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天然少女と平凡王子と素材の願い  作者: 一丸一
第2章〖魔狩りの爪〗
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第61話

今後、前書きや後書きで世界観等の設定について簡単に説明していこうと思います。話しの流れで説明が前後する可能性が大いにありますが、どうかご容赦ください。


一週間→1~9までの9日間 平日や休日は明確に定められておらず、町村もしくは個人で生活リズムを形成している。

 ひだまりの中でのんびりと薬草を煎じ、難無く三種類の薬液とすり潰された結合砂の準備が整い、後はそれぞれの材料を依頼された分量に合わせて混ぜ合わせるだけだ。消毒液ならばクラッツ草とオンスメ草の薬液を、抗アレルギー剤ならばクラッツ草とゲネゼン草をしっかりと混ぜ合わせてから瓶に詰めれば完成なのだが、シルフィアは更に一手間加える。薬液の入った瓶を精錬して保存性を上げ、完成した薬品は布袋に入れる。ちなみにこの布袋はテレシアが「部屋の中だと場所が足りない」と言ってステインから奪って来た物であり、ステインの足元には布袋から出された素材が転がっている。


 依頼されていた薬品はもう一種類、整腸剤が残っており、これもゲネゼン草と結合砂を混ぜ合わせるのだが、他の二種類と違って半固形になる。固めること自体は結合砂を混ぜれば良いのだが、均一に固める必要があるため、あまり多量に混ぜ合わせるとムラが出てしまう。依頼品の中で最も量が多いのに一度に混ぜ合わせられないという不便さに対し、シルフィアは嫌な顔一つせず三角形のガラス容器とガラス棒を二組取り出した。


「テレシア、お手伝いお願いしてもいいかな?」


「ほい、なになに?」


 結合砂をすり終えてからは暇を持て余し、シルフィアの調合している姿を眺めていたので、役割が与えられるならば喜んで引き受ける。


「一緒に整腸剤を作ってほしいの。作り方はこの容器に薬液と結合砂をいれて棒で混ぜるだけなんだけど、最初は混ぜ終えた後で固さを確認させてね」


「ん、わかった」


 テレシアが頷きを返すと、シルフィアは礼を言って容器に薬液と結合砂を入れてから棒と一緒に渡す。


「混ぜ方に決まりはないけど、あんまり激しくすると中々固まらないことがあるから、それだけ気を付けて」


「これぐらい?」

 

 カチャカチャと音を立てながら混ぜている様子を見せる。


「うん、丁度良い感じ」


 テレシアの問いに笑顔で答えてからシルフィアも混ぜ合わせを開始する。二つ分のカチャカチャ音が時に重なり、時に交互に鳴り、少しするとテレシアが棒から伝わる抵抗が大きくなった事に気付く。


「シルフィア、固まってきたみたいだけど、どうだ?」


「どれどれ、貸して」


 シルフィアは自身が手にしていた容器をテーブルの上に置き、テレシアの容器を受け取ってから中身を確認するように軽く混ぜてみる。


「時々水っぽいところがあるからもう少しかな。しばらく混ぜてみて水っぽい感触がなくなったらまた教えて」


「りょうかーい」


 テレシアが容器を受け取ると室内にカチャカチャ音が蘇る。


「霊山に住んでた頃はこれを毎日やってたのか?」


 混ぜ合わせている間、話しを禁じられている訳ではないのでテレシアは何気ない質問を投げ掛けた。


「毎日ってわけじゃないけど、薬の調合と精錬は頻繁に依頼が来てたかな」


「あたしだったら一週間で飽きる自信あるな」


「そう?素材の組み合わせとか分量とかで出来も変わってくるから結構飽きないよ」


「そういうもんかなぁ……あ、これぐらいでどうだ?」


 どこを混ぜても均一の感触になったところで再度点検を頼む。容器を受け取ったシルフィアは調べる様に棒を回してから満足気に頷いた。


「うん、これなら大丈夫だよ。中身はこっちの瓶に入れてね」


 容器よりも一回り大きい瓶をポーチから取り出してテーブルの上に置く。テレシアは容器から棒を取り出して中身を瓶へ移す。緩めの半固体は容器の底や側面に張り付くことなく一塊に瓶の中に落ちて行った。


