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白い蜘蛛と赤目の鬼  作者: 木丘柊遠
序章~白髪美人は半人半蜘蛛~
4/12

四章~植物と武術と漆黒の誇り~

前回のあらすじ

やっぱりリリィさんはポンコt「それ以上言ったら叩き切ります。」

     1

本来ならば飛行機で行く距離を、新幹線とフェリーで少し時間をかけて行く。

飛行機は使うのを躊躇う何かがある。俺にしかないが。

そこは亜熱帯地域に近い島。そのほぼ中心部に存在する大きな大きな木。

俺はその木に話しかける。

「爺、久しぶり。」

(その声は……柊か。)

「ああ、柊だよ。今日はちょっと用事があってな。まあ、ただの報告だよ。」

(何かあったのか?)

「俺、ここを離れることになったんだ。多分ほとんど帰ってこれない。引越しみたいなものだしな。」

(……つまり、儂と柊はここでお別れ、ということになるのか……名残惜しいものだな。)

「爺、あんたは何人の人と別れてきた?もう何千年もここにいるんだろう?その中のたった一人の別れじゃないか。しかも、また戻って来れる可能性もある。だから、」

(わかったよ。柊、これは引越し祝いのようなものだ。受け取ってくれ。)

その言葉と共に俺の体は緑色に光り、何か強い「力」が体の中に入ってくる。

「これは……?」

(儂等の力だ。柊にしか扱えない力でもある。念じれば、儂等が手助けを行う。もしものことがあれば使ってくれ。)

「ありがとう、爺。ゴメンだけどさ、俺、すぐ帰って準備しなきゃならないんだ。」

(……何年会えなくなるだろうか……寂しいものだな……柊は儂等と話せる唯一の人間だから……もっと、いたかったのう……)

「ごめんな、俺は陽と行くんだ。あいつが決めたことに俺は賛同したからな。」

(……柊が決めたのなら、儂は何も言わん。さあ、いってらっしゃい。そなたならやってくれる、信じているぞ。)

「おう!任せろ!俺は橘井柊。俺は俺なりの信念で生きるんだよ。だから、爺も、爺なりの生き方をしてくれ。」

(うむ。)

その言葉を聞いた俺は、静かにここを離れた。


(……そなたは植物に愛されている。忘れるでないぞ……そして、そなたには背反の能力がある。それを……どこかで、考えておくれ……)

爺が何かを言っていた。もう何を言っているのかわからなかった。

     2

新幹線での帰り、俺は少しうとうとしていた。

……空では爆発が起きた。

炭になりかけた人間、灰になり、骨とばらばらになった人間、そして、俺のように、ただただ落ちていくだけの人間。

ただただ死にたくなかった。だから、俺は願った

助けて。

その時、一瞬で視界が緑色になった。

――気づいたら日が暮れ、最寄りの新幹線の駅についていた。主要の駅だから、ある程度長く留まる。だから止まってすぐだったし、降りることはできた。

そこから私鉄に乗って、家に帰る。

あいつはちゃんと食ってるかな、リリィは捕まってないかな。

そんな当たり前のことを考えながら家に帰り、「ただいま」と言う。

当たり前に日常がそこにはあった。

     3

柊さんがいなかった次の日、私は色々と質問をしていた。

「なにか武術に関する技術はありますか?」

「……俺は弓道をやっていたな。一応全国一にもなった。」柊さん、結構凄かった。

「俺も鈍っていると思うが、剣道をやっていたな。一応、俺も全国一にはなっている。」何でしょうこの武術組。

「では、色々と知りたいですから、ちょっと外でましょう!」

外に出て、私は陽さんに木刀を、柊さんには私の糸を利用した弓を渡した。

私は木刀に模造した『蜘蛛王(あかをしるおう)』を出した。

「では、まず陽さん、私に打ち込みをやってください。本気で構いませんよ。」

「わかった。本気で行くからな。」陽さんは構えた。

少し独特な構えだった。剣を持つ右手はあまり力が入っていないように見える。左手は胸の辺りで心臓を守るように構えている。

一瞬、無礼ながらも、弱そう、と思ったが、一瞬で払拭された。

その一瞬で陽さんは私に近づき木刀での攻撃を行ってきた。

無拍子。自重によって一瞬で行動する武術の一つの移動方法である。

もちろん速度と膂力も十分で、流さなければ手首をやっていたかもしれない破壊力だった。

そのまま連続して攻撃を行う。私はそれをバランスを崩さないように受け流す。

「なるほど、腕力、速度、踏み込み、全てにおいて高水準ですね。ですが……」

私は一瞬で喉に刃を突き立てる。当ててはいないが。

「『殺す(・・)』ための剣技、ではありませんね。確かに武術は今や殺すための技ではありませんが、陽さんが行く世界は魔物を殺さなければなりません。だから、しっかりと殺すための剣技を培いましょう。それが陽さんの課題ですね。」

