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白い蜘蛛と赤目の鬼  作者: 木丘柊遠
一章~漆黒の誇りと幻影の霧~
9/12

一章~魔力の力と危機~

どうも皆さん。お久しぶりです。木丘柊遠です。

一章、開幕です

簡潔に言おう。変なことを言われた。

「……兄になれってどういうことだ?」

「私に、兄と呼ばせてくれってことよ。」

「……それだけか?血縁関係上の義兄になれってわけじゃないよな?」

「誰がそんなことするか!」

どうも俺は、変な勘違いをしていたらしい。血縁云々の話だったら丁重に断ろうと思っていたが、ただただ兄と呼ばせて欲しいというだけだった。

「柊は?柊のほうがいいと思うんだが」

「あいつはダメ。私は少し年が近い兄が欲しいの。」

「そうか……昔、ガキどもに『陽兄』と呼ばれてたの思い出すな。まあ俺は別にかまわんが、リリィや柊にも俺を兄と呼ぶって言っておけよ。」

「わかった。」

そう言って俺は咲奈の部屋を後にし、自分の部屋で眠りについた。





うっすらと靄がかかった世界で俺は守れなかった(現実)を見る。

俺の不注意で、あいつは、怪我をした。

今ならわかる。病院で寝ていたあいつの髪が、黒から灰色に変わったのは、魔力の影響だ。

もう二度と、あいつに怪我をさせない。あいつを守るのは、俺の役目だ。

左目に、紅き屍竜の目に、俺のただ一つの力に、俺は、守るための力を願う。

(あいつ)を守るのは、俺の役目だ――





目を覚まし、居間に降りると、リリィの姿はなかった。

「昨日の蟷螂の件で、蜘蛛族のみんなと話があるって言って、早朝に出て行ったよ。」

咲奈はそう言った。朝食のあと、咲奈が俺と柊を呼んだ。

「二人共『異世界人』でいいのよね?」

「まあ、異世界に飛んできたもんで、そうなるの……か?」

「じゃあ、講習を始めるわ。魔力についてよ。」

そのまま、咲奈は話を始める。

「あんたたち人間は、誰もが魔力を持っている。だけど戦えるほどの魔力を持つのは大体四人に一人ぐらいっていうのが、この世界の常識。だけど、あんたたちの世界は、そんなことはないんでしょう?」

「そうだな。俺ら『鬼哭の破軍』は魔力を持っていると思われる奴らの集まりだったけど、そいつら以外はそんな能力を持っている奴はいなかったな。」

「『鬼哭の破軍』ねえ、興味があるわ。能力だけでも教えてくれない?」

「『鬼哭の破軍』は計七人。紅い眼と弱点解析の能力の俺、植物と会話できる柊のほかには、『魂の色がわかる』『法と名の付くすべてのものを無視する』『寿命や、作物の生育状況が分かる』『未来予知』『地層、断層の分析』だったな。戦闘向きの能力なんてほとんどなかったし、あとは自分の実力を高めていたな。」

「……まあいいわ。まずは魔力の力を引き出す『発現』と『属性』についてね。魔力の発現方法は複数あるけど、大きく分けて三つ。『向上(パワーリンク)』、『魔法』、『付与(エンチャント)』。『向上』はいわゆる身体能力強化ね。自身に魔力を付与して筋力や体力を上げたりするの。『魔法』はそのまま。魔力に属性を付与して大気中に発現させると『魔法』となる。『付与』は『向上』の対象を物質にしたもの。すでに兄さんは『向上』と『付与』は使ってるの。」

「それはもしかしてだが……『竜の三力』と『神器創造』か?」

「そのとおり。『竜の三力』は自身に魔力を付与して屍竜の力を付与している。『神器創造』は神器の魔力を模倣し、付与している……と、考えてるわ。『神器創造』はよくわからないの。異例の力だから。」

「ふむ……そうか。」

「じゃあ、次は属性について話すわね。魔術大系が確立してからもう5500年も経っていて、属性は多種多様なものになっていてね……一応公式というか、学術的に属性と認証されているものは、全部で11。火、氷、雷、水、土、風、木、金、光、闇、冥。今は、冥属性に相反する生属性――生命の魔力を証明しようとしているわ。」

