御スラスターを付け、生体電流により思いのままに動かす事のできる人型兵器、SDは力を欲する人間達の間で瞬く間に普及していった。


 宇宙の人間はあるものは円筒状のコロニーで、あるものは船で、生活している。

 人々全てが力を持っているわけではない。

 そういった人々ができる事を予期し、宇宙政府は軍隊として治安維持部隊、「ガードナー」を設立した。


(やはり私のミスが原因か?)

 自分の配属されている艦の格納庫でナトカは無重力の中で腕を組んで浮かびながら自分へ新たに支給されたSDに対して疑問を持ち続けていた。

 ナトカ・ナルサ少尉

 今年二十三になる彼女は軍学校を女性の身でありながら優秀な成績で卒業し、四年前ガードナーに入隊した。

 ガードナーで彼女は己の未熟さを自覚し、鍛え上げ、今はガードナー第七部隊所属哨戒艦アガノ級巡洋艦ヤハギのSD部隊に所属している。

 本来ならば彼女は少尉という階級で収まりはしないのだが自分はまだ未熟だと昇進の話を蹴り続けている。

 茶色い長髪をなびかせながらそのストイックな姿勢を貫いている彼女に憧れを抱く者もいると聞く。


「この機体とも少しの間お別れか」

 ナトカは自分が今まで乗っていた機体の胸部に座って手を置きポツリと呟いた。

 GD-97Rレント・リメイク

 ガードナーに現在配備されている量産型SDであるGD-97レントを文字通りリメイクした機体である。

 Yの形をしたモノアイレールをゴーグル状のセンサーで覆い、火力と防御力をスラスターの邪魔にならない範囲で取り付けたハードポイントによる拡張性で伸ばす、というコンセプトだったGD-97レントに動力であるバッテリーと推進剤が詰め込まれているタンクを背中に増設して戦闘継続能力を伸ばし、そのぶん上がったパワーによる操縦のしにくさを技量だけで補うという無茶苦茶な改造が施されている。


 二日ほど前、部隊の再編成が行われた。

 軍縮が進んでいる今そう珍しい事では無い、実際ナトカ自身も左遷こそ無かったが再編成自体は初めてではない。

 そしてその際、一機のSDがこのヤハギに配備された。

 それがこの機体、MR-01である。

 今、ナトカの愛機であるレント・リメイクはオーバーホールが必要なほどガタがきている。

「もしや、いやだからこそ私なのか……」


 別にナトカは支給された事が納得できないわけではない、むしろ最新のSDを任せられるというのは名誉な事だ。

 問題は……

「ナトカ少尉殿!何か悩み事でありますか?」

 明日にはオーバーホールのために一度この艦を離れる自分の愛機の隣で整備士達がMR-01の整備しているところを座ったまま眺めていると整備士の内の一人がナトカの方へやって来た。

「コクツ軍曹か、いつもすまない、しかしいいのか?」

 コクツ軍曹は今MR-01の整備についていたはずである。

「整備士はパイロットの事も考えなければ一流にはなれないとの事であります」

「リイヨ整備長の言葉か、確かにその通りだな……隣に座れ、愚痴を聞いてもらうぞ」

「はいであります!」



 コクツ・テシマエ軍曹は二年ほど前からナトカと付き合いのある整備士である。

 彼の年齢は二十五歳、身長は百六十五センチのナトカを越える百九十センチ、短く切った黒髪に人の良さそうな顔をしている。

 ナトカとはなにかと縁があり、整備の腕は確かなためナトカ自身も頼りにしている。


「少尉殿は一体何をお悩みで?」

 右隣に座ったコクツが改めて聞いてくる。

「今日私に支給されたSDのことだ」

 呆れるようにナトカは言った。

「ムアルの事でありますか?」

「ムアル?」

 何だそれはといった表情を浮かべるナトカ。

「MR-01の事であります、既に整備班の間ではそう呼ばれているであります」

「名付け親は」

「自分であります」

「だと思った」

 ナトカはそのままではないかと苦笑気味に笑った。

 コクツの天然は他者への影響力が強い。

「話を戻そう、SDの動力であるバッテリーを四つ直結させることで高い出力を生み出し重装甲を動かす、ここまではいい、こいつもそういう機体だからな」

 自分が今座っている愛機を少し穏やかな顔をして撫でながらナトカは言う。

「しかしだ」

 途端にナトカの顔が険しくなる。

「重装甲に重点を置きすぎて推進剤を入れるスペースが少なすぎる、さらにスラスター自体がその重装甲を補うために出力を上げている、これでは推進剤があっという間になくなり動けなくなる」

 宇宙の戦場で推進剤が切れる事は的になる事を意味し、同時に死を意味していた。

「装甲の内側を削り推進剤を入れる事で何とかなるかと思ったが同時に装甲も薄くなる、そしてその装甲の内側にある推進剤に引火すれば」

「内側から爆発……でありますな」

「その通りだ」

 ナトカは左手を頭に当ててため息をついた。


「すまないな、愚痴を聞いてもらって」

 ナトカは軽く自分の愛機を押して座っていた場所から離れた。

「今さら水くさいであります、少尉殿の愚痴ならまたいつでも聞くでありますよ」

 立ち上がり、右手を上げて言うコクツ。

「そうだな、また飲みに行こう、私の奢りだ」

 その言葉を聞いた瞬間コクツの顔が青くなる

「そ、それは勘弁であります……」

 コクツの声は通路に入ったナトカの背中には届かなかった。

「OPのラン○マン・ロディ格好良すぎねぇ?」

という考えから書きました、ぐだぐだで短い間ですがどうぞよろしくお願いします。

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