「ありがとう。参考になった。」

その後、柊さんの弓術を見ることにした。

結果から言えば。「即戦力」だった。

小さく、早く動く標的でも、確実に仕留める力はあった。それはとても良い利点である、と考えた。

最後に、陽さんの狙撃術を、エアガンを利用して測ってみた。

私は一度、FPSというものの狙撃術を見ていて、非常に高いことを知っていたが、流石に現実で同じようなことができる、とは思っていなかった。

そんな時、柊さんは「あいつを舐めんなよ」と言っていた。それが何を意味するのか最初は分からなかった。

そしてそれは簡単に分かった。蜘蛛の移動速度は、かなり早い。もちろんアラケニーの私にも言えることである。

が、陽さんは照準を一切遅れずに回してくる。陽さんの照準は安定したまま、私の脳天を狙ったまま。

……正直、二人とも私の想像を遥かに超えた実力を持っており、「名」を持つ人の実力を知った。

なんでも、陽さん達が所属している団体は「鬼哭の破軍」といい、昔からその中にいる人たちは特殊な能力と対戦能力を持っているらしい。

話を聞く限り、全員魔力を持っていると思う。奇跡なのだろう。

弱点を見極める陽、植物に関する事と弓術の天才、柊、他にも「魂の色がわかる」や「全ての法、法則を無視する」や「豊穣」、隻腕の剣士や白き少女もいるらしい。

本当なら全員連れて行きたいところだが、「豊穣」持ちの女の子はなんでも重い病気を患っており、一応快復への道をたどっているが、病院からは離れられないらしい。

それほどの力を持つ人たちがここにいる、それだけで何故か確信する。

力を持つ人が多いからこそ、陽さんも、柊さんも、研鑽してきたのだろう。

     4

気が付くと、夕暮れ時であった。

「夕御飯の時間が近いですね、帰りましょうか。」

「そうだな。リリィ、魚は大丈夫か?」

「もちろんです!お肉も好きですが、お魚も大好きですよ!とくに赤身魚の刺身や鯖の味噌焼き……ああ、考えただけでお腹が……」

「リリィって結構食べるんだな。」

その一言で私はすごく恥ずかしくなった。

「あ、えっと……その……」

「いいんだよ、俺だって魚は好きだからな。だが、白身魚は刺身でも行けるし照り焼きもうまい。あとはやっぱり塩鮭だな。あれはすごく飯が進むよな」陽さんの助け舟だった。

「いいですよね。あの塩辛さがご飯をかきこみたくなる衝動を生み出して来るんですよね」

「やっぱりこの時期は秋刀魚だろ。秋の風物詩だぞ。」柊さんの意見が飛んできた

「あ、秋刀魚もいいですねぇ。肝の苦味もまた一興。ですね」

「ははは。本当にリリィはグルメだな。逆にこれは教えてもらうこともあるかもしれないな。」

「そんな、何も教えることはないですよ。私はただ美味しく食べるだけなので、料理については料理人に聞くほうがいいですよ」

「餅は餅屋、ってか。」陽さんの少し苦笑が混じった声がした。

そのあと、前に立ち寄ったスーパーで魚をたくさん買い、刺身も焼き魚も煮魚もあるまた豪勢な食事になった。

「あ、この刺身美味しいです!何の魚ですか?」

「飛魚だよ。小骨を取るのに苦労するし、食用部位も少ないんだが、味はどれとも違うだろう?」陽さんが説明してくれた。

「ちなみに今日の汁物もあごだし……飛魚の出汁で作ってるんだろう?」柊さんが汁物を飲みながら聞いた。」

「おう。飛魚は値が張るからな。使えるところは全部使わないとな。」

「あー、美味しい。箸が止まりませんよ。」私は幸せな気分に浸っていた。

そして、お魚パーティーは終わりを迎えた。

私は金目鯛と飛魚のお刺身が気に入ってしまった。これはまた食べてみたいな、そう思った。

「よし、またあっちにいく準備をしなければな。」陽さんの声とともに皆は自分のことをし始めた。

……何か忘れているような気がするが、まあ、いいだろう、そう思って、私は横になって、うつらうつらし始めた。

その後、何故かどす黒い怒りを感じ、恐怖することになった。

     5

ああ、もう、なんで一族の里に来たのにいないのよ。これじゃあ骨折り損の草臥れ儲けじゃない。

リリィはまだ帰ってきてないらしい。「優秀な人材を連れてきますから!」なんて言ってどっかいってしまったらしい。

多分い世界化どこかに行っているんだろう。そしてあの残念(ポンコツ)のことだから詠唱式間違えて帰れなくなってるに違いない。

まあいつか戻ってくるだろう……と思ったが私のプライドが許さない。

私は全身、とくに角と尻尾に怒りを集中させていた。

ああ、とにかく、早く帰って来い。一ヶ月またせたら突進してやる。

私のねじれながらも大きく、天を貫くように伸びる|角《誇り

》は、優しくも少し、違和感のある風を感じとっていた。

リリィさんはなんでも食べます。そうたいして味にうるさくありません。天使ですね

さて、最後の漆黒さんは誰でしょうか……

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