「属性ってそんなに多いのか……複雑そうだな……」柊は呟く。

「それは大丈夫。光、闇、冥を除いた8つは火を中心に3つに分かれているの。」

「それは、『五行』とかいうやつか?木と金が入るものといえば五行だが……」

「正解。大きく分けた3つは火、氷、雷の『三原則』地水火風の『四大元素』火水木金土の『五行』。そこに相反属性の光と闇、独立属性の冥、無属性を加えて『十二の属性大系ひとふたのぞくせいたいけい』と呼ばれているの。そこで、戦闘能力者に対して、魔力の量、『十二の属性大系』の中の適正属性を判別する魔術を開発した。それを兄さんと柊にやってもらうわ。」

「わかった。」

「応。」俺と柊は即座に了承した。断る理由もないし、自分の力を把握できるいい機会だったからだ。

「じゃあ、私の言うとおりにしてね。まずは、一番上の点を始点として五芒星を描く。戻ってきたらその五芒星を囲むように四角形、さらに三角形で囲むと、大気中の魔力が動きに反応して形作るの。」

「……これは、柊のものか?」緑色に光る陣をみて、俺はつぶやく。

「えー……木の点が強く光っている緑色の少し大きめの陣。これは柊のものとみていいね。適正属性は木。植物と対話が可能という点も踏まえての判断だけど、柊の魔力は多分限りなく植物に近い魔力だと思うの。思考を繋ぐ線『パス』と呼ばれるものは、近しいものじゃないと繋がらないから。」

「……ふうん。俺は?」

「まだ出てこないみたいね。リリィから聞いたけど、すごい魔力量の持ち主なんだって?いいわね。魔力は多いだけでもいろいろなものに使えるからね。」

「なんか……おかしいぞ?」柊のひとりごとが聞こえる。

「え?本当だ!柊さんの陣が薄くなっていく!こんなに早く薄くなることは……まさか!」

気づいたときにはもう遅かった。薄紫の太い一本の線が家を真っ直ぐ突き抜けていた。

外に出ると、柊と同じ形をした薄紫の陣が、超高層ビル並みの大きさになっていた。

「これが……陽の魔力を表しているのか……?」

「推測だが、多分まだ大きくなるはずだ。俺の勘がそう言っている。」

「お前の勘はよく当たるから否定できんな……ってまた大きくなりやがった!」

傍観している中、リリィがやってきた。

「これは……陽さんの魔力の測定結果ですね?人というか、魔人の魔力量の何倍なんでしょうかね……色からして適正属性は『無』ですか。」

「薄紫色がなんで無属性なんだ?」

「柊さん、いいところを付きますね。魔力そのものを凝縮し結晶化したものの色が紫色なんですよ。凝縮されているので、とても鮮やかな紫色をしているんですよね……」

「なあ、リリィ、これって消えるのか?」

「もうすぐ消えますよ。……さて、三人とも、里の寄り合い所に来てください。」リリィは真剣な目をして、俺たちに告げた。



寄り合い所に着くと、いかにも武人という見た目の、背中から蜘蛛脚が生えていたり、六本の腕を持っていたり、前に見たリリィのように下半身が蜘蛛の『存在(もの)』が男女構わずいた。

「さて、偵察隊からの報告から。ラケニーさん、お願いします。」すぐに、茶髪の、リリイより一回り小さな体躯をした女性が話し始める。

「はい。現在、里を囲むように魔物が居ます。それも、綺麗な円を描いて。このような事象は見られていないので、故意によるものであると断定できます。そこで、討滅作戦を実行致します。」

「ここからは私から、作戦について説明致します。」リリィが、口を開いた。

「推定して、400~500体の魔物が里を囲んでいると推定されます。東方、西方、北方、南方を部隊を分け、その近辺の魔物の征討、殲滅を行ってください。すべての殲滅を目標としますが、達成することは不可能に近いと思います。なので、見つけた魔物を倒す程度に収めてください。負傷者が過半数を占めた場合、または支給される食料が尽きた場合、二度目の二日目の日没が近くなったら撤収してください。それでは、舞台を発表します。」真剣な顔で聞き入る蜘蛛族達。俺らも参戦するのだろう。