「はい、次の分量を入れるからこっちも瓶に移して」


 混ぜ終えた容器と空いた容器を交換し、空いた容器に薬液と結合砂を入れてカチャカチャを再開すると、今度はシルフィアから口を開いた。


「さっきの話しの続きだけど、わたしも一人だったら精錬とか調合を長く続けられないかも……」


「んー?」


「家にいた時はクヨーラやばあちゃんがいつも一緒にいたし、時々エトや村の皆が会いに来て、わたしからも会いに行った。精錬が上手くいかなくて落ち込んだ時でも、誰かと一緒にいると、この人達の為に頑張ろうって気になるの。だからきっと、わたしは楽しくて精錬や調合をやっているんじゃなくて、誰かと一緒に笑顔でいたいから精錬や調合を続けているんだと思う」


 容器の中で波打つ薬液に視線を集中させながらはにかむシルフィアを見て、テレシアは一瞬だけ手を止め湧き上がって来る感情を抑える。


「健気すぎ……後で抱き締めさせて」


「ふふっ……良いよ。わたしもテレシアと一緒に調合ができて幸せだから」


「あっ、ちょっ……そんな顔向けないで!惚れちゃう!」


 シルフィアも面と向かって自らの幸福を口にするのが恥ずかしいのだろう、頬を少し赤らめつつ喜色を示す。心の準備もなく彼女の正直な気持ちを伝えられ、テレシアは思わずそっぽを向いてしまう。


「えへへ……ちょっぴり恥ずかしいや」


「あたしの方が恥ずかしいよ!っていうか今みたいなことご主人様には絶対言うなよ!変な気起こされても面倒だから!」


 テレシアが言い切ると同時に部屋のドアが開けられ、現れたのは室内に突発的な熱暴走が発生している事を知らぬステインだった。


「僕がどうかした?」


「うわっ!急に入って来んなよ!」


「ごめん。ノックしたら僕の事を話している様子だったから開けさせてもらったよ」


「あっそ、それで錬金術サボってまで何の用?」


 シルフィアとの会話で上がった熱を上手く処理できず妙に刺々しい言い方になってしまうが、ステインは特に気にせず「それが」と言って首を後ろへ向けながら体を横にずらした。


「よっす!シルフィア、ねーちゃん、元気してた!?」


 ステインの後ろから現れた少年は所々ハネた茶色の短髪を元気に揺らしながら片手を上げて挨拶した。


「エト!?どうしたの!?」


 少年の姿を見たシルフィアは思わず調合の手を止めて歩み寄る。その表情は驚愕の中にも再開の嬉しさが滲み出ていた。


「どうしたのって、シルフィアが呼んだんだろ。木材が必要だって」


「う、うん。それはそうなんだけど、いくら何でも早すぎない?」


「へへっ、ゲレゲン村の数少ない利点、木材なら在庫も豊富だし新規で調達するのもお安い御用さ!」


 エトが胸を張って答えると、テレシアに指で胸を突かれる。


「少年も相変わらず元気そうだなー。一人で来たのか?」


「ううん、フレークさんの付き添いで来たんだ。フレークさんは下で女将さんと話してる」


「そうか、そうか。何ならあたし達の付き添いもしてみるか?ゲレゲン村にはご主人様をくれてやるからさ」


「ははっ……考えておくよ」


「こらこら、勝手に人事移動をしないでほしいな」


 日数としてはそれほど長い時間が空いた訳ではないが、変わった環境で顔見知りに会うのは妙に喜ばしく感じる。四人は僅かな間だが、それぞれの役目を忘れて談笑を楽しんだ。




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