「問題の南方を私、咲奈さん、陽さん、柊さんで対処します。では、各自、明日に備えて準備を行い、英気を養ってください。解散とします。」その言葉の後、蜘蛛族はすぐに寄り合い所をで、各々の準備に入ったらしい。

「では、陽さんと柊さん。まだ時間もありますし講座の続きをしますよ。ついてきてください。」




リリィとともについた場所は、里から少し離れた、誰もいない広場だった。

時間は少し日が傾き始めたところであり、リリィを除いた3人はどこかへ行ってしまったリリィを待っていた。

「そういえば、二人の得物はなんなのさ?」咲奈が問いかける。

「俺は基本弓だが、一応双剣の類の扱いも得ている。陽はどうなんだ?お前はそういう得物は狙撃以外ないのか?」

「馬鹿言うな。もしもの為に色々持ってきてんだ。蜘蛛族の武具屋からも色々買った。」

俺はそう言うと、買ったものを含め、武器を装備した。

まずは目立つ槍。咲奈が持っているランスではなく、長柄のスピアと呼ばれる類のものである。

次に目に来るのが狙撃銃。いわゆる対物ライフルであり、俺が持っているものでは最高火力を誇るであろう。昨日の戦いでも遺憾なく発揮された。

槍は左手から持ちやすいように背中にしまい、狙撃銃は引き金を右から持ちやすいように、右肩にかける。

次に二丁の拳銃。大型で、火薬が比較的多めのマグナム弾を使う、これも拳銃の中では比較的高火力のものである。同時に取り出した太腿につけるレッグホルスターを両脚に付け、拳銃をしまう。

ここからは武具屋で買ったものだ。まずはナイフ二本。鞘には紐が付いてあり、蜘蛛族の作り出したロープを使っている。

蜘蛛族の作り出す糸には、魔力に応じて操ることも可能であり、ゴムのように高い伸縮性を持ちながら、鋼鉄ワイヤーをしのぐ強度を持つ、武具の補助具としても優秀なものである。

ナイフをしまい、腰に鞘をつけ、最後に取り出すのは手斧である。

小ぶりだが取り回しや投げることを目的として扱うものなので、小ぶりの方が扱いやすい。

手斧を右の腰より少し後ろにしまい、準備が終わると、柊が少し引いたような目で見ていた。

「武器……多くないか?あと、重くないか?」

「余裕だ。ちなみに足にも仕込んである。」

足を蹴るように前に出すと、エッジが出てきた。まるで猛禽類の足の爪のようなものである。

「そのエッジ、あまり攻撃的なものじゃなさそうだけど?」

「咲奈、いいところに目を付けるじゃねーか。もちろん殺傷力はあるが、木に刺したりして行動範囲を広げるためのものだ。動きを補助する補助具に近い役割だな。もっとも、脚技の補助具でもあるがな。」

ふむふむ、という感じで咲奈は見ている。咲奈自身も、重鎚と騎槍を同時に操るという独特なものであるが。

「じゃあ柊、お前の双剣はちゃんとあるんだろうな?」

「もちろんだ。」素早く腰から双剣を取り出す。

波紋も美しい、脇差ほどの長さの反りのない刀であった。柊はそれを逆手に持ち、前で腕を跋の字に構える。

「どうだ、かっこいいだろう?」

「あーそうだなー。かっこいーなー。」

「おい陽!すっげえ棒読みで答えんじゃねぇ!」

「何やってるんですか……用意が終わったから来てみたら……」

リリィが呆れ返った口調でつぶやく。

「お、リリィ。準備ってのは?」

「はい、こいつです。」そう言いながら、抱えていた木で出来た胴が太い案山子をおいた。

「……なんだこれ」

「測定器です。」柊は「おう……」と、何が何やら、という表情だった。

「さて、では三人にはこれを使って、測定してもらうものがあります」

少し真剣な目つきのリリィは、そう言った。

最後に出てきた案山子、こいつを使って測定するものといえば……

分かる人は分かるはずです。

そして気づかないうちに陽の武装が重武装化してました。

まあ、武器は多いほうがかっこいいよね!ということで、お願いします。

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